プールの水出しすぎで賠償請求 しかし、本当の問題は別に

 横須賀市の中学校で、教員がプールの給水栓を2か月間断続的に出しっぱなしにしたために、プール10~11杯分の水道水が流出し、348万円が余計にかかったので、その半額を担当教員、校長、教頭の3人に損害賠償したという報道があった。
 プールの水を誤って栓を抜いてしまい、もう一度いれ直すような事故は、たまにあると現場の先生から聞いている。プールの大きさや、自治体によって費用が違うだろうが、数十万の損失になり、誰が負担するか問題になるといっていた。
 しかし、今回の問題は、そうしたうっかりミスではなく、誤解による確信犯ともいうべき行為で、コロナ対策として、水を出しっぱなしにする必要があると思い込んだ担当教員が、他の教員が栓を締めても、再度栓を開けて水を入れ換えていたというのだから、不思議な事故だ。コロナの感染者がでたら、プールは中止にするだろうし、消毒が必要なら、消毒液を散布するだろう。水を入れ換えることで、感染症対策をするというのは、あまり聞いたことがない。どうして、そんな認識を仕入れたのか、ぜひ後追いの報道を期待したいものだ。

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ロシア擁護のネット書き込み

 ウクライナ戦争は、情報戦という側面が強く出ている。そして、情報戦は、日本のネットでの書き込みにも現れている。ヤフコメには、かなり不合理な書き込みが見られるからだ。ただし、この文章を書くために、再度ヤフコメをチェックしてみると、かなりの書き込みが消されているような気がした。よりたくさんの新たな書き込みが増えたので、うもれてしまった可能性もあるが、多少、記憶によって、書く部分があることをお断りしておきたい。
 現在は、ウクライナ支持、プーチン弾劾という色調が、日本のメディアとネットを支配しているが、それに挑戦する、疑問を呈する書き込みは、いくつかのパターンがある。
 
・ゼレンスキーにもかなり問題があり、例えば、ロシアを挑発すような政策をとっていた。プーチンが話し合おうと提案したのにそれを蹴ったために、プーチンは侵攻せざるをえなくなった。未成年、高齢者以外の男性は国外に出てはいけないという政策はおかしい。
・人間を楯にしているのは、ゼレンスキーである。
・避難しようとしているウクライナ人を銃で撃っているのは、ウクライナ兵であって、ロシア兵ではない。ロシア兵には、ウクライナの民間人を殺害するメリットがない。

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犯罪者名の報道、検索、忘れられる権利について

 成人年齢が変更になり、かつては少年だった年齢が成人になる。18歳と19歳は成人として扱われると、これまで犯罪の容疑者になっても、実名報道されなかったが、今後はされることになる。明確な基準は、まだ定まっていないようだが、今後具体的な事例で問題になっていくだろう。そして、それに関連して、過去の犯罪に関して報道された名前を消してほしいという要望が、話題になっているが、この点を少し考えてみたいと思う。
 この問題は、犯罪に関わって実名を報道・公表することと、それをあとになって活用すること、削除することという3つの別の問題に分けて考える必要がある。
 
 まず実名報道の問題については、私は、原則匿名にすべきであると考えている。それは少年だけではなく、成人に対しても同様である。そもそも実名報道することに、何か意味があるのだろうか。人は、「知る権利」「報道の自由」があるという。しかし、勘違いしてはならないことは、この場合「報道の自由」が検討されるべきであって、「知る権利」とは無関係だということだ。「報道がなされて知る」のであれば、それは知る権利とはいえない。もちろん、個人が、自分の足で調べて知る権利はある。そうした調べる自由はある。だが、本人が調べるのではなく、報道によって知るのであれば、そして、ほぼすべての事例にわたって、個人にとっては、報道によって知ることになると考えられる。もし、報道が、実名を報道すべきであるという理由として、「知る権利」をあげるならば、もう報道しなかったら、「知る権利を侵す」ことになり、報道の自由ではなく、報道の義務があることになってしまう。それはまったくおかしな論理なのだ。 

