プーチンは勝利を信じているというが

 ウクライナのロシアに対するエネルギー関連施設の空爆が続き、ロシア国民の生活に次第に大きな影響を与えつつあることが、youtubeで情報提供されているが、あわせて、ロシアによるウクライナに対する、主に民間施設への空爆も激しく行われている。軍事関連の施設に限定した空爆を行っているウクライナと、民間施設を標的にしているロシアとでは、いかに意識の違いがあるかを認識させられる。そして、ロシアのような国家があるということが、やはり、特別な研究の対象にならなければならないと思わされる。ロシア・プーチンの戦争犯罪を問えるような形での終戦でなければならない。
 MSNニュースに「NATO前総長『このままでは戦争が終わらない…欧州軍を派兵すべきだ』」と題する記事があった。
 NATO事務総長ルッテが、この戦争を打開するために、欧州軍を派兵する必要があることを述べたということと、元の事務総長ラスムッセンが、プーチンは戦争に勝てると思っているので、欧州が劇的な姿勢転換を行う必要があると主張していることが報道されている。
 考えさせられることがいくつかある。
 アメリカもそうだが、EUは、最近まで、あるいはいまでもウクライナへの協力にしり込みしている面がある。それは、表向きは、あまりロシアを刺激すると、核攻撃の危険があるといいわけがなされてきたが、ロシアの核の脅しは、かなり虚勢に過ぎないことが、ウクライナの攻勢によって明らかになりつつある。もちろん、危険がまったくないということはないだろうが、ロシアは、いままで設定してきたレッドラインを破られても、核攻撃の構えをみせたことがない。重要なミサイルの発射に失敗したことが何度かあるので、核兵器を積んだミサイルが、誤射する可能性が決して小さくないことがわかってしまった。これでは、核攻撃など、かなり困難であろう。発射に失敗して、自国内で爆発してしまったら、元も子もない。
 そう考えると、EUのウクライナ協力の消極姿勢は、違うところにあると考えたほうが事実に近いような気もするのである。それは、何か。ヨーロッパは第二次大戦後、域内では戦争がおきていない。また、NATOとして局地的に戦争にかかわった事例も非常に少ない。湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争などごくわずかである。それも、主にアメリカが担ったもので、ヨーロッパはお付きあいのようなものだった。その結果、とくにヨーロッパでは、戦争にそなえるという政策がかなりおろそかになっていたために、いざウクライナに武器を提供しようとしても、提供することのできる兵器が限られていたのではないか、という可能性である。これは、アメリカにも当てはまるようだ。ウクライナがパトリオットを必要としていることは理解していても、アメリカでも他国に供給できるほど、パトリオットがないのだ、という記事を読んだことがある。おそらく、正しいのだろう。アメリカですらそうであれば、ヨーロッパはかくありなんだろう。
 つぎに、プーチンは戦争に勝つと思っている、というのは、非常に意外だ。もちろん、戦争を止めるきがないというのは、本当だろう。しかし、勝つと思っているとしたら、やはり、驚きだ。ロシアは侵略国であり、ウクライナは侵略されている国である。したがって、ウクライナ人が闘うのは、自分たちを守るためだ。だから必死になる。ロシアの兵隊たちは、最終的には、闘う目的がわからない。だから、必死にはなれないはずである。古代や中世の時代はさておき、現代において、大国であろうと、侵略する側が、目的を達して、侵略を成功させ、維持させたという事例は、存在しないのである。アメリカのベトナム侵略、ソ連のアフガン侵略を考えればよくわかる。当初イラクを治めることができると思われたアメリカも、やがては手を引かざるをえなくなったし、現在、アメリカがイラクを統治しているわけではない。人権意識が広く浸透するようになった世界において、他国を侵略して、統治を維持することができるはずがないのである。
 当初圧倒的な軍事力を誇ったロシアも、最近では、はっきりと劣勢になっているし、ロシアのエネルギーインフラが次々と破壊され、これから迎える冬は、ロシアにとって、極めて厳しいものになる。プーチンがいつまでもちこたえられるか、と多くの者は見ている中で、勝てると本当に思っているのだとしたら、通常人の理解を超えている。プーチンに極めて忠実で、ロシア・プーチンのためなら、どんな嘘でも国際社会でついてきたラブロフが、粛清されたらしいと報道されている。いま、プーチンに心から従っている部下は、どのくらいいるのだろう。
 ただ、ヒトラーですら、何度もテロの可能性がありながら、結局、最後は自殺するまで、反ヒトラーのひとたちが、ヒトラーを倒すことはできなかった。しかし、そのことで、ドイツ中が瓦礫とかしてしまったわけである。ロシアも、国が破壊されるまえに、プーチンを倒す人が出てくることを期待する。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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