オランダ留学記1992~93 4 オランダの大学

 私の海外研修の主たる目的は、自分の子どもをオランダの現地校にいれて、オランダの教育を生で知ることだったから、調査の主力はそちらだったが、当然大学から派遣されて、大学で学んでいるのだから、大学の在り方には注意を払った。ただ、大学というのは、日本でも同様だが、非常に大きく、かつ多様な組織だ。働いているひとは数百しかいなくても、学生は一万を越える場合が少なくないし、領域が広い。
 私が所属していたのは、オランダで最も古いライデン大学で、日本学科にいたが、いろいろなところから、留学生が来ている、実に国際色豊かなところだった。留学生の部屋にいたのだが、地域の政治状況を反映して、国内の対立が持ち込まれて、激しい喧嘩が起きることなどもあった。とくに中国人留学生に、そうした争いが目立った。政治的な弾圧から逃れてきたひとと、体制に忠実な学生が同居しているわけだから、争いごとも当然なわけだった。
 さて、「大学」といっても、日本とヨーロッパでは、その意味するところが異なる。ヨーロッパで「大学」というときには、基本的に修士課程までを含むことが多く、卒業によって修士となる。オランダはその典型である。それに対して、日本の四年制大学は、オランダでは高等専門学校と呼ばれていて、職業的な専門教育を行うところである。小学校の教師養成は、高等専門学校で行われている。つまり、高等教育機関として、修士を取得させる大学と、学士を取得させる高等専門学校があり、その入学資格も異なる。
 このことでわかるように、オランダの大学はエリート教育機関である。当時の進学率は、まだ10%程度であった。それでもかなり増加していたくらいだ。そして、学生には全員給付制の奨学金が支給されていた。何故、全員に支給されているのかは、説がふたつあるようで、実際のところはわからない。あるとき力関係でそうなったので、継続しているという側面もあるだろう。

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総務省接待問題 山田真貴子とは何者か

 菅首相長男による総務省官僚接待問題は、当初予想されたよりは、ずっと長引き、深刻な度合いを強めている。現在は、内閣広報官の山田真貴子氏の問題に焦点が移っているように見える。山田氏の場合は、長男との関係よりは、直接的に菅首相との関係という点において問題が深いように思われる。別に汚職とかそういうレベルではないが。
 私が、名前はともかく、山田氏の存在に強く印象づけられたのは、首相の記者会見を仕切っている姿だった。首相の当初の説明が終わって、記者からの質問になったときに、山田氏がすべて、記者の所属名と名前を言った上で、質問者を指定したのである。そんなやり方を、私は初めてみた。普通は、「最初に所属と名前をいってから質問をしてください」というものだ。だから、強烈な印象だったのである。「このひとは、会見に出ている記者の所属と名前を全部知っているのか」という驚きだ。もちろん、全員の名前を知っているのか、あるいは、知っている人と知らない人がいるのか、それはわからない。全員知っているとすれば、内閣広報官が、記者会見に臨む記者たちを全員掌握しているということになる。すごい、というよりは恐ろしいという感じだ。もちろん、記者クラブは決まった部屋をもっていて、そこに詰めている記者は、決まっているわけだから、知っていてもおかしくはないが、普段から話したり、あるいは飲み会をもったりしていなければ、全員の名前は、記者会見でとっさに指名するほどに記憶しないのではないだろうか。全員は知っていないとすれば、記者会見で指名してもらえるのは、名前を覚えてもらっている記者だけだということになる。それはそれで言論統制だ。とにかく、短い質問時間しかなかったが、山田氏が指名した記者は、全員所属と名前を、山田氏が言っていた。そして、「時間です」と言って、さっさと終りにしてしまう、その冷淡というか、冷静なやり方にも驚いたものだ。

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オリンピック準備のずぶずぶと世論操作の強化

 日本人は組織力があり、大きな大会の開催は得意だと、みずから誇っているようなところがあるが、現在のオリンピック開催への準備は、あまりに酷い。外国からも、それをあからさまに指摘されている始末である。バイデンアメリカ大統領やファウチ新型コロナウィルス対策責任者は、科学的な判断が必要だと表明して、暗に、現在の日本の準備が、科学的なものになっていないことを批判している。
 またオーストラリアの感染専門家は、4点の問題を指摘している。
 ①日本で流行の第3波が続き多数の陽性患者が出ている②検査比率が主要国中では著しく低い③感染防止対策の多くが国民の自主性に任されている④ワクチン接種が始まっていない(「公衆衛生の論理無視」豪の疫学専門家、東京五輪に懸念 森氏発言も批判 毎日新聞2021.2.26)
 海外の専門家には、東京オリンピックの感染対策は、まったく不合格なのである。具体的にみてみよう。

