ドイツは批判されるべきなのか

 最近、ゼレンスキーは、支援を思うようにしてくれない国に対して、批判する姿勢を強めている。その最大のターゲットがドイツだ。私の目からみると、ドイツは、これまでの姿勢をかなり変えて、ロシアとの対決を厭わず、ウクライナを支援する姿勢を見せているように思われるが、ゼレンスキーには不十分に見えるのだろうか。
 しかし、これまでの流れを、少し前に遡って考えてみれば、現在の状況だけでドイツを批判することには、大きな疑問が残る。
 ドイツが批判されている背景には、ロシアとの経済的結びつきを強めていたことがある。ドイツはエネルギーの半分近くをロシアに依存する状態になっていたために、ロシアに対する経済制裁を、他国に比較すると不徹底になっている。更に、ウクライナのNATO加盟に反対したということも、もうひとつの大きな理由と言われている。このことによって、ドイツを批判するひとたちは、ネットでも散見される。なぜ、ロシアなどと友好的になったのか、というわけだ。確かに、現在のロシア、プーチンの所業をみれば、批判したくなる気持ちもわかるが、しかし、大局的にみれば、ドイツのとった政策を適切なものと評価することも可能である。ドイツを一方的に批判するのではなく、もう少し歴史をふり返っておくことも必要なのではないかと思う。

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小室圭氏が不合格、それよりも重大なことは

 ニューヨークで新婚生活を楽しんでいる小室圭氏が、2月に受験したニューヨーク州の司法試験に不合格になったことが、一斉にメディアによって報道された。宮内庁とニューヨーク領事館との協定なのか、圧力なのか、小室夫妻の私生活について報道しないことになっていたようだが、この試験結果だけは、例外なのだろうか。あるいは、だれでも確認できるウェブ上での発表なので、どうせネットのひとたちに知れ渡るからというので、報道したのか、むしろそこに興味をもったほどだ。というのは、ネット上では、2月の受験のこともかなり多くのyoutuberによって取り上げられていたが、大手メディアは一切報道していなかった。せいぜい憶測記事だけだったのだから、今回は、NHKまでニュースで取り上げたのは、不思議な現象だった。

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河瀨直美氏の東大入学式祝辞を読む

 東大の入学式における河瀨直美氏の祝辞が、大分話題になっている。新聞報道されたのは、ロシアのウクライナ侵攻に関する部分で、「ロシアを悪者にするのは簡単だが、もっと複眼的にみよ」というような話をしたと紹介してあった。そして、その部分に関して、ネットではかなりの批判が巻き起こり、「ロシアを悪者にするのは、国際的にみて簡単ではない」とか、「ロシアを悪者と認定できないようなことでは、正しい判断をしていない」とか、かなり厳しい批判がある。そこで、祝辞の全文を読んでみた。率直にいえば、疑問のほうが強かった。
 それほど長いものではないが、新聞報道での紹介と、全体の印象はかなり異なる。というのは、ウクライナ侵攻について述べた部分は、極めて短いからだ。ほとんどは、自分の生まれと育ち、そして、映画人としての歩みが語られている。そして、私には唐突にみえたが、ウクライナ侵攻に関する部分が出てくる。報道では一部なので、せめて、その部分を引用しておこう。

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ウクライナ侵攻の実質的失敗が見えてきたが、ヨーロッパにも黄昏が

