安倍元首相の抑圧力

 文春オンラインに「「絶対に捕まらないようにします」元電通“五輪招致のキーマン”への安倍晋三からの直電」という記事が載っていて、実に興味深い。
 安倍晋三氏が総理に返り咲いて、オリンピック招致のキーマンになってくれ、と高橋治之氏に、直接安倍氏が頼み、その際、「五輪招致に関係した人は、みんな捕まっているが、私は捕まりたくない」と断ったが、安倍氏が、絶対に捕まらないようにすると保障をしたということが、まず書かれている。文章の少しあと、捕まるのが嫌だから、キーマンになるのは嫌だなどということは、ブラフだというようなことが書かれているが、それはさておき、この事実は、高橋氏が知人に話したことなのだそうだ。
 高橋氏は、オリンピック招致を担当することが、危険なことを含んでいることを、十分に承知していたということがわかる。安倍氏も認識していたということだろう。そして、高橋氏がそれを引き受けたのは、招致活動が、金の成る木だということで、望むところだと考えていたことがわかり、安倍氏に関しては、不正・違法なことをやっても、自分は押さえ込むことができるという「自信」をもっていたことが、ここから分かる。

 
 確かに、安倍晋三という人は、自身も含めて、自分の周辺で起きる不正行為を、決して司直の手に渡さないということを、極めて重視して、実行したのだろう。そのためには、ふたつのことが必要だ。
・司法・警察が自分に反抗しないように、あらゆる処置をする。中心は人事だ。自分に忠実な人を優遇し、批判的な人を排除する。端的な事例が、黒川氏を検事総長にするべく、無理な違法決定をしたことだ。警察が統一教会の捜査に乗り出そうとしたときも、人事を使って、それができないようにしたと、佐藤章氏は何度も語っている。
・実際に、自分のために不正をあえて実行してくれた人物は、守るだけではなく、優遇する。森友問題における佐川氏を思い出そう。
 
 こうした手法で、多くの不正が闇に葬られてきた。安倍元首相の「実績」は、外交や経済でなんら成果をあげなかったことだけではなく、多くの不正の摘発を妨害・抑圧してきたことにもある。そのことが、日本社会全体のモラル・ハザードを引き起こしたし、経済社会の停滞をもたらしたといえる。いかに、安倍元首相が、不正糾弾を抑圧してきたかは、皮肉にも、安倍氏の殺害によって、一挙に明らかになってきた。
 安倍氏の殺害以後、統一教会の悪事が暴露され、追求されるようになったのは、決して、山上が、統一教会に家庭を破壊されたからだと述べたためだけではない。おかしな言い方になるが、山上がまったく同じ理由で、統一教会の幹部の誰かを殺害したとしても、現在のような統一教会批判の渦は起きなかったはずである。多少の追求はなされたにしても、小さな殺人事件に終わっただろう。殺害された安倍氏本人が、統一教会を支え、その犯罪的行為の摘発を押さえ込んできた人物だったからこそ、その重しがとれて、現在のような追求になったわけである。
 
 統一教会の追求とともに、安倍元首相の重しがとれたために進行しだしたのが、オリンピック疑獄の検察による追求である。おそらく、高橋氏は、安倍氏が撃たれたとき、身の危険を感じていたかも知れない。そして、それは現実化してしまった。安倍元首相が銃撃された直後に、竹中平蔵氏がパソナを辞めたのも異様な感じを与えた。これも、今後自分に司直の手が伸びると、直感したからだろう。現在のオリンピック疑獄追求は、高橋ルートのスポンサー関連が中心だが、そのうち、人材派遣での中抜き疑惑に進んでいく必要がある。当然、検察も視野にいれているだろう。そのときの焦点は竹中氏である。
 更に、そもそも、困難だったオリンピック招致を実現したといわれるアフリカ勢の買収のために奔走したひとたちのルートもある。「一月万冊」によれば、その鍵は森、菅両元首相である。
 これらは、安倍元首相が存命なら、おそらく表にでることはなかったに違いない。そういうことを考えれば、確かに安倍晋三という政治家は、力をもっていたのだと思う。しかし、その力は、不正の摘発を押さえ込むこと、そして、自分たちの身内のために資源をばらまくことに使われた。
 
 司法や警察は、本来、権力の妨害にも屈せずに、不正を暴くべきものだ。せめて、現在の捜査を、途中で妨害されようと、貫徹してほしいものだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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