アゾフ大隊は本当に捕虜交換されるのか

 とうとうマリウポリの造船所に立て篭もっていたウクライナ兵、アゾフ大隊が造船所を出て、ロシアの捕虜となった。そして、ウクライナに捉えられているロシア人捕虜と、捕虜交換の合意ができているとされている。
 しかし、私は、それが本当に実現するかどうかは、かなり不確定だと思っている。もちろん、双方の約束だから、実現させるべきものであるが、早くもロシア側の要人のなかから、アゾフ大隊は、ナチスで戦争犯罪者だから、捕虜として扱うべきではないという意見が出されているという。私は、裁判にかけられるかどうかは、両方あるとしても、最終的には、ほぼ全員が処刑される危険性があると思っている。処刑せずに、ロシア軍に組み入れて、強制的にウクライナと戦闘をさせるという危惧も語られている。もっとも、あれだけ疲れ切っている兵隊を、前線に送っても役には立たないと思うのだが、「人間の楯」にはなるだろう。

 もちろん、ウクライナ側としても、そういう危惧はもっているだろうから、そうさせないための手をうっているとは思うのだが、こうした点についてのロシアへの信頼感は、ほとんど消え失せてしまった人が多いのではないだろうか。中村逸郎教授は、プーチンのいうことは、絶対に信頼してはいけない、とどこかで書いていたように記憶している。
 
 ウクライナ政府が、これまで造船所に立て篭もっているアゾフ大隊に、戦闘を継続させてきたのは、欧米からの武器が到着するまで、とにかく、マリウポリにロシア兵を釘付けにするためだったという。そして、武器が続々届くようになったために、目的は達したということで、捕虜交換の方法で、彼らを救出するために働きかけたわけだ。そのやり方は、これ以上ないほどの巧みさだと思うが、最終的には、ロシア側の「ロシア人捕虜」を大切にするかどうかにかかっている。
 もし、アゾフ大隊の捕虜を、ロシアが処刑したら、ウクライナは、ロシア人捕虜をどう扱うのだろう。報復として、やはり処刑するのだろうか。あるいは、違う方法を使うのだろうか。
 
 ロシアが、約束を守ることを願うばかりだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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