近来稀な自民党の権力闘争

 自民党の総裁選から、総理大臣の選出、そして、その前後の石破茂氏の変容、これは、自民党支持ではない、まったくの傍観的立場でみていて、興味深い展開のように思われた。当事者たちは、生き残りをかけた闘いだろうから、必死だろうが。
 総裁選の優劣の変動がまず第一幕だったろう。当初は、小林鷹之氏か小泉進次郎氏が圧勝するだろうという予測だったことも興味をかきたてた。なにしろ二人とも40代であり、これまでの常識でいえば、立候補すらできないような経歴にみえたからだ。すくなくとも前回までは、派閥を背負って選ばれた人が自民党の総裁選に立候補した。だから、派閥の数よりずっと少ないし、また、大物感はたしかにあるひとたちが多かった。しかし、今回は最初に話題に昇ってきたのか、この若手二人であり、そして、当初は12名もの立候補があるのではないかと予想された。実際に、意思表明したひとはそれだけいたのである。そして、まずは小林鷹之氏の印象が薄くなり、小泉圧勝のような雰囲気に一時はなった。しかし、実際に立候補を表明した記者会見で、はやくもつまずく。抜粋をみただけだが、よくもまあ、こんな反感をかうようなことを、堂々と述べるものだ、と通常経験しないような感心をしてしまった。小泉氏の真意かどうかはわからないが、企業が労働者を解雇する自由を拡大しようなどということが、国民だけではなく、おそらく自民党支持層からも受け入れられるはずがない。既に、日本は、大リストラ時代を経ており、実態として解雇が不自由だとは、一般に思われていない。リストラと非正規の拡大という、企業の横暴としかいいようのないことを、そして、現在ではさすがに、保守的な人ですら、そんなことをいう人はあまりいないときに、これほど、あっけらかんと主張したのだから、びっくりしたというのが、多くの人の実感だったろう。その後小泉氏は軌道修正というか、「より丁寧」な説明を試みたようだが、最初の記者会見の、しかも冒頭で述べたことだから、最後まで、解雇自由の小泉、という印象がつきまとった。

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