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ロシアが未成年を戦場に送るのか

 ウクライナ政府が、「ロシアの少年少女団体であるユナルミヤの17歳18歳の未成年を、戦争に動員する決定がされた」と公表した、という報道がなされている。
 ユナルミヤという組織は、初めて知ったが、2016年に設立された、ロシアの青少年に愛国心を育てるための組織であり、当初は数千名の参加者だったが、現在では80万ともいわれている。(急速に増えているためか、記事によって数字がかなり異なる。)軍事的な訓練も含まれる。
 西側では、ヒトラーユーゲントに近いと批判しているようだが、それに対してロシアは反発をしているそうだ。確かに、ヒトラーユーゲントと似ていると批判するのは、なんとなくわかるが、私がいくつかのサイトでみた限りでは、あまりヒトラーユーゲントには似ていない。ヒトラーユーゲントは、明らかに将来の親衛隊育成の基礎過程のような部分があったことと、基本的に全員参加であり、放課後の活動を大きく拘束していた。そして、援農などの奉仕活動と、スポーツを含む軍事訓練が中心的な活動であった。最初から戦時体制を前提にしたような組織だったのである。

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アゾフ大隊は玉砕の決意か

 マリウポリで最後まで抵抗を続けているウクライナ兵士に対して、ロシアが降伏を勧め、降伏すれば、生命は保障すると呼びかけているが、ウクライナ首相が、アメリカの報道のインタビューに対して、あくまでも闘う意志を表明したと伝えられている。先に降伏した部隊が、本当に降伏したのかどうかは定かでないが、現在残っている部隊が、降伏しないであろうことは、前から予想している。最後はどうなるかわからないが、いまのところ降伏の意志はないと思われる。理由は簡単だ。現在残されている部隊は、アゾフ大隊とされており、ロシアが、「ナチ」と呼んでいる中心的な部隊であり、ウクライナ側で最も強硬なひとたちであるとされている。しかも、正規軍ではなく、内務省管轄の国土防衛隊という、特殊部隊である。国際法的にも、捕虜として扱う義務がない考えられる。更に2014年以降続いているドンパス地方におけるロシア系住民とウクライナ人の対立、軍事衝突において、最も過激に闘ってきたのが、アゾフ大隊であり、住民に反人権的な行為もしてきたとされる。

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プロ野球中継、時間で中断という問題

 私は、既に野球中継をみなくなってかなり経ったから、もちろん昨日見ていたわけではないが、巨人・阪神戦が、中途でテレビ中継が終わってしまったことが、大分話題になっているのだそうだ。連敗続きだった阪神が、巨人に勝った試合だが、めずらしく地上波で中継が行われていたらしく、勝利に酔いたい阪神ファンを中心に、途中打ち切りに怒って、抗議などをしたようだ。確かに、ずっと昔は、野球試合が延びると、スポンサーのご好意によって、中継を続けますという形が多かった。これは、プロ野球中継で数字がとれたからだ。しかし、次第に中継そのものが減っていき、いまではCSでの中継を、ファンは見るようになっている。CSなら、すべての試合を、最後までみられるからだ。ただし、有料である。
 この問題は、いろいろな要素を孕んでいると思う。そもそも、現在は有料で見ようと思えば、すべての試合をリアルタイムで見ることができるのでから、野球機構としては、それでいいと思っているのかも知れない。それならそれで構わないのだろう。野球に限らず、他のスポーツも、生中継はCS中心になっているし、たまにはyoutubeも使われるようだ。音楽のコンサートなども、youtubeでの配信をするように、コロナがきっかけだが、変化してきている。おそらく、コロナが収まって、実際のコンサートが開かれるようになっても、youtube配信などは残るのではないだろうか。ベルリンフィルは、ずっと前から、定期公演などは、すべてネット配信されるようになっている。

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ドイツは批判されるべきなのか

 最近、ゼレンスキーは、支援を思うようにしてくれない国に対して、批判する姿勢を強めている。その最大のターゲットがドイツだ。私の目からみると、ドイツは、これまでの姿勢をかなり変えて、ロシアとの対決を厭わず、ウクライナを支援する姿勢を見せているように思われるが、ゼレンスキーには不十分に見えるのだろうか。
 しかし、これまでの流れを、少し前に遡って考えてみれば、現在の状況だけでドイツを批判することには、大きな疑問が残る。
 ドイツが批判されている背景には、ロシアとの経済的結びつきを強めていたことがある。ドイツはエネルギーの半分近くをロシアに依存する状態になっていたために、ロシアに対する経済制裁を、他国に比較すると不徹底になっている。更に、ウクライナのNATO加盟に反対したということも、もうひとつの大きな理由と言われている。このことによって、ドイツを批判するひとたちは、ネットでも散見される。なぜ、ロシアなどと友好的になったのか、というわけだ。確かに、現在のロシア、プーチンの所業をみれば、批判したくなる気持ちもわかるが、しかし、大局的にみれば、ドイツのとった政策を適切なものと評価することも可能である。ドイツを一方的に批判するのではなく、もう少し歴史をふり返っておくことも必要なのではないかと思う。

