藤浪再び 気持ちではなく技術・訓練

 藤浪晋太郎の話題は、もういいと思っていたのだが、藤浪の談話にびっくりしたのと、私がいいたいことを、すごく明確に示してくれる映像があったので、再度書くことにした。
 びっくりした藤浪の談話というのは、最初にストライクをとれるようになれば大丈夫だ、ということと、4分割でコントロールするのはとても無理で、2分割でできるように頑張りたいということだ。最初にストライクをとろうと思っていても、とれないから、プロ生活の大半を苦労してきているのだろうと思うのだが、いまだに、なにかのきっかけで、最初にストライクをとれるかのように思っているらしいこと。そして、4分割のコントロールが無理だというのは、正直なのかも知れないが、私はプロの野球では、投手として通用しませんといっているようなものではないか。まともなプロ野球の投手であれば、9分割でのコントロールを意図し、せめて6分割で確実にコントロールできる状態だろう。2分割でコントロールしたいということは、それもできていないということだから、アマチュアレベルだということになる。
 
 この間、藤浪話題での元プロ野球選手のyoutubeなどをたくさんみたが、野球の科学というようなことが、いかに遅れているかを実感した。そして、いかに精神論的感覚をもっているひとが、プロ野球で、それなりの実績を残したひとでも多いことを感じた。藤浪の問題は、絶対に精神的な問題ではない。技術的なことだ。しかし、どういう技術で、どういうトレーニングをすればよいのか、まだまだ未確立なのだとわかった。
 前にも書いたが、投手の投球は、勢い(力・速度・曲がり方の鋭さ)とコントロールというふたつの要素がある。そして、勢いのほうは、小さいころからずっと練習しているなかで、身につけやすいものだ。基本的には腕を振るスピードが大きければ、速い球になるだろう。もちろん、投げ方によっても差がつくが、基本は腕振りのスピードである。だから、速く振ろうと努力して投げれば、少しずつ速い球を投げられるようになる。そして、その感覚は、小さいころからやってきたなかで、つかんでいるといえる。
 しかし、特に、若い速球投手でコントロールが優れているひとが少ないのは、コントロールをつけるために必要なことは、なかなかわからないし、また、わかったとしても、長い時間がかかるような気がする。正確なコントロールを身につけるということは、低めの外角すれすれのストライクを投げるときの、すべての身体の動きが、投球動作の流れのなかで一定の形を常に保持できることによって実現するはずである。そういうコントロールは、キャッチャーに同じところにミットを構えてもらい、そこにたとえば20球続けて正確に投げられるまで、練習する、というようなことで身につけてきた。そういうやり方をすることが多い。そうして、そういう身体の感覚を覚えていくわけである。そして、内角高め、内角から外に逃げるカーブ、等々、自分で投げられる種類の変化球ごとに、身体に覚えさせる。コントロールというのが難しいのは、それぞれの異なった種類のボールを違ったところに投げわけるのは、当然微妙に体型が違うのだが、あまりに違えば、どういう球がくるか、打者にわかってしまうから、できるだけ、投げ方を近づけなければならない。極端にいえば、違う球種の違うコースを投げわける一定の身体形態の種類を、できるだけ同じ形にする必要がある。だから、多種の球種をほとんど見分けのつかない同じフォームで投げることのできる投手は、滅多にいないことになる。それだけ難しいことだが、しかし、科学的なトレーニング方法が確立すれば、コントロールがよいことは、投手にとって当たり前のことになるはずである。
 
 前には、そうした体型維持のためのトレーニングとして、クラシックバレエがあると書いたが、もっと分かりやすい映像をみつけた。
 井原高校の新体操演技の映像だ。これをみれば誰にでもわかることだが、激しい動きをしているが、絶対に形が崩れてはいけない。そして、何度も練習して、かならず決められた動きを正確にできなければならない。それは、その動作を繰り返すことだけでは、決して実現できないはずであり、それぞれの動作をするために必要な筋肉を、効果的に鍛えるトレーニング方法を採用しているはずである。そして、かなりダイナミックな動きの連続だから、瞬発力も必要だ。一定の体制を保つための保持力、飛んだり回転したりする瞬発力、そして、動作を次々に変化させて、一定のスピードで実現できる力、そうしたことがすべて揃わなければ、この演技はできないが、投球も基本的には同じである。投球はわずか1秒程度で終了するが、それを100回同じように繰り返すことができて、一流の先発ローテンション投手ということになる。
 
 日本の野球も、ぜひ早く、こうした科学的トレーニングの方法を確立してほしいものだ。藤浪に期待するのは酷だろうが。
https://youtu.be/mqm1lDPIn6g

