読書ノート「元首相暗殺の黒幕」ベリー西村

  ベストセラーだという評判だったし、題名から考えても、読まざるをえまいと思って読んでみた。ベリー西村という人は、まったく知らなかった。元パイロットだったというが、現在はスピリチュアル系の人のようで、内容もそんな感じである。端的にいって、トンデモ本の一種に思われた。最初に、安倍元首相暗殺に関する疑問がだされていて、それはそれで筋の通ったものだった。疑問は10あげられている。
・SPが何故安倍氏から3メートルも離れていたところにいたのか。あまりに杜撰な警備。
・事件のニュースが2日前に作成されていた。
・山上が誰かの指示を確認している様子が頻繁に見られた。指示者がいることを示している。
・統一教会の分派のサンクチュアリ教会の教祖が6月から来日している。

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読書ノート『北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実』有田芳生(集英社)

 まさか安倍元首相の暗殺を予期したわけではないだろうが、時期的に見てもタイムリーな出版だった。書籍が2022年6月22日で、私が読んだ電子書籍の発行が6月30日である。この約1週間後に安倍氏は殺害された。安倍氏といえば、「外交の安倍」と称され、そのトップの課題が常に「北朝鮮による拉致問題の解決」だった。しかし、実は安倍首相は、ほとんど何もせず、ただお題目のように、拉致問題の解決を唱えていたに過ぎないことが、具体的な事例で明らかにされている。
 「極秘文書」とは、小泉訪朝によって実現した拉致被害者5人と、その後の8人の家族の帰国後、彼らに、北朝鮮での生活、拉致の模様などを聞きとった文書である。もちろん、まだ残っていると考えられる拉致被害者の救出のために、役立てようと考えて行ったインタビューだった。しかし、その記録文書は、その後極秘扱いにされ、正式にはいまだに公表されておらず、国会議員だったために閲覧可能だった有田氏が、その内容を一部紹介したのが、本書である。そうした内容については、これまでも帰国した拉致被害者から語られてきたこともあり、私にとっては特別に目新しいとは感じられなかったが、こうした内容が極秘にされたこと自体が、やはり注目すべきことだろう。北朝鮮での生活や、拉致がどのように行われたのかについては、興味のある人はぜひ本書を読んでほしいと思う “読書ノート『北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実』有田芳生(集英社)” の続きを読む

読書ノート『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるか』遠藤誉

 遠藤氏は、若い頃中国で苦難の生活を経験し、日本では筑波大学教授を勤めるとともに、中国政治の専門家でもある。そして、ウクライナ侵攻について、一気呵成に書かれたのが本書で、出版は今年の4月である。ウクライナ戦争について、漠然と感じていたいくつかのことが、ここでは、具体的な事実や資料を通して、説得力をもって書かれており、漠然とした意識が、かなり明確になった点がいくもある。
 中国がロシアを軍事的に支援しないのは、いつくも理由があるだろうが、そのひとつとして著書は、中国とウクライナの密接な関係をあげている。中国の軍事技術の多くはウクライナからえているというわけだ。ウクライナはソ連時代には、むしろ軍需産業の中心だったのであり、それは、現在でも小さくなったとはいえ、継続しているウクライナ産業の中核のひとつである。原発もウクライナには多数あり、現時点で、ヨーロッパに電力を輸出可能だとしているほどだ。一帯一路政策を習近平が諦めない限り、ウクライナを敗北させるべく、ロシアに軍事的肩入れをすることはできないわけだ。

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『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

 全盲の白鳥さんと美術館を訪れて鑑賞するという話である。
 作者を始め、何人かが、一緒に、あるいは交代で、白鳥さんに付き添い(アテンドという表現が用いられている)美術品について、白鳥さんに説明し、白鳥さんが質問して、更に答えるというやり取りが書かれている。読み始めると、すぐに、実際に理解が深まっていくのは、説明を受ける白鳥さんというよりは、説明しているほうだということが分かってくる。そして、普段何気なくみている、あるいは見落としていることに気づき、更に違う見方も出てきて、理解が深くなることを実感する、そういう話である。もちろん、白鳥さんは、もちろん受けた解説とやり取りで、自分なりのイメージを形成しているのだろうが、その厳密な姿は、解説者たちにもわからないし、読者にもわからない。そして、近くの美術館だけではなく、遠くまで出かけて、寺の仏像なども同じように鑑賞していく。具体的には、いろいろな作品のやり取りが書かれているので、興味のある人はぜひ実際に読んでほしいが、晴眼者の認識が、全盲の白鳥さんとのやり取りで、深化したり、訂正されるのは、やはり、なるほどと思わせる。

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読書ノート『プーチンの野望』佐藤優 (潮出版)

 発行日(6月6日)に購入し、その日に読んだという珍しい本になった。関係ないが、私の誕生日でもあった。
 説明するまでもなく、佐藤優氏は、日本でもっとも優れたロシア通の一人であり、かつては職業的なロシア担当の外交官だった。そして、その仕事は、交渉を担当するというよりは、情報を集め、分析する役割だったので、やはり、他の人の書いた文章とは違う側面にまで切り込んでいる。
 構成は、章ごとに
1 仮面のプーチン
2 プーチン独裁者への系譜
3 20年独裁政権抗争とユーラシア主義
4 北方領土問題
5 クリミア併合
6 ウクライナ侵攻
終章 平和への道程
となっている。
 
