トランプの登場後、ウクライナ戦争の動向は激しく変化している。何度も文章を書きかけたのだが、書いているうちに情勢が変化してしまうので、没にせざるをえない文がいくつかあった。
トランプは、当初あからさまにプーチン寄りの姿勢をとり、まともな神経をもっているとは思えなかったが、途中、多少なりともウクライナへの配慮もするようになった。が、現在のところ、プーチンが戦争をやめる気がないことがわかった段階でも、プーチンよりの姿勢をとっているといえる。あれだけ戦争を終わらせる必要があるといっているのだから、そのためには、終わらせる気持のないプーチンを叩く以外には戦争集結は不可能だと思うのだが、結局、トランプは、責任感をもって対処しようとしているわけでもなく、アメリカが損をしなければよい、和平を実現してノーベル賞を手にすれば、それにこしたことはない、という姿勢なのだろうか。とにかくトランプの今後は予想できないが、ウクライナ戦争の行方の筋道はわかる。
ウクライナは、とにかく、頑張るだろう。もちろん、戦闘が一時的にせよ、完全に終わることが実現できれば、心底歓迎するだろう。とにかく、ウクライナは攻め込んだ側ではなく、攻められている、侵略されている側なのだから。他方、プーチンは、どうやら、まったく戦争を終わらせるつもりはなく、ウクライナ戦争が一応の休戦状態になったら、北欧、あるいはバルト三国を攻める意向をかためているようだ。現在完全に戦争経済・政治体制になっているので、戦争が本当に終わってしまうと、ロシア国内の経済・政治体制が安定的に保持できなくなっているという見方が強い。恐れているのは、第二のプリゴジンの反乱が起きることだという。その真偽は不明だが、とにかく、戦争状態にあることによって、プーチンの権力が維持されていくことは、確かだろう。
したがって、当分戦争状態は集結しない。ロシアがウクライナを完全に敗北させることは困難である以上に、ウクライナがロシア軍を敗北させて完全に撤退させることは困難だろう。それができるほどの力をもっているようにも思えない。また、休戦状態になって、ロシアが現在のウクライナ領土の一部を割譲したとしても、そこで平和が訪れることも考えられない。反ロシア闘争が継続するに違いないからである。
戦争が集結する、もっとも可能性が高く、また、期待される形は、ロシア国内における反乱であろう。そして、その可能性は決して低くないといえる。それは歴史が示している。そして、それが起りそうな状況になってきたと感じられる。
ロシア帝国が崩壊したのは、第一次世界大戦で、ロシアが敗北しつつあった状況において、二度の革命が起きた結果として、ソビエト連邦が成立したのである。革命が起きた時点で、帝政ロシアの軍隊が、敗北していたわけではなかった。敗北しつつある状況が革命を現実化させたのである。
そして、そのソ連も、アフガニスタン侵攻が10年に及び、撤退せざるをえない状況になり、その後、ソビエト政府そのものが崩壊したのである。二度あることは三度あるという箴言があるが、現在のウクライナ戦争の状況は、いつ、ロシア国内で反乱が起こっても不思議ではない。政府内の権力闘争として生じる場合もあるだろうし、また、少数民族の独立闘争が始まる可能性もある。そして、実際にその可能性は、具体的に語られてもいるわけである。ロシアの経済がさらに悪化していけば、そうした内乱の可能性は高まるだろう。そして、プーチンが倒された時点に、ウクライナ戦争が集結に向う最大のきっかけにあるはずである。
そして、そういうときがくることを大いに期待しよう。
そして、今回は書かないが、アメリカの情勢も、かなり危ないのではないかと思うのである。