震災の思い出もうひとつ、我が家のこと

 昨日、東日本大震災に関連した文章を書いたが、ひとつ忘れていたことがあった。震災では、地震そのものによる家屋の損壊などは非常に少なかったようだが、私は自分の家が倒れなくて本当によかったと思った。もちろん、きちんとした耐震構造の家として建っているので、そういう心配はそもそもないのだが、建築過程で非常に大きな問題に遭遇していたのだ。それを無事解決していたからこそ、震災で問題がなかったわけで、そのとき気がつかずにそのままだったから、震災で損壊していた可能性があった。
 トラブルになってもまずいので建築会社の名は書かないが、ある建築会社に、一戸建ての建築を依頼した。そして、私の親類に建設会社の人がいたので、その人に建設中のチェックを頼んでいたのである。実は私の父が家をたてるときにも、そうしてもらっていた。その関係で頼みやすかった。その人は、すでに定年で時間があったので、重要なときには、ほとんど確実にチェックのために、わざわざ来てくれていた。私は、住んでいるところから距離があったということもあり、また、みてもわからないから、たまに見に行く程度だった。妻は熱心に見に行っていたので、親類も丁寧にみてくれていたのだろう。
 ある日、非常に真剣な眼差しで、「重大な問題がある、訴訟も覚悟してほしい」と言われたのである。彼は、工事中に異常に気付いたので、作業が終わり、大工さんたちが帰るのもまって、丁寧に見て回り、そして、重大な発見をしたので、それを写真に撮った。それを私たちに見せてくれたのである。
 それは、基礎工事のごまかしだった。正確に長方形でコンクリートの枠を設置しなければならないのだが、その一辺が少し短かったのである。その枠の上に、木材をのせるのだが、当然、木材とコンクリートの枠が合わない部分がでるわけである。つまり、木材を支えるコンクリートが存在しない部分となる。それを、大工たちが、コンクリートのわきにセメントで補充して、木材を支えるようにした。そして、何気ない顔をしつつ、その後の工事を続け、棟上げをして、屋根までつけていった。親類のひとと私たち夫婦が、建築会社の事務所に乗り込んで、この写真を突きつけて、その後のかなり長い交渉に入ったわけだ。私は勤め先の施設課に長くいた職員に事情を話したところ、「基礎がなければ、家はちゃんと建ちませんよ、それは100%だめです」と言われ、私も覚悟を決めた。
 写真があるから、建築会社は認めざるをえず、我が家に何度もやってきて、改良案を提示していった。その都度、私たちは、「録音をとる」ことと、「そういうように改良した家にあなたたちは、住みますか?」と質問をした。録音をとられているから、嘘はつけない。それで、正直に、「住めない」と認める。そして違う案をもってくる。そういう交渉を何度か繰り替えしていたが、私はらちがあかないと考えて、親会社の社長に直々手紙を書くことにしたのである。最後の段階では、全部こわして、まったく新しく立て直すという案をもってきており、新しい大工さんたちも紹介していた。それでも、私たちは、信頼をもてない気持になっていたわけだ。
 何が信頼できないかというと、彼らは、欠けてセメントで補強したために、従来のボルトでとめる穴を、本来の位置とはずれたところにあけて、なんとか木材を上にのせていたのである。木材だと、そういうごまかしができるわけだ。それで、その建築会社は、別の子会社として、鉄骨住宅の会社をもっていたので、そちらにかえてほしいと社長に要請したのだった。鉄骨であれば、基礎工事のごまかしをすることは、難しい。正確に基礎を設定しなければ、予め留める部分が決まっている鉄骨を上にのせることはできないのである。土地の場所が、前の住居より勤務地にずっと近いということもあり、その土地に建てたいという気持を強調したのだが、予想通りオーケーとなり、まったく違う設計の家を、前のものを壊して建てることになったわけで、今もその家に住んでいる。
 そうして十数年後に震災が起きたのだが、そのとき、心底、あのとききちんとチェックをしてもらっていてよかったと思った。あの時点まで家が傾いていなかったとしても、あの揺れに耐えられたかどうか。
 知人が家を建てるというときには、この話をして、ぜひ建築中のチェックを専門家に依頼しておいたほうがいいよ、と忠告している。良心的な大工でもミスはあるものだが、良心的でない人なら、正規の材料をつかわないかも知れない。さまざまな理由で、欠陥住宅が建てられているといえる。家は多くが一生ものだから、本当に慎重さが必要である。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です