 ウクライナ侵攻が始まったとき、意外に多くの人が、これは「プーチンの終わりの始まりだ」と主張していた。確かにその通りだと思う。そして、それが少しずつ現実的に見えてきた。
 まずはっきりしてきたのは、プーチンは、明らかに逆の効果を、ウクライナ侵攻で呼び込んでしまった。プーチンの最低限の目標は、ウクライナにNATO加盟を断念させることだった。ウクライナがNATOに加盟してしまえば、ロシアがNATOと直接接することになる。だから、どうしても、緩衝地帯がほしい。実は既にバルト三国と国境を接しているのだが、比較的大国であるベラルーシとウクライナがNATOに加盟していないから、大きな緩衝地帯を形成していた。しかし、ウクライナ侵攻の結果、スウェーデンとフィンランドがNATO加盟の意向を示し、国民の支持も形成されている。スウェーデンは直接ロシアと国境を接していないが、フィンランドはかなりの長い隣接地域がある。しかも、フィンランドは、西側に属しつつも、ソ連、ロシアとの関係を考慮して、NATOに入らないできた国だ。それが、NATO加盟を決意し、夏には実現するといわれている。スウェーデンやフィンランドは、自由主義国家の優等生のように考えられているし、国防もしっかりしているから、加盟申請すれば、NATOとしてはすぐに承認するだろう。プーチンのNATO対抗意識を、国民は嫌でも知らされているはずだから、スウェーデンとフィンランドが実際にNATOに加盟したとき、プーチンは国民にどう説明するのだろうか。また、国民はどう受け取るのだろうか。フィンランドもナチが支配するようになってしまったというのだろうか。

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下田旅行2

 昨日の分になるが、まず、宿舎から少し離れた海岸の名所というほどでもないが、「サンドスキー」というところにいって、かなり昇り降りしながら見物した。まず、岩が波で削られた洞窟で、かなり狭い空間が開けている。
 
 
 今度は上に登っていって、海を眺望できるところが遊歩道になっている。
 

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佐々木朗希の完全試合から学ぶこと

 昨日ロッテの佐々木が、21世紀初の完全試合を成立させた。あわせて、13連続奪三振の新記録、19奪三振のタイ記録まで達成している。メディア上でたくさん書かれているが、個人的な感想を書いておきたい。
 「近頃の若いもんは・・・」というのは、歴史の記録の最初期から見られる老人の嘆きらしいが、高齢者である私は、「近頃の若いもんは、すごい」と常々感じている。野球の大谷、将棋の藤井、そして、サッカーの若手たち。以前は、日本のサッカー選手は、とにかくシュート力が弱く、チャンスなのに、自信がないから他の選手にボールを廻してしまうというような指摘がなされていたが、最近の若手は、果敢にシュートを決めている。そして、そのすごい若手に、さらに佐々木が加わった。
 佐々木の活躍は、順調にいけば、確実視されていたから、その内素晴らしい記録を打ち立てるだろうとは予想されていたが、これだけ早く、またとてつもない記録とともに、完全試合を達成したのは、周囲のもり立て方も適切だったことを、強く感じる。

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伊豆旅行1

 これからは、年に1回程度旅行に行こうということで、今日から伊豆旅行にでかけた。中央道、圏央道、東名から、伊豆縦貫道を通って、下田にきた。
 下田はずいぶん前にきたことがあり、歴史を感じさせる町だが、今回もペルー道などを通ってみた。本格的には明日からになるが、その報告をしたい。まったく個人的なことだが、ご寛恕願うということで。
 伊豆縦貫道に入って、しばらくスルト、「天城越え道の駅」があり、そこでしばらく時間を過ごした。というのは、「昭和の森」という記念館があり、下田・伊豆に関係する文学者の資料がそれなりに展示されているので、それを見たかったわけだ。「天城越え」といえば、私にとっては、当然松本清張の小説が思い浮かぶわけだが、どういうわけか、この「昭和の森」記念館には、松本清張がまったく扱われていない。最も重視されていたのは、井上靖で、移転された旧宅まである。

