鬼平犯科帳 木村忠吾はいつ結婚したのか

 今日は少々息抜き気味に、久しぶりに鬼平犯科帳ネタ。
 題名の通り、「木村忠吾はいつ結婚したのか」を解こうということだ。「シャーロック・ホームズ」には、国際的なクラブがあるそうで、入会するためには、極めて難しい試験をパスしなければならないということだ。つまり、ホームズに関する、細かい内容を知っている、つまり、全シリーズの内容を詳細に知っていることを示せないと、入会できないというもので、日本人は数えるほどしか会員がいないとか。逆にいえば、ホームズには、それだけの作品としての魅力と、それから膨大な量の物語があるということだ。
 日本の小説で、そこまでするだけの人気を誇る物があるだろうか。たくさんのひとが原文で読んでいるだけではなく、ドラマになっていて、内容が知悉されていることが必要だ。だから現代小説でなければならないが、私には、第一候補は「鬼平犯科帳」だと思われるのだが、難点は、鬼平犯科帳の内容には、いくつか矛盾があることだ。前にも書いたことだが、平蔵の部屋に忍び込んで煙管を盗んだ船頭の友五郎(かつての盗賊浜崎の友蔵)は、「流星」(8巻)で盗賊の手伝いを無理やりやらされて、島流しの刑になる。(もっとも予告だけだが)それが、「火付け船頭」(16巻)では、もともと働いていた「加賀屋」で普通に船頭をしており、常吉の逮捕に協力している。つまり、作者は、友五郎が島流しになるはずだったことを、忘れてしまったのかと、少々疑わざるをえないのである。このように、物語のなかに、辻褄が合わない点があれば、「試験」をつくるうえで難点になる。そういう例をいくつか「分析」してみようというわけであり、今回は、題名のことを扱う。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える4 マクロンと旧東欧

マクロン
 フランスという国家が、私には、非常に遠い国になってしまった。フランスのニュースといえば、同時多発テロでの被害だったり、あるいはワクチン義務化をめぐる騒動だったり、とにかく、騒乱が主なニュースになってしまった感じが強い。日本との関連でいえば、日産におけるカルロス・ゴン騒動が、フランスのルノーと関わっているから、大きなニュースになったが、とにかく、いいニュースがあまり記憶にない。
 ロシアのウクライナ侵攻に関しては、マクロンがいち早くモスクワに飛び、プーチンと差しで談話をしたが、長いテーブルの端に座った対談で、とうてい何か有益な結果が残せる雰囲気ではなかった。マクロンとプーチンの「遠い距離」が目立った会談となり、その後も、何度か電話会談をしたが、成果があがったという話は聞かない。当初は、プーチンに話をつけられる大統領ということで、支持率があがったそうだが、今では前に戻ったとされる。そして、フランスでも、間もなく大統領選挙があり、国民連合のル・ペンに追い上げられており、最新の調査によれば、決戦投票になった場合の予想投票率は、誤差の範囲だという。つまり、ル・ペン当選の可能性も出てきたのだ。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える3 中東産油国とドイツ

中東産油国
 日本人からみると、あれだけ不当なロシアのウクライナ侵略は、北朝鮮や中国、そしてシリアのような超独裁国家、しかも、かなり非人道的な独裁国家しか支持していないのは当然として、他の国はロシアとの交流など断って、制裁を加える側にたつと思われるが、実際には、非難決議には賛成しても、実際に経済制裁をせず、あるいはウクライナに、様々な援助をすることを拒む国家も少なくないことは、不思議な感じがする。しかし、国際的にみれば、民主主義国家よりは、独裁的な国家のほうが多いことは、忘れるべきではないし、中国やロシアの経済的影響を受けている国は多いのである。
 だから、中東産油国が、反ロシアの実際行動をとっていないことは、意外ではないのかも知れない。しかし、私が認識していた以上に、中東産油国のアメリカ離れは進んでいた。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える2

