五十嵐顕は知識人か3

 「攪乱者」という面については、単純ではないといえる。
 学生時代から軍隊、そして、教育研修所時代の五十嵐は、攪乱者とはまったく正反対の協調型の人間であった。四高に入ったときからつけ始めた読書ノートには、高校で学ぶべきものは倫理、道徳、哲学、歴史などであって、社会科学は大学で学べばよいと書いていたが、大学に入っても社会科学を学ぼうとはしなかった。学連事件によって、高等学校(旧制)での社会科学研究会が禁止されていたのだが、そうした禁止に忠実だったといえる。 “五十嵐顕は知識人か3” の続きを読む

五十嵐顕は知識人か2

 つぎにアマチュアということでみてみよう。
 五十嵐は、まさしく「アマチュア」であったということができる。それはもちろん悪い意味ではないが、専門家としては弱点であることも否定できない。
 五十嵐は、最初の職が教育研修所の所員であり、そこで、アメリカの教育委員会の調査という課題を与えられていた。アメリカの教育委員会の多くは、財政権をもっており、したがって、教育委員会の研究をすれば必然的に教育財政の分野に踏み込むことになる。そして、研修所の主任であり、五十嵐を採用した宗像誠也が東大に移り、そして、五十嵐を呼んだわけである。このとき、五十嵐は、宗像の申し出を断ったという。教育研修所にこのままいたいというわけだ。結局、説得に応じて東大の助教授となるわけだが、私は五十嵐は本心で断りたかったのだと思う。五十嵐は、地位を求めることにはあまり関心がないような生活感覚を示していたが、東大のポストがさして魅力的でもなかったのではないだろうか。 “五十嵐顕は知識人か2” の続きを読む

九州交響楽団の「運命」を聴く

 九州交響楽団が苦境になっているという記事をみた。地方のプロオーケストラの半数近くが赤字に苦しんでいるという。たしかにオーケストラの採算があうということは、かなり奇跡に近いのだ。 “九州交響楽団の「運命」を聴く” の続きを読む

五十嵐顕は知識人か1

 エドワード・サイードの「知識人とは何か」を参考にして、矢内原忠雄と丸山真男を論じた文は、大変不充分なものなので、再度それぞれやがて論じておきたいが、今回は五十嵐を加える文となる。
 再度簡単にサイードの知識人の要件をあげておくと、・アウトサイダー・アマチュア・現状の攪乱者となっている。
 アウトサイダーとは、特定の人種、民族あるいは国家、共同体などにとらわれることなく、物事を普遍的な立場から捉えることができるという意味である。もちろん、そういうところに属していることは差し支えない、というより、属さないことが現代社会では不可能ともいえる。だから、その所属を超えることができるということだろう。 “五十嵐顕は知識人か1” の続きを読む

トランプ政権は機能していない

 トランプ政権のあやうさは、日に日に増しているようにみえる。そもそも私には、トランプ政権は公表している目的と、実質的な獲得目標はまったく別もののようにみえる。トランプ政権は、アメリカの政治を牛耳っている人握りの富豪たちではなく、中産階級の下のひとたちのための政治をめざしているのだ、などと解説している人がいるが、トランプ自身が富豪の一人であって、減税法などをみても、けっして中産階級のためのものではなく、富豪や大企業向けの政策であるように思える。乱暴に推進している関税は、結局物価高に帰結することは明らかだから、庶民たちに打撃となるだろう。 “トランプ政権は機能していない” の続きを読む

オペラ上演のトラブル・事故

 アメリカニューヨークのメトロポリタン・オペラ劇場で、観客がステージに突然あがって、抗議をしたという記事がある。どんな抗議をしていたのか、詳細はどうも不明だが、そういうこと自体がとんでもないことである。オペラというのは、とにかく、実に多くの分野の人びとが関係し、数時間の舞台の上演を行うのだから、いろいろと事故が起きることはよく言われている。つまり、ミスによるものだ。 “オペラ上演のトラブル・事故” の続きを読む

トランプの不当な和平案

 アメリカ、トランプ大統領から、ウクライナ戦争の和平案が出ているようだ。まだ、正式に発表されていないのだが、ゼレンスキーはかなり悲愴な演説を国民に対してした。私が愛聴しているウクライナ人のやっているyoutubeでは、ボグダン氏が本当に悲しそうな表情で説明をしていた。
 内容の詳細をここで書くことはしないが、一言でいえば、完全にロシアの立場を代弁した案といわざるをえない。ドンバスやクリミヤをロシア領土とし、ウクライナの軍隊を半分にし、NATOに加盟しない、ロシア語を公用語に加える、ロシア聖教を復活させる、等々、書けばかくほど不愉快な内容である。 “トランプの不当な和平案” の続きを読む

人口増はいいことか

 先進国はほぼ人口減少に悩んでいる。少子高齢化が進んでいるからだ。そういう中で、私が住んでいる自治体は、全国でもめずらしく人口増加が何年も続いている。そして、その開発スピードはまったく衰えていない。とくに20年前に鉄道が開通してからは、とくに開発が著しい。 “人口増はいいことか” の続きを読む

全盛時代の巨人は理論的であり、個性を活かしていた

 プロ野球の巨人がもめている。内部的にはもめていないかも知れないが、ファンたちの間ではかなりの騒動になっているようだ。それは、1軍打撃コーチの二岡、二軍監督の桑田、そして3軍の駒田という3人の指導者たちが、解任されたことであり、更には、優勝を逃した最大の責任者である阿部監督がそのままであるということも関係しているといえる。とくに、桑田と阿部の関係が取り沙汰され、桑田を解任したことは、巨人の将来にとってマイナスという見解が、OBたちには多いようだ。そして、先日山口オーナーが、桑田にはフロントのポストを用意したのに断られた、などと釈明したことが、油に火を注いだ感じになっている。 “全盛時代の巨人は理論的であり、個性を活かしていた” の続きを読む

国立大学予算での文科省と財務省

 いまや年中行事になった観がある、予算をめぐる文科省と財務省の争いだ。これはずっと以前から続いていることであるが、現在の焦点は、国立大学予算に関してである。以下の記事があった。
「文科相、国立大の運営費交付金「増額が必要」 財務省に反論」(朝日新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ab93b70e5110c7de898f31bc7cf0845455dfbbf2
 私は私立大学に勤めていたし、また現在は定年になって現場を離れているので、自身の切実観はないのだが、やはり、日本の科学技術、教育の発展は気になるし、絶対に軽んじてはいけない領域である。 “国立大学予算での文科省と財務省” の続きを読む