 この本のなかで、もっとも読ませるのは、やはり、北方領土の部分だ。

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読書ノート『80歳の壁』和田秀樹

 羽鳥のモーニングショーに、和田秀樹医師が出演して、今ベストセラーになっている著書『80歳の壁』をもとにした話をしていた。そこで、大方の内容はわかったが、もうじき後期高齢者になることもあり、購入して読んでみた。内容が非常にわかりやすく、かつ談話のようなものなので、一気に読めた。内容は、共感する云々以前に、私自身がだいたい実践していることだったので、逆に驚いたほどだ。簡単にいえば、高齢者(この本では幸齢者と書いているが、普通に高齢者としておく)は、好きなことをして、食べたいものを食べ、楽観的に生きなさい、そして、あまり医療に頼るのではなく、病気になったとしても、闘病するのではなく、共病、つまり、病気と共に生きるというのがよい、というようなことだ。

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読書ノート「発達障害は学校からうまれる」井艸 恵美 東洋経済オンライン

 読書ノートというのは多少おかしいかも知れないが、東洋経済オンラインに「発達障害は学校から生まれる」という連載のレポート記事がある。まだ継続中だが、学校現場のこまっている面、また筆者によれば、弊害を生んでいる側面について、深刻な報告がなされている。
 現在第6回まで進んでいるが、最初のほうは、もっぱら発達障害児に対する投薬治療の弊害を、患者たちの取材に基づいて警告を発している。詳細は、記事を読んでもらうことにして、自分なりに考察してみたい。
 ここで書かれていることを整理すると
・子どもに対して、安易に向精神薬を使用するのは問題があり、さまざまな弊害が生じている。
・近年は、こうした子どもの発達障害に対する薬物使用が広まっており、教師の側から、親に勧める事例も多くなっている。
・こうした状況に、警告を発する医師や教師もいる。
・子どもの発達障害は増加しており、その原因は環境によるところが多い。
・発達障害に関する文科省の大がかりな調査があり、通級学級から、特別支援学級、特別支援学校への、事実上の誘導がなされている。
 以上のようなことだと解釈できる。

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読書ノート『プーチン 内政的考察』木村汎

 まとまったプーチン情報を得たいと思い、県立図書館にあったこの著書を借りてきた。A5版600ページもある大著で、まだ全部は読んでいないが、前半を読んで考えたことを書いておきたい。
 プーチン4部作の2作目ということで、他の著作も読んでみる必要があると思うが、内政を扱ったこの著作を読むと、筆者がウクライナ侵攻をこの時点(2016年出版)で予想していたのではないかと思われるほどであり、かつ、現在の進行状況が、ここで書かれているプーチン像にぴったり重なってくる。

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読書ノート『知の鎖国』アイヴァン・ホール2

 本書のコメントからは離れてしまうが、どこまで一般化できるかは別として、私自身の体験を書いておきたい。元同僚たちの批判になってしまうが、現在ほぼ全員が退職しており、かなり昔のことなので、あえて書くことにした。ここで書いたような側面はあるが、皆まじめで、誠実な人たちであったことは、断っておきたい。
 日本の知識人たちが、少なからず、外国人に対して、あるいは外国で教育を受けたものに対して、排外的な姿勢をとることの具体例である。
 
 第一は、私がまだ大学院の担当者であったときのことだ。大学院の入試判定前の段階で、受験可能かどうかの問い合わせについて議論したものだった。
 その受験予定者は、イギリスの大学を卒業していた。しかし、一般的なイギリスの大学は3年間で終えることができる。ヨーロッパの大学は4年制であるが、修士号を付与することが一般的である。尤も以前は6年が原則だったので修士号の付与は当然だったのだが、カリキュラム改革などを経て4年で終了できるようにして、修士号付与はそのままだったのである。だから、学士号を付与する教育機関は、3年でオーケーということになっているのだ。
 そのことで、日本人がイギリスの大学を卒業したが、日本の大学院は4年間の大学教育を条件としているので、問い合わせがあったわけだ。

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読書ノート『知の鎖国』アイヴァン・ホール(毎日新聞)1

 まだ全部ではないが、アイヴァン・ホール『知の鎖国』なる本を読んでみた。1998年に書かれた本なので、かなり古いが、日本が停滞に陥り、数年経過した時点での日本批判であり、この批判が適切であれば、日本が停滞から抜け出すのは難しいと思わせたに違いない。事実、日本は停滞から抜け出していないので、指摘は多くあたっていたということになるのだろう。
 一言でいえば、日本の知的専門職が、外国人に対して開かれておらず、外国人を差別しているという事例がこれでもかと出てくる本である。残念ながら、翻訳がよいとはいえないので、意味が鮮明でない部分がある。また、著者の誤解もあるような気がするが、しかし、日本人としては、このような批判に対しては、率直に耳を傾けるべきであろう。
 法律家(弁護士)、報道陣、大学教師、科学者と留学生、批評家の分野で、いかに日本社会の知的閉鎖的であるかを具体的に示している。まずは、大学教師の部分について考えてみたい。

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