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総務省接待問題は、自民党内の権力闘争ではないか

 メディアでは、連日、菅首相の長男による、総務省官僚への接待問題を扱っている。処分もなされたので、利害関係者による接待は、禁止されており、倫理規定に違反しているということで、処分がなされたが、そもそもこの事件の本当の問題については、あまり納得のいく説明がされていない。もちろん、皆無ではないが。
 官僚が禁止されている接待を受けるのは、もちろん、承知の上だろうが、では何故そんな危険なことをしたのか。あるいは、処分されたら、本当に将来に大きなマイナスなのか。
 そもそも、官僚になる人たちの多くは、権力の中枢に自分が位置を占めたいと思っているに違いない。そのなかには、単に権力を振るいたいというひとや、自分の理想とする政策を実現するために、権力の中枢にいることが必要だと考えるひともいるだろう。そのために、有力政治家と近づきになり、とくに昔は姻戚関係になるのが普通だった。現在でいえば、加藤官房長官は、その代表的な存在であろう。姻戚関係までいかなくても、近しい関係になることによって、有力政治家に引き立てられ、事務次官になったり、あるいは、政治家に転身したりする。だから、新人のころはまだしも、ある程度の地位についたころからは、どの政治家につくのか、難しい選択になるようだ。ついた政治家が失脚すれば、自分の地位も危うくなるからだ。

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メディアの告発がかえって煽りになっていないか 自転車の煽り運転報道

 今日(2月24日)の羽鳥モーニングショーでは、自転車の煽り運転の映像がかなりしつこく流され、こうした運転の危険性と責任について扱われていた。先週も事例は異なるが、同じテーマの放送があった。だいたい、私の印象では、テレビ朝日はこの手の告発ものが好きというか、得意というか、よく扱う。しかし、みていて、確かにこうした問題を扱う必要はあると思うが、扱い方にどうも疑問を感じるのである。映像をこれでもか、というほど繰り返しみせるのだが、これを見て「俺もやってみようか」というような気持ちを起こすような若者が、出てもおかしくないと感じてしまうのだ。そんなことは、どんな番組でも起きる可能性がある、といえば、確かにそうだが、扱いかたによって、程度の差は出てくると思うし、だいたいにおいてテレ朝の扱いかたは、まねするひとが出ることを、最大限防止しようという姿勢をあまり感じないのである。

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真子内親王結婚、かなり難しくなったか

 注目された天皇の真子結婚問題に関するコメントが出された。以下のようなものだった。
 
 「眞子内親王の結婚については、国民の間でさまざまな意見があることは私も承知しております。このことについては、眞子内親王が、ご両親とよく話し合い、秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております」
 
 映像でもみたが、非常に短いが、極めてよく考えられた、これ以外ないような回答だった。上皇・上皇后が裁可されたという結婚だから、天皇があれこれいうことではないが、誕生日会見への質問事項に加えられたという報道があって、注目された回答だった。明確に賛成するのも、また逆に明確に反対するのも、天皇という立場上避ける必要があったろう。そうした賛否そのものについては言及せず、父親である秋篠宮の言葉をかりて、必要なことを示した。見事な回答だったと思う。
 この結婚がこじれたのは、秋篠宮家と小室家の問題であって、他の皇族にとっては迷惑以外の何ものでもないだろう。皇族のなかでも、嫌悪感を示す者も少なくないと報道されている。

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読書ノート『原節子の真実』石井妙子

 石井妙子氏の『女帝小池百合子』がとても面白かったので、ついでに『原節子の真実』も購入していたのだが、私はあまり映画をみないので、しはらく放置していた。しかし、気が変わって読んでみたのだが、非常に面白かった。原節子の映画が見たくなったわけではないが、戦前から戦後への移行期に表れた映画界の人間模様や、そのときの原節子の生きざまが、かなり筋の通ったものであったことを知り、日本社会の在り方を考える上でも参考になると思った。
 他方、私は、まったく原節子という女優について知らないままだったので、世間の定説などにはまったく囚われずに読んだ。例えば、原節子は、40歳くらいで、まったく誰にも知らせることなく、引退をして、その後まったく公開の場に現れず、隠遁生活をしたのだそうだが、そのきっかけが、小津安二郎が亡くなったからだというのが、多くの人の見方だったようだ。しかし、石井妙子氏は、その考えをまっこうから否定する。定説に親しんでいたひとには、ショックが大きいようだが、逆に私は、読んでいて、小津と原に関する、石井氏の描き方には、多少疑問をもった。それはあとで触れよう。
 原節子は、本名会田昌江というのだそうだが、かなり裕福だったが、没落した家(といっても、かなり貧しいというようでもなかったようだ)の大家族に生まれた。非常に成績がよかったが、レベルが高く入りたかった高等女学校の試験の日に体調をくずしていて、不合格になり、不本意な私学にはいったが、経済的なこともあり、義兄に誘われて映画の世界にはいった。14歳のときだ。そして、結局、このかなりファナティック義兄とずっと行動をともにする。

