ドキュメント 「地球を救え スタートアップが描く未来」 目標・自由・規制

 日本経済が不調になって久しい。どうしてそうなったのかは、専門家ではないので、私に明確な回答があるわけではないが、誰でも思うのは、世界を牽引する新しい技術を生み、それを製品化できていないことがひとつ、そして、日本の人材活用が様々な点で有効でないことだ。後者の結果が前者なのかも知れない。
 ソニーは、世界の電気製品のいくつかの新しい技術を生み、世界的なリーダー企業のひとつだった。しかし、アップルを創業して発展させたジョブズのドキュメントをみて、驚いたことがある。iphoneの前の段階のipodは、あの技術を開発した企業から、技術を買い取り、アップルが製品化したものだが、その技術を開発した企業は、製品化してくれる企業を探していた時、まずはソニーに声をかけたのだそうだ。当然だろう。ウォークマンを開発して、音楽視聴のスタイルに革命的な変化をもたらしたソニーであるし、その技術は、明確にウォークマンのデジタルバージョンということもできた。しかも、ソニーは膨大な音楽や映画ソフトを所有している。しかし、ソニーはそれを断ったのだそうだ。そして、結局アップルが採用して、ipodとして結実し、単なる機械の革新ではなく、ソフトウェアの形態も変えてしまったのである。ウォークマンもテープをいれて聴くものだったが、ipodは、ネットを通して音楽や映像を入手するという、新しい鑑賞形態を生み出しただけではなく、ウォークマンは90分程度の音楽テープを持ち歩くだけだったが、ipodは数百時間分の音楽をなかにいれることができた。その後、こうした視聴形態が主流になっていく。そして、ipodの発展形がiphoneなのだから、ソニーとしては、逃がした魚は本当に大きかったといえる。 

“ドキュメント 「地球を救え スタートアップが描く未来」 目標・自由・規制” の続きを読む

ドキュメント「権力と闘うあるロシアTV局の軌跡」ロシアの報道の自由の悲惨さ

 日本は、G7では報道の自由ランクで最下位であり、かなり問題であるし、近年更に低下傾向にある。2022年では71位である。韓国嫌いの日本人が多くなっているが、韓国は、43位で日本よりもずっと報道の自由がある。日本人としては、本当に真剣に考えねばならない。そして、ウクライナに侵略戦争をしかけているロシアは、2022年155位となっている。昨年より低下している。
 そして、このドキュメントは、ウクライナ侵攻の6日後に、ロシア政府によって廃止に追い込まれた独立系テレビ局「ドシチ」の誕生から消滅までの記録である。ロシアにもこんなテレビ局があったのかというほど、徹底した「事実報道」によって際立っており、そして、プーチンに直接にらまれたのも、必然だったともいえる。しかし、逆に、こうした報道を求めているロシア人がいたことも、また否定できないのである。
 
 5月中旬にNHKBSで放映されたイギリス制作のドキュメント番組で、「メディアを支配するものが思考を支配する」という言葉から始まる。

“ドキュメント「権力と闘うあるロシアTV局の軌跡」ロシアの報道の自由の悲惨さ” の続きを読む

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

 全盲の白鳥さんと美術館を訪れて鑑賞するという話である。
 作者を始め、何人かが、一緒に、あるいは交代で、白鳥さんに付き添い(アテンドという表現が用いられている)美術品について、白鳥さんに説明し、白鳥さんが質問して、更に答えるというやり取りが書かれている。読み始めると、すぐに、実際に理解が深まっていくのは、説明を受ける白鳥さんというよりは、説明しているほうだということが分かってくる。そして、普段何気なくみている、あるいは見落としていることに気づき、更に違う見方も出てきて、理解が深くなることを実感する、そういう話である。もちろん、白鳥さんは、もちろん受けた解説とやり取りで、自分なりのイメージを形成しているのだろうが、その厳密な姿は、解説者たちにもわからないし、読者にもわからない。そして、近くの美術館だけではなく、遠くまで出かけて、寺の仏像なども同じように鑑賞していく。具体的には、いろいろな作品のやり取りが書かれているので、興味のある人はぜひ実際に読んでほしいが、晴眼者の認識が、全盲の白鳥さんとのやり取りで、深化したり、訂正されるのは、やはり、なるほどと思わせる。

“『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』” の続きを読む

ウクライナ雑感 バイデンは梯子を外すのか

 バイデンが、記者会見で、プーチンによるウクライナ侵攻を早くから指摘していたにもかかわらず、ウクライナのゼレンスキー大統領は聞く耳をもたなかったという趣旨の発言をしたことが報道されている。
Joe Biden says Volodymyr Zelenskyy ‘didn’t want to hear’ US warnings of Russia’s Ukraine invasion
 戦争が4カ月になるなかで、ウクライナを援助する必要を語っているなかでの発言であった。
 ゼレンスキーは、リーダーシップを発揮しているが、侵攻への準備には問題が残されていた。侵攻開始前の数週間、アメリカの忠告に対して、ゼレンスキーは怒りを表わしていた。そして、戦争の掛け声がウクライナの脆弱な経済を乱すことを気にしていた。戦争の100日間ゼレンスキーは、ロシアを打ち負かす信念を保持している。ウクライナは重火器を提供してほしいと訴えている。

“ウクライナ雑感 バイデンは梯子を外すのか” の続きを読む

ウクライナ雑感 ロシア兵は何故あれほど残虐行為ができるのか

 ウクライナ情勢は混沌としてきた。日本の報道の多くが楽観論を振りまいているが、割り引いて受け取るべきだ。もちろん楽観的見方が今後実現していけばよいが、あまり楽観はできない。
 
