素晴らしかったウィーンフィル・ニューイヤーコンサート

 今年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートは、カナダ出身のセガンが指揮をした。少々事情があり、リアルタイムでは後半のみテレビで、全曲は2日に録画で視聴した。
 一言でいえば、とてもよかった。近年のなかでは、ウェルザー・メストとともに出色のできだったといえる。しかも、ウェルザー・メストは、ウィンナワルツをすばらしく聴かせるという指揮だが、セガンはさらにエンターテイナー的に楽しませる。「青きドナウ」が終わったあとは、スタンディング・オベーションとなり、このコンサートでは、私は初めてみた。そしてそのあと、ラデツキー行進曲では、セガンは客席を歩き回り、ほとんど拍手の指揮をして、聴衆を喜ばせていた。この間オーケストラの指揮はほったらかしという感じだったのだが、オーケストラとしては、それこそ自分たちがやりたいようにやれるとご機嫌で演奏していたようだ。
 といっても、観客の湧き具合は、当初はそれほどではなく、儀礼的とはいわないまでも、爆発的な拍手は最後のほうで初めて起きた。というのは、とにかく多くの観衆にとって、ということは、私にとってもだが、知らない曲ばかり並んでいたからだ。まったく未知の作曲家の作品もけっこうあった。「ヴァインリッヒ」「フローレンス・プライス」「ロンビ」などというひとたちは、ワルツというだけでなく、一般的な作曲家としても、私はまったく知らなかった。おなじみの作曲家の作品でも、マイナーなものばかりがならんで、有名曲は最後のほうで、「南国のバラ」と「エジプト行進曲」だけだった。これでは、拍手喝采とはいきにくい。しかし、演奏はとても聴かせるものだった。ワルツの雰囲気のだし方がとてもうまく、とくに、ウィーンフィルでしかだせないような、ハーモニーが随所に聴かれた。ワルツは当然踊りの曲だから、力をいれたり、抜いたりするわけだが、さあこれから回転、というときの盛り上げがとても自然で、ダンスを彷彿とさせるのだ。
 セガンのことはもちろん知っていたが、実はこれまでに聴いたのは、メトロポリタンでの「カルメン」の全曲映像だけだった。しかし、カルメンを歌ったガランチャ目当てだったので、セガンの指揮はよかったと思ったが、特別印象に残ったわけではなかった。このニューイヤー・コンサートを聴いて、もっと積極的に聴こうという気持ちになった。
 以下に演奏曲目をあげるが、演奏そのものはすべてよかったと思うが、最後の『平和の棕櫚の葉』とアンコールの「青きドナウ」がよかった。
01. ヨハン・シュトラウス2世:オペレッタ『インディゴと40人の盗賊』序曲
02. ツィーラー:ワルツ『ドナウの伝説』 Op.446★
03. ランナー:マラプー・ギャロップ Op.148-1★
04. エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ・シュネル『暴れる小悪魔』 Op.154★
05. ヨハン・シュトラウス2世:こうもりカドリーユ Op.363
06. ヨハン・シュトラウス1世:ギャロップ『パリの謝肉祭』 Op.100
07. スッペ:オペレッタ『美しきガラテア』序曲
08. ヴァインリッヒ:ポルカ・マズルカ『セイレーンの歌』 Op.13(W.デルナー編)★
09. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『女性の真価』 Op.277★
10. ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ・フランセーズ『外交官のポルカ』 Op.448
11. フローレンス・プライス:レインボー・ワルツ
12. ロンビ:コペンハーゲン蒸気機関車ギャロップ
13. ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ『南国のばら』 Op.388
14. ヨハン・シュトラウス2世:エジプト行進曲 Op.335
15. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『平和の棕櫚の葉』 Op.207
 他アンコール
 ティーレマン、バレンボイム、ムーティのようなウィンナワルツにはむかない指揮者ではなく、こうしたセガンのような指揮者、そしてメストをたくさん登場させてほしい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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