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制服に抗議を始めた子どもたち

 東京オリンピック組織委員会の元会長だった森氏の騒動で、男女平等がふたたび新たな段階で議論されるようになった。日本の男女平等のランクがひどく低いことは、以前から指摘されていた。まだまだ、議論として両論ある分野も多いが、そのひとつが服装に関してだと思う。以前ほど男女差はなくなってきたが、まだ残っている分野がある。中高生徒たちの制服だ。公立学校の生徒に、制服を強制しているのは、先進国としては珍しいわけだが、男女の差も明確になっている。制服として決まっていて、男女差がないのは、体操着のジャージくらいのものではないだろうか。そして、以前から気になっていたのが、女子中学生や高校生のスカートである。これは、男女差別問題だけではなく、健康の問題として取り上げられるべき点でもある。真冬にも、スカートが強制されているのは、健康上の由々しき問題であると思う。そのなかで話題になったことがある。
 
 高校生新聞2月15日号に「制服のスカートは寒くて困る 女子高校生が勇気をだしてスラックスで登校したら」という記事が出た。スカートは寒いので、自分でスラックスを注文して、許可を申請したら、簡単に通って、翌日からスラックス登校したという話だ。はじめはジロジロみられたが、やがて生徒たちにも理解され、体調不良もなくなったというものだ。
 日本の制服で、女子用は冬でもスカートが普通で、これは、多くの批判を受けてきた。オランダにいたとき、冬にスカートで登校している子どもたちなどは、見たことがなかった。明らかに、真冬のスカートは、健康に悪い。にもかかわらず、頑固に制服としては、スカートに決まっている。上記は、別に強く抗議するとか、校則改定などを働きかけたわけではなく、そもそも校則変更なしに許可されたという話だ。

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オランダ留学記1992~93 3 ドイツにおけるトルコ人襲撃

 大分前に書き始め継続して書くつもりだったが、頓挫していたこの連載をまた書くことにした。今度こそは、最後までいきたいと考えている。
 前回までは、とりあえず住居に落ち着き、子どもたち二人を公立の小学校にいれつつ、オランダに留学した当初の目的である「学校選択」についての通信をだしたところまで書いた。そうして、やっと落ち着いて、学校生活の様子などを知るようになった矢先に、大きな事件がとなりのドイツで起こった。
 1989年11月10日にベルリンの壁が崩壊し、翌1990年10月3日に東西ドイツが統一された。そして、1992年の秋は、翌1993年1月1日のEU発足の直前であった。このように書くと、当時のヨーロッパが、非常に発展的で好ましい状況だったと考えがちであるが、そういう一面があると同時に、かなり緊張した事件も多発していた。東西ドイツが統一されたことは、東ドイツから大量に西に人口移動が生じたことになるし、とにかく、東ドイツは西に比較して、非常に貧しかったから、統一といっても、極めて困難な事業だったのである。そうしたことを背景に、ネオナチの勢力が増大し、各地で暴力事件を起こしていた。

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橋本会長は議員辞職すべきではないか

 橋本聖子氏が東京オリンピック組織委員会会長に就任し、五輪担当大臣の後任が決まったあとも、ごたごたが続いている。それは、当初自民党を離党はしないと明言していたにもかかわらず、今日(2月19日)に突然離党の表明がなされたことである。これは、野党が疑問を呈したからだと言われている。そこで、今度は、議員辞職はしなくてもいいのか、という問題が生じてくるはずである。
 当初、橋本氏は、会長になることを固辞していたと言われている。実際に、メディアのインタビューでも、そうした姿勢を表わしていた。それは、報道によれば、ふたつ理由があったとされる。ひとつは、経済的問題であり、ひとつは過去のセクハラ疑惑である。経済的問題とは、橋本氏は子どもが多数おり、子育ての費用がかなりかかるから、大臣を辞めるだけならまだしも、議員を辞めるとなると、とても会長としての給与ではやっていけないという危惧だったそうだ。確かに子どもが6名(?)もいれば、かなりの経済的負担だろう。しかし、それは、保障するから、というような約束がなされたようだ。真相はわからないが、長くても今年で廃止される組織委員会だから、その後の生活をきちんと保障するということだろう。会長退任のあとは、また何かの大臣にするとか、とにかく、議員を辞める必要はないという保障をしたのだろう。
 ここで、問題が起きるのは、橋本氏は、参議院の比例代表によって、当選していることだ。過去比例で当選して、党を辞めたり、あるいは他党に移籍したりした議員が何人もいる。そして、その度に、**党として当選したのだから、その党籍を離れたら、議員を失う、その党の次の名簿のひとを繰り上げ当選させるのが、民主主義的原則なのではないか、という議論が起きた。そして、さまざまな議論の末、現在国会法109条の2が存在しているのである。長いがそのまま引用しておく。

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