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小室圭氏が不合格、それよりも重大なことは

 ニューヨークで新婚生活を楽しんでいる小室圭氏が、2月に受験したニューヨーク州の司法試験に不合格になったことが、一斉にメディアによって報道された。宮内庁とニューヨーク領事館との協定なのか、圧力なのか、小室夫妻の私生活について報道しないことになっていたようだが、この試験結果だけは、例外なのだろうか。あるいは、だれでも確認できるウェブ上での発表なので、どうせネットのひとたちに知れ渡るからというので、報道したのか、むしろそこに興味をもったほどだ。というのは、ネット上では、2月の受験のこともかなり多くのyoutuberによって取り上げられていたが、大手メディアは一切報道していなかった。せいぜい憶測記事だけだったのだから、今回は、NHKまでニュースで取り上げたのは、不思議な現象だった。

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河瀨直美氏の東大入学式祝辞を読む

 東大の入学式における河瀨直美氏の祝辞が、大分話題になっている。新聞報道されたのは、ロシアのウクライナ侵攻に関する部分で、「ロシアを悪者にするのは簡単だが、もっと複眼的にみよ」というような話をしたと紹介してあった。そして、その部分に関して、ネットではかなりの批判が巻き起こり、「ロシアを悪者にするのは、国際的にみて簡単ではない」とか、「ロシアを悪者と認定できないようなことでは、正しい判断をしていない」とか、かなり厳しい批判がある。そこで、祝辞の全文を読んでみた。率直にいえば、疑問のほうが強かった。
 それほど長いものではないが、新聞報道での紹介と、全体の印象はかなり異なる。というのは、ウクライナ侵攻について述べた部分は、極めて短いからだ。ほとんどは、自分の生まれと育ち、そして、映画人としての歩みが語られている。そして、私には唐突にみえたが、ウクライナ侵攻に関する部分が出てくる。報道では一部なので、せめて、その部分を引用しておこう。

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ウクライナ侵攻の実質的失敗が見えてきたが、ヨーロッパにも黄昏が

 ウクライナ侵攻が始まったとき、意外に多くの人が、これは「プーチンの終わりの始まりだ」と主張していた。確かにその通りだと思う。そして、それが少しずつ現実的に見えてきた。
 まずはっきりしてきたのは、プーチンは、明らかに逆の効果を、ウクライナ侵攻で呼び込んでしまった。プーチンの最低限の目標は、ウクライナにNATO加盟を断念させることだった。ウクライナがNATOに加盟してしまえば、ロシアがNATOと直接接することになる。だから、どうしても、緩衝地帯がほしい。実は既にバルト三国と国境を接しているのだが、比較的大国であるベラルーシとウクライナがNATOに加盟していないから、大きな緩衝地帯を形成していた。しかし、ウクライナ侵攻の結果、スウェーデンとフィンランドがNATO加盟の意向を示し、国民の支持も形成されている。スウェーデンは直接ロシアと国境を接していないが、フィンランドはかなりの長い隣接地域がある。しかも、フィンランドは、西側に属しつつも、ソ連、ロシアとの関係を考慮して、NATOに入らないできた国だ。それが、NATO加盟を決意し、夏には実現するといわれている。スウェーデンやフィンランドは、自由主義国家の優等生のように考えられているし、国防もしっかりしているから、加盟申請すれば、NATOとしてはすぐに承認するだろう。プーチンのNATO対抗意識を、国民は嫌でも知らされているはずだから、スウェーデンとフィンランドが実際にNATOに加盟したとき、プーチンは国民にどう説明するのだろうか。また、国民はどう受け取るのだろうか。フィンランドもナチが支配するようになってしまったというのだろうか。

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