ゼレンスキー
 ゼレンスキーにとっての、ロシアによるウクライナ侵攻を考察するのは、非常に難しい。誤算はプーチンにだけではなく、ゼレンスキーにもあったと考えられるし、また、大統領になってから、かなりスタンスが変化したことも考えなければならない。
 ゼレンスキーは、周知のように、喜劇役者だったが、国立大学で法学の学位をとっている。だから、日本のような,あまり学校にもいかず、芸能界で生きてきたタレントとは異なる。大学卒業時に、喜劇役者として生きていくか、あるいは大卒のひとが一般的に歩む道に進むか、迷った末の選択だった。しかも、単なる役者ではなく、自らドラマを作成するクリエーターでもあり、かつ、ITを駆使することもできた。
 そうして、有名になった大統領役をしたドラマも、自ら制作したものであり、たまたま、そうした企画で採用された一俳優ではなかった。だから、政治経験がなかったとしても、そうしたドラマ制作を通じて、政治や行政、そして社会全般の問題について、相当勉強し、考えたに違いない。
 ゼレンスキーの経歴を見ると、ロシア語の環境で育っており、東部出身だから、ロシア人との交流もあり、ロシアで仕事をしたこともあるようだ。だから、ロシアとは、元来敵対的ではなく、ドネツク、ルガンスクの「自治共和国」についても、強権的な対応を当初からとっていたわけでもなかった。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える1

 トルストイは、『戦争と平和』のなかで、何度も、戦争はなぜ起きるのかを考察している。小説であるのに、その部分は論文調なので、退屈に思うひとも多いのだが、私はなかなか面白いと思って読んでいる。しかし、結局は、トルストイにとっても、その答は明確ではないようだ。巷間言われている説、ナポレオンの征服欲が原因だ、とか、ロシア皇帝がナポレオンの要求を受け入れなかったからだ、とか、あるいはより地位の低いひとたちの意志などを、様々にあげながら、しかし、それらのひとつが原因なのではなく、全体の複合によって、必然的に戦争へと人々は導かれていった、というような考えなのだろう。しかし、それでも、100万人を越えるような人々の殺し合いを引き起こした要因は、確かにひとつではなにせよ、いくつかの主要なものは想定できるのではないだろうか。そして、確かに、ある時点で、誰かが別の行動をとったら、ナポレオンはロシアに侵入しなかったというようなことは、確かにあるのかも知れない。また、ナポレオンの侵入後にしても、ロシア軍がボロジノでも闘わず、退却していたらとか、ナポレオンがモスクワにとどまることなく、皇帝のいるペテルブルグに進軍していたら、など、ひとが決断できる行動だから、別の決断にすることは不可能だったわけではないはずだ。だから、違う結果が起きた可能性を否定することはできない。結局、明確な、万人が納得できる理由を提示することは、不可能かも知れないが、様々な立場から考察してみることは、理解を深めることになるに違いない。

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ネトレプコがウクライナ侵攻に反対 ゲルギエフは?

 世界でトップクラスのソプラノ歌手アンナ・ネトレプコが、ロシアのウクライナ侵攻を非難する声明を出した。ロシア出身で、プーチンと親しいとされていた彼女は、ウクライナ侵攻が始まったとき、反対するように求められながら、「平和を望んでいる」と述べつつも、ウクライナ侵攻そのものには反対意見を述べず、芸術家に政治的発言を強要するのは間違っていると主張。欧米での重要な出演をキャンセルされていた。しかし、態度を変えたようだ。「ネトレプコがロシアのウクライナ侵略に反対、プーチン大統領との関係を否定する声明」という記事がそれを紹介している。
・ウクライナの戦争を明確に非難し、犠牲者と家族に思いを馳せる。
・いかなる政党のメンバーでもなく、ロシアの指導者と手を結んでいない。
・過去の言動に後妻される可能性があったことを認め、反省している。
・プーチンとは授賞式などで会ったことがあるだけで、ロシア政府から金銭的支援を受けていない。
・オーストリアに居住し、納税者でもある。
 以上のような内容の記事である。

