私立高校で給料未払いで教職員のストライキ

 読売新聞(2022.5.12)によると、和歌山の私立の高校で校長を除く全教職員が授業を取りやめ、ストライキに入ったという。記事の一部を引用しておく。
---
 学校法人南陵学園(静岡県)が運営する私立和歌山南陵高校(和歌山県日高川町)で、校長を除く全教職員23人が、4月分の給与が支払われていないことなどを理由に11日の授業を取りやめた。教職員によるストライキは異例。教職員側は法人側に説明会の開催を求めているが、時期は固まっておらず、対立解消の見通しは立っていない。
 関係者によると、学校法人は23人の4月分給与を所定の4月28日に支払わず、5月9日付で御坊労働基準監督署から20日までに支払うよう是正勧告を受けたという。

 この高校では4月、各家庭が高校に支払う授業料を国が補助する「就学支援金」を法人側が受け取ったにもかかわらず、本来保護者に返すべき授業料計2000万円を支払っていないことが明らかになり、和歌山県が早急に還付するよう指導。法人側は4月末までに一部を還付し、残りは5月分の授業料などから差し引くと保護者側に伝えていた。
---
 学校全体の定員が360人だが、現在167人しか在籍していないという。半分しかいないのだから、当然私立高校としての経営は成り立たないはずだ。国の補助である「就学支援金」は、生徒が払う授業料の補助だから、受け取った分は、既に徴収した授業分を家庭に返却しなければいけないのに、未だ返却していないという。他の法人が経営する学校を買い取ったり、また、以前は休校期間が数年にわたったりした学校(以前の学校)だったりと、そもそも経営基盤が磐石ではなかった上に、少子化の影響を受けているのだろう。
 大学のように、進学率がまだ上昇する余地がある学校なら、「全員入学」(希望者より定員総計のほうが多い)状況になったとしても、まだなんとかなるが、高校は、進学率は事実上100%に近いから、少子化の影響を避けることはできない。15歳年齢が10万人減少すれば、全国の高校の10万人分の定員が埋まらないことになる。そういう波は、戦後何度か訪れた。私の属する団塊の世代が高校を抜けたときにも、多くの高校が廃校になった。私が住んでいたところにある私立高校では、最後の入学者は数名だったという事実があった。次は第二次ベビーブームが去ったあとだ。そして、少子化が進み、恒常的に高校の経営は悪化したが、2010年代前半くらいまでは、横ばいが続き、後半になると再び少子化が明確に表れた世代が高校に差しかかった。現在も緩やかに減少しているはずである。この私立和歌山南稜高校も、そうした少子化の波にうまく対応できていないのだろう。
 ホームページをみてみたが、実におそまつなもので、これでは、この高校に魅力を感じていきたいという生徒は、あまりいないのではないかと思ってしまう。実に、記述が簡略で、教育的情熱が伝わってこない。
 更に、経営が厳しくなるだろうと思われる学科構成になっている。学科が3つあって、アスリート・芸術、進学Ⅰ、進学Ⅱとある。部活も吹奏楽以外すべてスポーツ系である。スポーツで特色をだそうという経営方針が伝わってくるし、コーチには有名人を招いていることが書かれている。
 しかし、スポーツで売り出すためには、経営母体が大きくなければかなり難しいのである。私が所属していた大学は、中堅クラスだったと思うが、スポーツ推薦などは一切なく、スポーツで売り出す政策は皆無だった。スポーツが宣伝になるためには、高校の一流選手を推薦という形でスカウトし、優れた指導者を雇用する必要がある。かなりの費用がかかるのだ。そして、その費用は、学生の納入金をあてるわけだが、当然、学生数がかなりないと、そうした「余剰」分を生み出すことはできない。全体の教育の質を低下させるわけにはいかないからだ。
 高校でそれをやろうとすれば、同じように、生徒数がかなり多く集められ、かつ、一点突破的なスポーツの選択が必要であり、それがあたって、全国大会で優勝すれば、応募者も増えてよい循環ができるが、成功しなければ、負担が増えるだけだ。
 南稜高校の場合には、そもそも定員の半分しか生徒がいないわけだから、日常的な経費もままならないわけで、更にスポーツで成果をあげるなどは、相当無理がある。
 進学コースでは、毎日8時間授業を実施し、その後で、ベネッセのビデオをみたい放題、などと書いているから、どうも進学実績で勝負できるようにも思えない。
 以前の高校経営危機の時代に、徹底した授業改革で乗り切った長野県の篠ノ井旭高校のような例もあるが、校長の優れたリーダーシップと、教職員の覚醒があって可能になるもので、これもなかなか難しい。
 結局、子どもがいないのだから、経営ができなくなる高校がでることは、避けられないのが現実だろう。しかも、生徒数が少ないにもかかわらず、一部の生徒のための施設を特別に優遇して費用をかけていれば、ますます経営は厳しくなる。
 行政としては、生徒に不利がないように、受け入れ校の斡旋などをするなかで、廃校にするか、あるいは別の基盤をもった経営母体をさがすか、なんらかの指導が必要であるように思われる。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です