国会議員削減の合意?

 維新が自民党との連立の条件として、国会議員定数の削減を要求し、高市総裁が了承したと報道されている。削減対象は、比例だという。比例を削減することは、自民党としても、特別問題を感じないに違いない。もちろん、比例で選出されている自民党議員もいるわけだから、そういう人たちからすれば、歓迎しないだろうが、ただ、少数議員の野党にとっては、死活問題であり、そこを削減できるという点で、自民党としては、受け入れがたい策ではないということだろう。
 だが、選挙制度ができてから、ずっと問題でありつづけている党利党略による選挙システムの変更ということは、ここでも明確である。そうしたやり方で、国民の利益がより守られる方向にいくことは、考えにくい。
 では、党利党略ではない選挙制度とはどのように構想されるべきなのか。答えは、単純だといえる。それは、「理論的」に筋が通っているあり方にするということだ。おそらく、それ以外にはないだろう。現在の国会議員の選挙は、衆参ともに、小選挙区と比例代表(部分的に中選挙区も含む)の組み合わせである。これは、理論的にいえば、ふたつの欠点がある。第一に、両方が同じような原理で選挙していたら、二院制の意味がない。衆議院だけでよいということになる。もちろん、そういう意見を主張するひともいる。第二に、小選挙区と比例代表という、まったく違う原理のシステムを並立させることの無理である。しかも、小選挙区で落選したひとを、比例で救うなどという奇妙というしかない方法まで取り入れられている。
 理論的にすっきりするためには、ひとつの方法しかないと考える。それは、どちらかを小選挙区で統一し、他方を比例で統一するということである。こうすれば、選出方法がまったく違う二院が成立することになり、第一の問題が解決する。小選挙区と比例を完全に分離することになり、第二の問題も解決するわけである。
 では、比例と小選挙区をどちらに割り振るのか。
 比例代表制は、基本的に政党を選択するということと、全国を代表することが、要点である。小選挙区も実は政党を選択するのであるが、全国ではなく地域を代表することが、比例と異なる。つまり、ふたつのもっとも重要な違いは、全国を代表するのか、地域を代表するのかという点にある。もっとも、政党ではなく、個人を選びたいという要望もけっこうあるため、比例でも、個人を指定することが可能なような調整がなされているが、基本は政党を選ぶことが中心であり、小選挙区も、ひとつの政党は一人の候補者しかたてないのだから、もちろん個人で選ぶひともいるだろうが、制度的には政党の選択なのである。
 すると、より多くの権限をもっている衆議院はどちらの方式をとりいれるべきか。それは、国政選挙なのだから、当然、地域ではなく、全国を代表する比例代表が採用されるのが理論的に正しいということになるだろう。そして、参議院で、地域代表の意志でチェックするというのが、もっとも妥当である。
 理論で国政の仕組みをつくったのは、アメリカぐらいだろう。そのアメリカも、近年は、国政の仕組みを勝手に無視して、自分の思い通りの政策をやろうとしている大統領が現われ、今後アメリカの仕組みそのものが、かなり動いていくだろうが、それは理論ではなく、他国のように利害そのものがぶつかるものになるだろう。
 理論で社会の仕組みを構築するということは、ほんとうに難しい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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