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札幌五輪は招致すべきではない

 報道によれば、札幌市議会は、2030年冬季五輪の招致を可決したという。
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 札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックについて、札幌市議会は30日の本会議で招致を支持する決議案を可決した。決議案は自民党、民主党・市民連合、公明党が共同で提出し、賛成多数で可決された。共産党、市民ネットワーク北海道は反対した。(朝日新聞2022.3.30)
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 また、事前に行われたアンケートでは、約56%が賛成、約40%が反対だったという。しかし、世論調査には疑問もでていて、「そんな調査やっていたのか?」という意見や、新聞社の調査では、反対が多かったからか、公表後すぐに削除されたとか、賛成派にとって不都合な事実が、いろいろと語られてい。
 このことで、思い出すのは、荒川恭啓がやっていたラジオ番組で、東京五輪招致についての意見を求めたところ、圧倒的に反対が多くなった。もちろん、いくら政府に批判的な見解を述べることが多かった番組でも、オリンピック招致は、メディアとして実現したいというニュアンスで伝えていたのだが、この結果を伝えざるをえなくて、結果のみ発表したのだが、いかにも不快そうな感じで、そのあとすぐに別の話題にふってしまった。番組内で意見聴取をするなら、もっとちゃんと扱うべきではないかと思ったが、メディアってこうなのかと思ったものだ。

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読書ノート「発達障害は学校からうまれる」井艸 恵美 東洋経済オンライン

 読書ノートというのは多少おかしいかも知れないが、東洋経済オンラインに「発達障害は学校から生まれる」という連載のレポート記事がある。まだ継続中だが、学校現場のこまっている面、また筆者によれば、弊害を生んでいる側面について、深刻な報告がなされている。
 現在第6回まで進んでいるが、最初のほうは、もっぱら発達障害児に対する投薬治療の弊害を、患者たちの取材に基づいて警告を発している。詳細は、記事を読んでもらうことにして、自分なりに考察してみたい。
 ここで書かれていることを整理すると
・子どもに対して、安易に向精神薬を使用するのは問題があり、さまざまな弊害が生じている。
・近年は、こうした子どもの発達障害に対する薬物使用が広まっており、教師の側から、親に勧める事例も多くなっている。
・こうした状況に、警告を発する医師や教師もいる。
・子どもの発達障害は増加しており、その原因は環境によるところが多い。
・発達障害に関する文科省の大がかりな調査があり、通級学級から、特別支援学級、特別支援学校への、事実上の誘導がなされている。
 以上のようなことだと解釈できる。

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ロシアは中国の朝貢国になるのか?

 昨日ロシア外相のラブロフが中国を訪れ、中国王毅外相と会談して、援助を求めたという。テレ朝ニュースによると、ラブロフは「ロシアは国際関係の歴史のなかで、重要な局面に直面している。我々は、中国やその他の仲間とともに、多極的で公平で民主的な世界秩序に向かって歩みだすだろう」と述べたそうだ。そして、欧米の経済制裁に、中国の協力を得て、対抗していく考えを示した。
 それに対して、王毅外相は、協力の意志や信念が更に強くなっていると述べ、更に両外相は、ロシアへの経済制裁は、「違法で逆効果だ」と非難したそうである。そして、この後、ラブロフ外相は、インドに向かうと報道されている。
 欧米側にいる者にとっては、笑いを提供してくれる談話だ。ロシアの「仲間」は、どれだけいるのだろうか。国連総会の決議の数をみれば、完全に孤立しており、中国ですら、ロシアへの支持をためらっている。ロシアが、「多極的で公平で民主的」な世界秩序をめざしているのだそうだが、「孤立して、不公平で独裁的」な世界秩序しか、プーチンサイドからは見えてこない。ロシアへの経済制裁か「違法で逆効果」なら、ロシアのウクライナ侵略は「合法」なのかということになろう。

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アイヌを救うために、プーチンが日本を攻める?

 ウクライナへのロシアの侵略を受けて、日本もロシアに侵攻される危険性があるという議論がある。しかも、その前哨戦のようなことが行われていると主張する人もいる。北方領土で軍事演習をしたり、ロシア軍の艦隊が津軽海峡を通ったなどを、その根拠にしているわけだ。国際法に違反しているわけではないが、確かに日本としては、不快であることは確かだ。
 そして、更に、そうした推測を一部のひとたちに強めさせているのが、プーチンが2018年に行ったという「アイヌ民族は、ロシアの先住民族に認定する」という考えだ。
 プーチンがジョージア、クリミア、ウクライナに侵攻した際には、すべて、その地域に住むロシア人が圧迫を受けているので、その救援をするという名目が語られている。だから、日本でアイヌ民族が圧迫されているから、彼らを保護するために、侵攻するのだ、というような状況が想定されるというわけだ。そういう議論のひとつが、以下の記事に示されている。
 

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