木原妻事件の不可解な面

 ネット上、とくにyoutubeなどでは、木原事件がさまざまなyoutuberがとりあげている。いずれも、妻の関与を疑うもので、今後岸田政権は、このことでも追い詰められるだろう。
 ところで、この事件は、いくつもの不可解な面がある。そして、すべてのことがらが、妻の犯行を裏付けるものともいえない。たとえば、妻が全夫と結婚していたときに浮気相手だったとされる人物が、再捜査の過程で(当時覚醒剤使用の罪で服役していた)、妻が電話をかけてきて、やってしまった、といっていた。そして、家までいった、と証言しているのだが、10年以上経過していたことでもあり、また、何度も刑事がやってきて、尋問していたなかでの証言なので、かれが創作したということが、絶対ありえないともいえない。もっとも、実際に、家にでかけたということは、防犯カメラなどで跡づけられているようだから、信憑性は高いと思うのだが。
 
 この事件の文春記事を読んで、最初に疑問に思ったのは、殺害された夫の父親が、自分の車、ハイエースを息子に貸していたのだが、返してくれないので、返してもらうために、夜息子の家に出向いたという点である。別に事実ではないといいたいのではないが、この時刻が午前の3時くらいだったという点だ。いくら大事な車とはいえ、返してもらうために、夜中の3時に出向くものだろうか。いきなり行くとも思えないから、電話をしたはずであり、その際の内容などは、私が知るかぎりは、でていない。息子(夫)に覚醒剤反応がでたというのだから、電話のときに既になにか異常を感じて、あわてて夜中にもかかわらず、かけつけたのではないだろうか。そういう疑問がどうしてもでてくる。

 
 第二に、この事件が、自殺として処理されたことである。文春の記事をよむかぎり、どう考えても自殺の線は薄く、他殺の可能性が高いと思われる。不自然な部分がたくさんある。血の海になっているような現場、もつ部分が拭き取られていたナイフ、となりに妻と子どもが寝ていたとされる部屋があること、等々。父親が救急車をよび、警察がきて、現場検証をしたのだから、そうした現場があったことは事実だろう。だが、自殺というには、あまりに不自然である。だが、警察は自殺と判断し、しかし、父親が強く異議をとなえたので、不審死として未解決事件簿にいれられた。しかし、形式的には自殺として処理され、その後捜査が行われたわけではなく、再捜査が多少行われたのは、未解決事件の担当者が、記録に不審をいだいたことがきっかけで、10年以上経過したあとである。
 何かの文章で読んだことがあるのだが、こうした不審死の多くが、自殺として処理されているのが実情だという。日本は統計上自殺が多いが、実はそのうち何割かは他殺の可能性があるというわけだ。あきらかに事件性があるというのでなく、自殺が疑われる状況だと、自殺として処理されるというのだ。自殺であれば、その後の面倒な捜査が不要になるわけだ。偶然読んだ記事によると、刑事の仕事の大部分は、めんどうな書類作成で、簡単な窃盗事件でも、段ボール数箱分くらいの書類が作成され、それは担当刑事の仕事だというのだ。つまり、殺人事件であれば、非常に消耗な捜査をしなければならず、事件が解決したとしても、気の遠くなるような量の書類を作成する必要がある。自殺ならば、捜査の必要がなく、書類も簡単にすむのだろう。そういうことを考えれば、警察が事件を疑う状況でも、自殺の可能性があれば、そちらで処理しようと思いたくなる気持ちもわかる。
 しかし、もし殺害されたのだとしたら、やはり、かなり大きな問題というべきだろう。殺人犯が、まったく疑われることなく、生活していることになる。
 報道されている、よく知られた自殺事例でも、ネット上では他殺だという人が少なくないものは、いくつもある。
 刑事の作成する文書が、ほんとうに必要であれば、なしですますことはできないだろうが、さまざまなツールをつかって、より簡単に作成できる方法を開拓して、刑事の仕事の量を減らすべきだろう。
 
 第三に、再捜査が開始されたにもかかわらず、あまりに短期間でそれが終息したことである。現場の刑事も納得しないらしい。また、木原氏は、文春にたいして刑事告訴するといっている。ここらのやりとりもあまり理解できない。ほんとうに刑事告訴したり、民事でも提訴すれば、むしろ事実がどんどん明らかになってしまい、かえって不利な状況になるにちがいない。野田聖子議員は、夫が元暴力団員だったと、やはり文春に報道されて、名誉毀損で提訴したが、最高裁までいった裁判で、結局、暴力団員だったことは事実だと認定されてしまい、藪蛇だった。今回の木原氏は、事件当時にちゃんと捜査してくれていれば、結婚しなかった、などと語っていることからみて、妻を完全には信じていないのだろう。そんななかで裁判になれば、木原氏が追い込まれる可能性も大いにある。有名人の提訴恫喝は、実行しないことも多いから、どうなるかわからないが、こうした政治家の行動は、不可解だ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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