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ユージン・オーマンディ 不当に低く評価された指揮者3

 ずっと書こうと思っていたが、ウクライナ情勢などもあり、書けなかった話題「評論家に不当に低く評価された指揮者」の3人目、というか、最も極端に実力と日本人評論家の評価に落差のあった指揮者といえるオーマンディを取り上げたい。オーマンディといえば、「フィラデルフィア管弦楽団の華麗なる響き」とか「協奏曲伴奏の名手」などといういい方をされていた。肝心の指揮者としての実力を、まっとうに評価する評論家は、非常に少なかったという印象は、多くのひとがもっていたに違いない。いまでもウェブを検索すると、オーマンディの人気がないのはなぜか、という話題がけっこうあるのだ。もちろん、そういう話題を振るひとは、オーマンディが好きなわけだし、偉大な指揮者だと思っているのだが。かくいう私もオーマンディは非常に偉大な指揮者だと思っているが、実は、それほどCDをもっていない。子どもの頃には、「ピーターと狼」のレコードがあって、これは、子どもながらすばらしいと思っていた。ピーターを表現する弦楽器の音がさわやかだし、小鳥のフルートが超人的にうまい。各場面の描き方が、目に浮かぶようで、いまだにオーマンディ以上の「ピーターと狼」は聴いたことがない。しかし、その後は、ほとんどオーマンディのレコードを買うことがなく、CDとしては、「オーマンディ・オーケストラ作品」というソニーのボックスをもっているくらいだ。最近でたモノラル録音のコンプリートは、さすがに買う気持ちにはなれず、とりあえず、このオケボックスを、もっと聴いてみるつもりだ。

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鬼平犯科帳 木村忠吾はいつ結婚したのか

 今日は少々息抜き気味に、久しぶりに鬼平犯科帳ネタ。
 題名の通り、「木村忠吾はいつ結婚したのか」を解こうということだ。「シャーロック・ホームズ」には、国際的なクラブがあるそうで、入会するためには、極めて難しい試験をパスしなければならないということだ。つまり、ホームズに関する、細かい内容を知っている、つまり、全シリーズの内容を詳細に知っていることを示せないと、入会できないというもので、日本人は数えるほどしか会員がいないとか。逆にいえば、ホームズには、それだけの作品としての魅力と、それから膨大な量の物語があるということだ。
 日本の小説で、そこまでするだけの人気を誇る物があるだろうか。たくさんのひとが原文で読んでいるだけではなく、ドラマになっていて、内容が知悉されていることが必要だ。だから現代小説でなければならないが、私には、第一候補は「鬼平犯科帳」だと思われるのだが、難点は、鬼平犯科帳の内容には、いくつか矛盾があることだ。前にも書いたことだが、平蔵の部屋に忍び込んで煙管を盗んだ船頭の友五郎(かつての盗賊浜崎の友蔵)は、「流星」(8巻)で盗賊の手伝いを無理やりやらされて、島流しの刑になる。(もっとも予告だけだが)それが、「火付け船頭」(16巻)では、もともと働いていた「加賀屋」で普通に船頭をしており、常吉の逮捕に協力している。つまり、作者は、友五郎が島流しになるはずだったことを、忘れてしまったのかと、少々疑わざるをえないのである。このように、物語のなかに、辻褄が合わない点があれば、「試験」をつくるうえで難点になる。そういう例をいくつか「分析」してみようというわけであり、今回は、題名のことを扱う。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える4 マクロンと旧東欧

マクロン
 フランスという国家が、私には、非常に遠い国になってしまった。フランスのニュースといえば、同時多発テロでの被害だったり、あるいはワクチン義務化をめぐる騒動だったり、とにかく、騒乱が主なニュースになってしまった感じが強い。日本との関連でいえば、日産におけるカルロス・ゴン騒動が、フランスのルノーと関わっているから、大きなニュースになったが、とにかく、いいニュースがあまり記憶にない。
 ロシアのウクライナ侵攻に関しては、マクロンがいち早くモスクワに飛び、プーチンと差しで談話をしたが、長いテーブルの端に座った対談で、とうてい何か有益な結果が残せる雰囲気ではなかった。マクロンとプーチンの「遠い距離」が目立った会談となり、その後も、何度か電話会談をしたが、成果があがったという話は聞かない。当初は、プーチンに話をつけられる大統領ということで、支持率があがったそうだが、今では前に戻ったとされる。そして、フランスでも、間もなく大統領選挙があり、国民連合のル・ペンに追い上げられており、最新の調査によれば、決戦投票になった場合の予想投票率は、誤差の範囲だという。つまり、ル・ペン当選の可能性も出てきたのだ。

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