今月の25日、スイスのダボスで行われた会議で、キッシンジャーが、停戦を促し、ロシアが占領している地域を、ウクライナがロシアに割譲することを提起したことに対して、ゼレンスキーが猛反発したことが話題になっている。ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、日本においても、戦争で人が死ぬのは問題だから、早く停戦すべきだという意見は、いろいろな人からでている。とくにリベラルの人がそうした見解を示すことが多かったようだ。代表的には和田春樹氏などがそうだ。もちろん、リベラルに限らない。
今度はキッシンジャーが提起したということで、国際的にも大きな話題になっているようだ。しかし、私にはいかにもキッシンジャーらしい発言だと思った。ベトナム和平をまとめた功績でノーベル賞を受賞しているが、あわせて受賞したベトナム側は、受賞を拒否している。ノーベル平和賞に対する疑問が沸き起こったものだ。キッシンジャーはあくまでもアメリカの利害に立って、ベトナムを従わせるべく奮闘したに過ぎないのであって、より大きな敗北に至らないための方策を、当時とったに過ぎない。アメリカ人であり、アメリカ政府の代表としての交渉だから、それは当然ともいえる。