原作の改変を考える2

 「セクシー田中さん」問題は、論議が活発に続いているとはいえないが、まだなされている。そのなかで、弁護士の人が書いた
『セクシー田中さん』問題で注目される「著作者人格権」 アメリカよりも強力に保護されていた原作者の権利とは?」という文章があった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa3692f2afbb29b64125eaf08f4624445ffc0f86
 ここで注目したのは、著作者人格権は、欧米ではあまり法律としては厳格に規定されておらず、日本のほうが厳しいというのだ。しかし、だからといって、「同一性保持権」を欧米が無視しているとは思えない。これは、当たり前の常識として守られているので、特に法で規定することではないと思われているように思われる。パロディーなど問題にならないというが、(問題にあることもあるはずだが)パロディーは、二次的創作と考えられていて、別ものだという意識なのではないだろうかと思われるのである。 “原作の改変を考える2” の続きを読む

ジャニーズは解体しかないのではないか

 別の文章を用意していたのだが、急遽この話題に切り換えることにした。これまで不安視されてきたジャニーズ関連のできごとが、ついに現実のものになってしまったからだある。それは、ジャニー氏及び事務所のあまりに冷酷な所業によって、生命が失われるのではないか、という不安であった。現時点では、ふたりの件が報道されている。

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ジャニーズと旧ソ連の人材育成システムの類似性を考える

 芸能界にはまったく興味のない私だが、ジャニーズ問題は、まったく別の観点で非常に興味がある。そのなかでも、ジャニーズでは、所属タレントが取り分が25%だということに驚いた人が多い。出演料として受けとった分の半分を、経費として事務所がとり、残りを折半するというのだから、驚いてしまう。もちろん、さまざまな支援があるとしても、実際に仕事をして報酬を得るのは、タレント自身であるし、また、タレントに価値を認めるから採用した企業は高いお金を払うのだろう。

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部活の地域移管問題 2 

 前回は、スポーツや文化は多様になっているので、多様な要求に学校の部活という形態は対応できないものになっていて、弊害が多くなってきたことをのべた。その解決としては、地域に多様なクラブを設立して、自分の求める形態の活動をしているクラブを選択して参加するようにすればよい、という主張であった。
 今回は、もうひとつの部活の問題である、教師の無償労働の問題を考える。
 
 部活は学校の内部的な活動として行われるが、正規の学校教育の一環ではないので、その指導にかかわる教師は、どんなに長時間指導しても、その対価が支払われることは、つい最近までなかった。近年では、ごくごくわずかな手当がだされるようになっているようだが、到底、指導にかかる労働に見合うものではない。そして、問題は、無償労働であるにもかかわらず、何か事故があったときには、責任を問われるのである。もちろん、民事的な損害賠償責任を負うのは、国家だから、そうした責任を教師個人が負うことはないが、不注意による行政処分などは十分にありうる。不十分ながらの手当がだされるようになった経緯は、詳細には知らないが、教師の過重労働が社会問題化し、その大きな要因が部活指導になることが、大きく問題になったから、せめて手当を出すということになったのだろう。残念ながら、サービスをうける側からの提起はあまりなかったようである。

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箱物と運営

 今回の旅行で、最後に、バブル最盛期に建築されたというリゾート地に宿泊した。冬はスキーを楽しむことができるが、今は真夏で、しかも平日だったので、実に閑散としていた。バブルを感じさせる広大な建物で、部屋のつくりも贅沢にできていて、かなり広い。もし、なかの機能がそのまま運営されていたら、けっこう長く滞在しても飽きないかも知れない。
 しかし、中の店はほとんどしまっており、レストランもたくさんあるのだが、開いているのはひとつだけで、夕食も朝食も同じところで、しかも、あまり客がいない状態だった。冬は、それなりにたくさんの客がいるのだそうだが、少ないとこれほど機能停止状態になるのかとびっくりするほどだ。聞くところによると、ソニーが最初たてたそうだが、バブルがはじけて潰れ、ロッテが買い取って、現在運営されているという。私はスキーはまったくしないので、正確なところはわからないが、スキーができるといっても、この敷地内に大きなスキー場があるわけではなく、比較的こじんまりとしたスキー場だ。近辺のところにでかけていくということは可能なのだろうが。

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記念館は、役割を果たしているか

 今回の旅行で、記念館に関しては2つ行った。いつも感じるのだが、記念館とは何を伝えようとしているのか、あるいは何を伝えるべきなのか、そして、訪問者は何を知りたがっていると解して、記念館を構成しているのか、そんな疑問を持つのである。
 まず広島の原爆記念館をみた。いままで2回ほど広島にいったのだが、ここは訪れていなかった。今回は不可欠だと考えたのだが、期待を満たされたとはいえない。もちろん、一般市民、外国人、そして、私のような高齢者では、それぞれ求めるのが違うだろうし、あまり、原爆投下の実態について知らない人にたいしては、あのような展示でいいのかも知れない。しかし、日本人の多くは、とくに中高年の人は、原爆の悲惨さは、さまざまな機会に伝えられており、多くの情報をもっている。だから、単に悲惨な写真を見せられても、特別に記念館にきて、新しいことを知ったという気持ちにはなれない。

