消えゆく秋

 日本には明確な四季があるために、豊かな文化が発展したという意識がある。(たとえば俳句)しかし、近年このことは崩壊しつつあるのではないかという不安が大きくなっている。つまり、春や秋が消えつつあるのではないかという意識である。多くのひとが感じているに違いない。
 では、秋とは何なのか。大日本国語辞典(小学館)初め、国語辞書では、単に9月から11月とか、秋分から冬至までなどと、暦上の区分が説明されている。しかし、さすがに百科事典では、より詳細な説明がある。「日本大百科全書」には、以下のような記述がある。
・日本では稲の刈り上げの時期
・気候的には、夏の暑さと冬の寒さの中休み
・日本の気候の特質として、台風が来る可能性が高い、雨が多い、鱗雲や鯖雲などが現われる、はじめには残暑、終わりには初霜などがある等々があげられている。
 だが、気候がかなり上記のような説明とは違ってきていることは明白だし、最近は台風はむしろ夏にたくさんやってくる。
 こうした秋の感覚があたっていると感じるかどうかは別として、秋という季節に気持ちよさを期待するのは、誰でも同じだろう。とくに最近は夏に猛暑が続いているから、秋がこないかと心待ちにする。しかし、秋がきたと思うと、あっというまに冬の感じがしてくるわけである。
 そこで、私は、春・夏・秋・冬について、まったく単純な規準を自己流に設定している。これは極めて単純なので、判断がたやすい。それは、暖房が必要な季節=冬、冷房が必要な時期=夏、いずれも不要な時期=春・秋というものである。これで、日々判断していると、夏と冬が圧倒的に長く、春と秋はほんのわずかしかないことに気がつく。私の家では、30度を超えたら冷房をつけ、20度を下回ったら暖房をつけるという規準を設けている。それで判断すると、この10月の初旬は冷房を何度かつけていた。そして、2、3日前から暖房をいれている。さすがに、冷房と暖房を日毎に変えることはなかったが、(そういう年もあった)10月初旬は夏、下旬は冬ということになり、秋は10中旬のわずか10日前後ということになってしまう。暦上の秋よりは、このほうが生活実感としての秋だから、私は重要だと思うのである。
 つまり、全体として温暖化が進み、その結果として春と秋が消滅するということは、日本の気候が、温暖湿潤気候から、サバナ気候に変化しつつあるということになるのではないか、と危惧せざるをえないのである。
 いまだに、温暖化を否定する政治家がいるが(トランプ)、国として、また個人としてもできることをやって、温暖化対策を進める必要があると思う。そして、春と秋のより長い復活を期待したい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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