五十嵐顕考察17 教育委員会2

 日本への教育委員会制度の導入は、明らかにアメリカ占領政策によってであった。おそらく、日本人の間では、公選制の教育委員会という発想は起きなかっただろう。
 もう一度、アメリカの教育委員会制度の特質を確認しておこう。
1選挙によって選ばれた市民の代表として、教育行政の決定を行う。素人であることが前提である。
2決定と執行の両方の権限をもっている。
3独自の収入をもち、予算への権限をもっている。
4行政専門官として教育長がおり、事務局が事務を行う。
 これが日本に導入されたとき、十分に採用されたのは1だけだったといえる。確かに、当初教育委員を選ぶための選挙が行われていた。

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CMで考えること

 テレビをみるときには、NHK以外は当然CMがはいる。時間帯によって、はいるCMの性格が異なるのだが、特に昼間の若者向けのCMは、何を宣伝しているのかわからないものが多い。私の年齢のせいとも思えない。むしろ、今はCMの手法が変ってきているのだろう。とにかく会社名を連呼するだけのCMがある。何を作っている企業なのかもわからない。また、製品名をいうが、何の製品なのかもわからない。ずいぶん前の話だが、「なんである、アイデアル」ということをいうだけの宣伝があった。ある程度の年齢以上のひとなら、だれでも記憶しているだろう。若いひとには、まったく通じないだろうが、この宣伝はすごく話題になり、アイデアルという商品がもの爆発的に売れたといわれている。アイデアルというのは、傘の商品名だ。傘を買おうと思って、何にしますかと聞かれて、ついついアイデアルと答えてしまい、売れ行きが伸びたというのだ。「愛である」とも聞こえて印象的なのだ。テレビCMで売り上げが伸びた、ということは、以前はよくあったが、今ではどうなのだろうか。むしろ、CMの形態が変っているのか。

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五十嵐顕考察16 教育委員会1

 最近は、五十嵐顕著作集を作成するための基礎作業をずっとやっている。かなり消耗な作業だが、じっくり読むことになって、勉強にはなる。出版社に渡す原稿は、現在ではほとんどデジタルデータだと思うが、古い人の論文や著作なので、だれかがデジタル化しなければならない。それをいまのところ私が一人で引き受けているかっこうだ。OCRの品質という意味では、とにかく日本語は英語などのヨーロッパ語に比較して、とんでもなく認識率が低い。なにしろ、漢字とアルファベットだから、比較することも無理だ。悪戦苦闘していることを、なんとなく伝えたかったわけである。
 
 さて、著作としてまとめられたものは、ほぼ終わっているのだが、その後雑誌論文にかかっている。『ソビエト教育科学』に書いたものをデジタル化し、今は、五十嵐氏が、まだ東大の教師になる前の国立教育研修所(→研究所)の所員として書いたものを作業している。これは、私も初めて読んだので、非常に新鮮である。五十嵐氏が、戦地から1946年に帰って来て、研修所の宗像誠也が助手を探しているというので、でかけたところ、すぐに採用されて、アメリカの教育委員会制度を調べるように依頼されたのが、この道にはいるきっかけとなった。そして、かなり精力的にアメリカの文献を読んで、いくつかの論文を書いた。それが評価されて東大に呼ばれたのだろう。
 
 前回は、勤評に関する問題を扱ったが、勤評とともに、日本の戦後教育史のなかで、大きな問題だったのは、教育委員会制度である。

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指揮者のこと

 先週の日曜日にファミリーコンサートの本番があり、今週から9月の演奏会のための練習にはいった。
 練習初日だが、本番を振る指揮者ではなく、代振りの人がきた。おそらく、我がオーケストラでは初めて迎える人だと思う。どういう経歴かなども、まったく知らされないから、年齢などもわからない。本番の指揮者は、演奏会当日のプログラムに詳細に書かれるからわかるのだが、そのときになってのことだ。だから、オーケストラと指揮者は、練習そのものしか接しない。もちろん、話しかければ応じてくれるし、そうしている人もたくさんいるが、私は、そうしたことをしたことがない。とにかく、練習そのものが大事だ。
 この文章を書こうと思ったのは、昨日初めて練習をつけてくれた指揮者が、とてもよかったからだ。オーケストラで実際に演奏したことのない人には、指揮者という存在について、それほど詳しくはわからないだろう。多くの人にとって、一度やってみたいこととして、必ずあがるのが「プロ野球の監督」と「オーケストラの指揮者」である。そういう憧れの職業であるが、大変な能力を必要とする仕事なのである。