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城の鑑賞とバリアフリー

 名古屋城の再建論議だが、10日ほど前に松江城を見て考えさせられた。松江城は江戸時代のままだから、当然エレベーターはない。天守閣の上に行くのはかなり大変である。そもそも城はバリアフリーと正反対の仕組みで建築されたものである。至るところにバリアを設置している。まず、一番下の門をはいっても、道が込み入っており、階段もわざわざ昇りにくく設計している。なかなか上の重要な建物に行き着かない。そして、建物自体が非常に高い場所に建っている。特に、現在の観光地として重要な天守閣は、なかの階段そのものが、非常に急にできており、健康な若者でも、おそらくスムーズには登れないだろう。
 城は軍事的な目的でつくられており、敵の攻撃を迎え撃つようにできているものだ。だから、堀があるのだし、堀をわたっても、いたるところに、難所が設定されている。つまり、バリアフリーどころか、バリアそのものの集積のようなものが、戦国時代から江戸時代初期につくられた城なのである。
 そういう建物をバリアフリーにして観賞して場合、城の本質を理解できるのだろうか、という疑問をもたざるをえなかった。そういう疑問が湧いてきた。城の建物はこのようなものだったということは分かる。観光地の天守閣には、甲冑や鉄砲、大砲などの武器が展示されている。そして、当時の衣服や食事などもわかるようになっている。しかし、城がどのように機能し、敵とどのように闘う全体の構造はわからない。

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不祥事と上映問題を考える 「緊急取り調べ室」

 猿之助が出演している映画「緊急取り調べ室FINAL」が、とりあえず上演延期になった。報道によると、役者を変えて、その部分だけ取り直しをするのだという。その部分だけといっても、重要なゲスト出演の役、つまり、準主人公みたいなものだから、たぶん出場場面もたくさんあるだろうから、かなりの負担となるだろう。
 このような出演者による不祥事のための作品、とくに映画やテレビドラマの中止、延期問題は、毎年のように繰り返されている。そして、賛否両論メディア、ネットを賑わせる。難しい問題だが、ここで書く以上の効果を期待しているわけではないが、ひとつの見解を表明しておきたい。
 
 結論を最初にいえば、少なくとも、出演者に不祥事があったとしても、上映中止にする必要はないということだ。ただし、今回は延期であって中止ではないので、また別の判断が必要だし、単なる延期ではなく、取り直しということなので、そのことによる問題が発生する可能性もある。

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WBC韓国選手、飲酒で謝罪

 韓国で、WBCネタで大きな問題がおきているのだそうだ。
「揺れる韓国プロ野球界!日韓戦前日の“深夜の酒盛り騒動”発覚で「日本キラー」は二軍降格「ベテランとして考えが浅はか」」
 簡単にいえば、WBCの試合の前日に、主力選手が高級な店にいって飲酒していたというのだ。記事によれば朝帰りだったそうだが、全員がそうなのか、何時だったのかは不明である。当事者たちは批判された内容を認めているということで、謝罪をしている。球団としての処分も検討されているという。そして、ファンは激怒しているような報道である。
 
 面白いことに、日本人が書いているコメントのほとんどは、大人だし、プロなんだから、批判するようなことではない、それがいけないなら、次に選出しないとか、成績が落ちているなら、それによる対応をすればいいことだ、という、非難そのものに対する疑問が圧倒的なのだ。韓国の場合、決勝ラウンドにもいけずに敗退したために、犯人探し的な雰囲気になっているのだろうが、おそらく、日本なら、犯人探し的な雰囲気にはならないと思われる。ファンたちの「熱さ」の違いなのかも知れないが、やはり、国民性の違いだろうか。

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猿之助事件でみる歌舞伎界の前時代性

 猿之助事件は、当然その中心的問題は、犯罪に該当するのかどうかという点だが、それは別途考えることにして、その前の段階のことを考えたい。
 歌舞伎界が、他の芸術・芸能分野と極めて異なるのは、いまでも中心役者の育成が世襲家族単位が基本になっていること、そして男性だけの世界であることだ。女性差別に対して、非妥協的に批判する団体は、この歌舞伎の男性限定の世界に対して、どう思っているのだろう。私の見る限り、歌舞伎界も女性に門戸を開け、という主張を大々的に行っているとは思えない。ウィーンフィルがアメリカに演奏旅行にでかけたとき、アメリカの女性差別反対の団体が、大きな抗議運動をして、その後ウィーンフィルが女性団員を認めることになったという経緯があった。記録によると、歌舞伎は、2013年にアメリカ公演をしている。ウィーンフィルへの抗議運動以降だが、抗議運動があったとは記されていない。オーケストラとは受け取りが違うのかも知れない。

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