ウクライナの反撃

 最近、明らかにウクライナの状況が変わりつつある。ロシア軍が崩壊しつつあり、ウクライナ軍が被占領地を少しずつ奪還している。ウクライナ側からの情報だけではなく、あいまいながらもロシア側の情報によっても、それは裏付けられる。例えば、ハリキウ州の軍隊を他の地域にむけて再編成するために、撤退させたというようなロシア側の報告である。占領地を撤退すれば、当然相手側の手に移る。つまり、敗北したことを自ら認めることだ。撤退をロシア側が明確にしたのは、キーウの占領を諦めて撤退して以来である。

 
 ウクライナ側は、当初6月から反転攻勢をかけると表明していたわけだが、それはなかなか進まず、やはり、力尽きるのかと思わせる時期もあったが、反転攻勢は、欧米からの強力な武器が届き、実戦につかえるようになった8月から顕著になってきた。ハイマース等で、まず補給機構を破壊することから始めた。物資を運ぶために不可欠な交通を遮断するために、橋を破壊する。そして、物資が保管されている兵站、そして、武器庫を爆破する。ウクライナ軍はこれをしばらく続けた。そして、その間、クリミア半島の軍事要衝を攻撃して、滞在しているロシア人たちに脅威を与えた。彼らの多くは急いでロシア、多くはサンクト・ペテルブルクやモスクワに帰国した。当然、クリミヤで起きたことを、知人たちに話すだろう。厳格な言論統制をしいて、実情が伏せられていたが、今では、噂によって、ロシア軍が決して勝利していないこと、悲惨な現状があることを、ロシア人は知るようになる。最近話題になった、サンクトペテルブルグ市議会でプーチン訴追決議がだされたことなどは、そうした影響と考えられる。
 
 補給を絶たれたロシア軍は、当然闘う武器が十分でなくなり、また、食料なども不足しているのではないだろうか。真実はわからないが、脱走兵が増えているという情報もある。当然だろう。ヘルソン州で、橋を破壊されたために、物資が補給されないだけではなく、ドニプロ川西岸地域のロシア兵は、逃げることもできず、兵糧攻めになっているようなものだ。大量の集団降伏になる可能性もある。
 東部でもウクライナ軍の勢いが増して、失地回復をしつつあるようだ。
 
 しかし、こうしたウクライナ軍の攻勢が続いても、最終的に、ロシアを追い出して、ウクライナが完全に勝利するためには、絶対に必要な条件がある。それは、ロシアにおける政変である。プーチン、そして同じ姿勢をもつ人が政治の中心にいる限り、一時的にロシア軍が撤退したとしても、いつ反撃に出てくるかわからない。しかし、現在の状況をみると、プーチンが倒れても、リベラルな反プーチン勢力が政権をとるとは思えない。より強硬な勢力がプーチンの座を奪う可能性が高い。強硬派は、総動員令を発して、全面戦争をやるべきだ、そして、徹底的にウクライナを叩くべきだ、と主張しているようだ。
 当然プーチンも、可能ならそうしたいはずだ。しかし、できない事情がある。モスクワが平穏なのは、戦争の影響がほとんどないからだ。戦争に駆り出されている周辺地域では、すでに政府への不満が高まっている。国民総動員をしたら、そうした不満がモスクワに波及することは目に見えているから、プーチンはできないわけだ。そして、モスクワの若者を徴兵したとしても、武器がほとんど使い尽くしてしまっている状態では、現在の劣勢をはねのけて、ウクライナ全土を攻略できるとは考えられない。そういう状況になったら、アメリカは、もっと本格的な武器供与をするだろう。ハイマースよりも射程の長いミサイルや戦闘機だ。そうしたら、兵器不足に陥ったロシアが、いかに総動員をかけても、おそらく徹底的に壊滅させられるだろう。
 
 強硬派政府がモスクワにできたとしても、プーチン以上のことはできないし、また、やろうとしたら、今度こそ、徹底的に民衆は立ち上がるのではないだろうか。これは期待を込めてのことだが。
 ウクライナの反転攻勢がより強力になり、ロシア軍が雪崩のように崩れて退却し、プーチン政権が倒れて、とりあえず戦後処理内閣ができて、ロシア軍の完全撤退、講和会議となることは、来年あたり、大いにありうるし、また、そうなることを期待しよう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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