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ゼレンスキーはインドを説得できるか

 ゼレンスキーが今日来日して、明日のG7の会議に出席するというニュースは、本当に驚いた。最近は、ヨーロッパのあちこちにでかけているので、現在は支援の継続を訴えることに注力しているのだろうが、まさかわざわざ日本にまでやってくるとは思っていなかった。やはり、そうとうな危機感をもっているに違いない。
 ゼレンスキーは、これまでにもG7の首脳とはほとんどあっているのだから、そのメンバーにあうことが主な目的ではなく、私はインドの説得にあると思っている。G7といっても、メンバーではない国で招待されてやってくる国はけっこうある。そのなかにインドが入っているわけだ。周知のように、インドはロシアと現在でも密接な関係をもっていて、石油を輸入している、というより、前よりずっとたくさんの石油を買っているわけだ。本当かどうかはわからないが、インドは、その安く輸入した石油をマージンをつけて、他国に転売しているという。そして、そのなかにはEUの国も入っているというのだ。だから、EUは、先日インドからの転売を輸入しないように措置することを確認したようだ。

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ゆとり教育2

 前回は、ゆとり教育は失敗したが、しかし、必要な改革であったと書いた。
 何故必要であったのか。それは、なんらかの措置をとらなければ、日本の子どもたちは、あまり勉強しなくなるだけだと予想されたからである。日本の子どもは、多少の例外はあっても、平均的には、勉強は試験のため、受験のためにする、それがない時期には、少なくとも学校の勉強などはしない、という傾向である。子どもは学校が好きか、という調査には、圧倒的に「好き」という回答がえられるが、その理由は、「友達」であって、けっして「勉強」ではない。学校は勉強する場であることは、誰でも自覚しているだろうが、学校の勉強を楽しいと感じている子どもは、ごく少数しかいないのである。しかし、それでも、日本の子どもたちは、よく勉強してきた。そうしないと進学できないからである。

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深刻な労働力不足

 コンビニに限らず、アルバイトで成り立っている業種は少なくないし、また、アルバイトとはいえなくても、非正規労働でなりたっているところもたくさんある。そして、そうしたところの多くが、今深刻な労働力不足なのだそうだ。しかし、以前はまったくそうでなかった業種でも、人手不足が深刻になりつつあるのが実情である。典型的には学校の教師だ。少し前までは、学校現場が教師不足で深刻な状況になったことなどなかった。いつでも、志願者のほうが多く、採用する側は、好きなように選抜ができた。そして、正規採用をせずに、1、2年臨時採用として、じっくり気にいるかどうかを見定めてから正式採用するようなやり方も、広く行われていた。今でもそうした県があるかどうかはわからないが、全国的には、教師は完全に不足状態で、校長や教頭が担任をせざるをえないような学校もあるらしい。そして、東京都は、事実上定年がなくなり、いつまでも働きたいだけ働けるともいわれている。
 かの官僚の世界でも、不足になっているわけではないが、志願者が大幅に減っているという。

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ジャニーズ問題の一側面

 BBCが昔のジャニー・喜多川氏による性加害問題を報じたことで、日本でも、ついにという感じで、大きな問題になっているようだ。私自身は、この分野(音楽・ドラマ)にまったく興味がなく、学校の音楽の時間に習うらしいスマップの歌も、年代が違うこともあり、まったく知らないのだが、私自身は、多少ななめからこの問題を考えている。それは、端的にいって、ネット対テレビという勢力争い、あるいはネットによる告発対テレビによる既存勢力の防衛戦といったらいいだろうか。(性被害問題については、被害者救済の措置がとられるべきことは当然なので、ここでは論点とはしない。)

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楽観できないウクライナ情勢

 ウクライナ側の反転攻勢の話題が盛んになっており、既に始まっているとか、バフムトで逆転しつつあるような報道がなされているが、気になることもある。毎日の軍事・戦況状況を報告するyoutubeのサイトで、ウクライナの弾薬庫が大々的に攻撃されて、爆発したとされていた。これは、おそらく初めてのことではないだろうか。ロシア側の攻撃能力が改善されているという面もあるだろうし、そもそも、これまでなら、ウクライナ側が弾薬を一カ所に多数保管しておくことはなかったように思うのである。ウクライナはロシア側の弾薬貯蔵施設を何度も攻撃しているのに対して、ウクライナは、弾薬等を小分けにして、分散保管しているから、たとえ攻撃されても、被害が少ないといわれていたはずである。それが、かなり大規模な集積所に保管してあり、そこが攻撃されたというのは、今後の反転攻勢にかなりマイナスである。

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