優秀な高校生が海外にいくのはいいことだ

 東大が新しい学部をつくるのだそうだが、その理由が、日本のもっとも優秀な高校生が、もはや東大を目指すのではなく、海外の大学を目指すようになっているから、それを打開するためだそうだ。本当のところはわからないが、そのように報道されている。現在の入試制度だと、暗記中心の詰め込み型で、もっと自由に能力を伸ばすことができないので、本当に優秀な高校生は、より自由な選抜が行われている海外の有名大学に行きたがるのだということらしい。

 だから従来型ではない、新しい試験をするという。もっとも、東大の入試は、ずっと前から、かならずしも単純暗記型とは多少毛色の違う、考える問題、総合的に理解していることを求め、表現力を試すような問題をだしてきた。逆にいえば、だからこそ、現行の入試のあり方を打開しようとする姿勢もあるともいえる。
 しかし、確かに、近年東大では合格者が入学辞退する数がふえているらしい。他の大学の医学部に流れる場合もあるが、海外にいくという合格者もふえているのだろう。東大としては、なんとかして、東大に来てほしいということだろうし、そうした努力は重要だが、私からみれば、優秀な高校生が海外の大学に進学する傾向は、とても好ましいのではないかと思う。とくにバブル崩壊あたりから、日本の大学生、あるいは大学院生が海外に留学するひとたちが減っているということがいわれて、日本の若者が内向きになっているのではないかと危惧されていた。それを打破する動向として、海外に挑戦する高校生がふえているというのは、頼もしい限りだ。スポーツや芸術分野で、若いころから海外をめざし、成果をあげている若者が多いが、それが学問分野にも及んでいると考えることができる。ぜひ海外に挑戦する高校生が多数でてきてほしいものだ。彼らが海外で活躍するのも、また日本に帰ってきて、日本で活躍するのも、いいことではないだろうか。人材流出などと騒ぐことはない。
 東大の立場としては、国内の優秀な高校生を惹きつけるだけではなく、海外の優秀な高校生を惹きつけて、ぜひ東大に入学したい、東大にいけば、とてもよい教育を受けられ、学習ができる、研究ができるという環境をつくって、それを実現させることも、もっとも大きな課題ではなかろうか。それには言葉の問題もあるから、簡単ではないことは承知しているが。
 私の学生時代は、まだ1ドル=360円時代だったから、留学などは、とてもとても考えるだけでも困難なことだったが、今は円安といっても、360円時代に比べればずっと行きやすい。逆に考えれば、海外から日本の大学にきて学ぶことは、ずっとハードルが下がっていることでもある。
 ヨーロッパはEUとして統合されてから、EU内での大学の移動を最大限自由にしただけではなく、移動を受け入れる特別なプログラムも実施している。19世紀までのドイツでは、学期ごとに大学を移動できるシステムがあったといわれている。だから、当時の有名人の経歴をみると、複数の大学で学んだ人がとても多い。学期ごとに移動するのがいいことかは、また別の問題もあるが、国内だけではなく、国際的にも、複数の大学で学べるシステムは、ぜひ実現させるべきだろう。
 そのためには、たしかに現在までのような入学試験システムは改める必要がある。そもそも、日本の大学入試システムは、国際的にみれば少数派である。大学側が学力試験をするような方法は、あまりとられていない。基本は高校の成績を重視すること、そして、大学で選抜を行うとしても、高校の成績を前提として、人物をみる選抜を付加する方法が多い。日本全体として、そうした方向に向うべきだと思う。その点の詳細は、また別に考えたい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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