五十嵐顕氏は、教育費の講義を担当していたため、教育費とは何かを突き詰めて考えていた。そして、教育費が貨幣の形をとることに、つよい拘りをもって、そこから出発していたように思われる。
五十嵐論による教育費の分類は、
・個別分散的
・社会的に組織された教育費
・国家によって組織された教育費
という三つの組織形態によるものである。形としてはすっきりしているが、私は、この分類は、教育費の「教育学的分析」にはあまり有効ではないように、ずっと思ってきた。確かに、そうした分類は、外見的に分かりやすいし、統計的にも処理しやすいに違いない。しかし、形式と量の相違を示すだけで、それが教育にとって、どのような意味をもつかは、明確に示すことができないのではないかと思うのである。