東電旧経営者に13兆円の賠償を命じる判決

 7月13日に、東京地裁が、福島原発事故に関して、旧経営陣4人に、13兆円の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。
 最初から話がずれるが、これは安倍元首相死去の影響があるのだろうかと思ったのだが、どうなのだろうか。他にも、安倍氏が抑えていたと言われることが、死去後に実施されている。裁判の判決だから、ある程度前に結論が出ていたはずだが、13兆円を認めるというのは、急遽加算された可能性はないのだろうか。というのは、原発は、事故後も、積極推進だったのが安倍氏であり、それよりも、安倍第一次内閣のときに、国会で津波対策について質問をされ、もっときちんと対策をとる必要があるのではないか、津波がきたら危険だ、という指摘を受けていたにもかかわらず、それを拒否したのが、当時の安倍首相だったからである。つまり、安倍氏が生存していれば、経営陣の責任を認定する判断は、当然でていただろうが、ここまで巨額な賠償責任をだしていたかどうか、疑問に思っても不自然ではない。これまで、旧経営陣に会社への損失の責任をとって、賠償を命じた最高額が、オリンパス事件での594億円なのである。594億円だって巨額だが、13兆というと桁が違う。もちろん、そんな支払いは不可能だろうから、判決が確定しても、実際に支払うことはないだろうが、それでも、こうした判決をだした意義は大きいといえる。

 何よりも、原発の安全性に対する経営者の責任の大きさを示したことである。「原発再開の絶対条件」で書いたように、現在の技術をすべて動員して安全対策をすれば、私は原発事故はかなりの程度防げるものだと思っている。
 しかし、実際には、安全対策は、コストを理由に手抜きされるのである。前述した国会での安倍元首相への質疑に、典型的に表れている。あのとき、質問者が提起したことを、真摯に受けとめて対応をとっていれば、福島原発事故は防げた可能性が、極めて高いのである。というのは、その質問で指摘されていた、津波によって起こりうる事態が、その通りに起きたからだ。あの事故が起こったあと、私は、新聞検索で、福島原発の過去の事故を調べたのだが、福島原発は、かなり頻繁に事故を起こしていたことがわかった。そうした事故の頻度をまじめに考えれば、経営陣としては、国会で指摘されなくても、きちんとした対策をとるべきものである。そういう責任がある。
 この判決の巨額な賠償責任の認定は、そうした事故対策に対して、絶対に手抜きがあってはいけないし、あらゆる事故の可能性を最高の技術で防ぐ手だてをとることが求められているのだ、ということを示したといえる。
 各電力会社の経営陣は、この判決で大きなショックを受けたとされるが、事故があったから、責任を認定されたのではない。地震が予測されていたし、対策を講じるべきであると意見されていたにもかかわらず、それを無視して、対応をとらなかったことに対して、責任が認定されたのである。だから、普段から経営者としての責任をはたして、手抜きをせずに事故対策をとっていれば、なんら恐れることはないのだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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