 ロシアのウクライナでの蛮行を見ると、何故こんなんに酷いことをするのか、あるいはできるのか、ということに、日本人の多くは疑問に思うだろう。ここをロシアの領土にしようと目論んでいると思われる地域でも、遠慮会釈のない砲弾を浴びせて、廃墟にしてしまう。現在激戦が行われていると報道されているセベロドネツクの写真をみると、本当にほとんどすべての建物が防弾を浴びている。ここを領土化して再建することを考えているのであれば、こんなに破壊ができないはずだ、というのは、日本人的な甘さなのだろうか。いろいろと考えていると、いくつかのことが思いつく。

“ウクライナ雑感 ロシア兵は何故あれほど残虐行為ができるのか” の続きを読む

部活の地域移行に関する全教の見解について

 スポーツ庁が部活の地域移行に向けての提言をしたことについては、6日のブログに書いた。http://wakei-education.sakura.ne.jp/otazemiblog/?p=3393
 それに対して、全教(全日本教職員組合)が疑問を呈する談話を発表した。ここに大きな論点が含まれているように思われるので、その点について考えたい。
 談話は「すべての子どもたちのスポーツ要求を権利として保障することと、教職員の長時間過密労働解消の両面から、条件整備と合意づくりを」というもので、6月8日にだされている。

“部活の地域移行に関する全教の見解について” の続きを読む

河瀨直美監督「東京オリンピック」映画を見た けっこうお薦め

 私は、普段からほとんど映画を見ないし、オリンピック反対派なので、河瀨直美監督の東京オリンピックの映画を見るつもりはまったくなかったが、ふたつのきっかけで、見ることにした。
 ひとつは、「ぼのぼの」氏のツイッター、https://twitter.com/masato009/status/1533376068325089280?t=RI4JubVwUNp2lNREtlgOvw&s=19
もうひとつは、一月万冊での紹介だった。ぼのぼの氏は、公式映画であるにもかかわらず、オリンピック批判の姿勢をもった映画で、体制べったりの映画ではない、という評価だった。それに対して、一月万冊の本間龍氏は、オリンピックの構成がない、単なる逸話の羅列で、まったく面白くないという評価だった。近所でやっているし、見る価値はありそうだと思ったわけだ。それにしても、人気がないようで、本間氏が見たときには、観客は本間氏をいれて2名だったそうだ。私が見たときには、5名だった。映画館が気の毒になるような人数だ。

“河瀨直美監督「東京オリンピック」映画を見た けっこうお薦め” の続きを読む

メルケル引退後初のインタビュー 自身を弁護

 朝日デジタルにメルケルが、退任後はじめてインタビューに応じたという記事があったが、あまりに簡略だったので、もう少し詳しい記事を探した。「Angela Merkel opens up on Ukraine, Putin and her legacy」https://www.dw.com/en/angela-merkel-opens-up-on-ukraine-putin-and-her-legacy/a-62052345
 朝日デジタルだと、メルケルは、ロシアのウクライナ侵攻を非難したが、2014年のクリミヤ併合について、もっと厳しい対応がありえたことを認めたこと、ソ連崩壊後も戦争を防ぐための安全保障機構をつくることができなかったが、自分は間違っていなかったから謝る必要はない、ということが簡潔に紹介されているだけだ。
 英文の記事には、「退任後最初のインタビューで、対ロシア政策を弁護し、現在のウクライナの状況に関して、自分が責任を感じることはない」と述べたというリードが付けられている。

“メルケル引退後初のインタビュー 自身を弁護” の続きを読む

読書ノート『プーチンの野望』佐藤優 (潮出版)

 発行日(6月6日)に購入し、その日に読んだという珍しい本になった。関係ないが、私の誕生日でもあった。
 説明するまでもなく、佐藤優氏は、日本でもっとも優れたロシア通の一人であり、かつては職業的なロシア担当の外交官だった。そして、その仕事は、交渉を担当するというよりは、情報を集め、分析する役割だったので、やはり、他の人の書いた文章とは違う側面にまで切り込んでいる。
 構成は、章ごとに
1 仮面のプーチン
2 プーチン独裁者への系譜
3 20年独裁政権抗争とユーラシア主義
4 北方領土問題
5 クリミア併合
6 ウクライナ侵攻
終章 平和への道程
となっている。
 
 この本のなかで、もっとも読ませるのは、やはり、北方領土の部分だ。

“読書ノート『プーチンの野望』佐藤優 (潮出版)” の続きを読む

スポーツ庁が部活の地域移管を提言

 スポーツ庁の有識者会議が、中学の部活をとりあえず土日の分を地域に委託し、将来的には平日もそのようにするという報告をだした。悪いことではないが、不徹底だという感じがする。詳細はまだわからないし、また、実施の段階で変更があるだろうが、不徹底さを指摘しておきたい。
 
 記事としては、以下があるが、スポーツ庁のホームページには、詳細な議事録も掲載されている。
「中学校の部活動 休日はスポーツクラブで 3年間で“地域移行”提言を提出 少子化・教員負担で方針転換」https://news.yahoo.co.jp/articles/d919aeda0e3247ad84c2cdf241a096b51082801f
 報道によって、提言を整理しておくと
・3年かけて休日の部活を地域に移行する。
・その後平日も移行していく。
 その理由は
・少子化の影響で、中学校だけで、運動部の活動を維持していくのは困難
・教員の負担増と教員不足の深刻化

“スポーツ庁が部活の地域移管を提言” の続きを読む