トランプ政権のあやうさは、日に日に増しているようにみえる。そもそも私には、トランプ政権は公表している目的と、実質的な獲得目標はまったく別もののようにみえる。トランプ政権は、アメリカの政治を牛耳っている人握りの富豪たちではなく、中産階級の下のひとたちのための政治をめざしているのだ、などと解説している人がいるが、トランプ自身が富豪の一人であって、減税法などをみても、けっして中産階級のためのものではなく、富豪や大企業向けの政策であるように思える。乱暴に推進している関税は、結局物価高に帰結することは明らかだから、庶民たちに打撃となるだろう。
このようなことはさておき、最近のトランプ政権のやり方をみると、この政府がまともに機能しているのか、大きな疑問をもたざるをえない。
先日、公表されたわけではないが、ウクライナ戦争の和平のための26項目の案なるものが、双方に示されたようだが、早速その裏側が明らかになり、頓挫している。あの案を作成した人は、2人だけで相談してきめ、トランプですらその内容を知らなかったというのだ。当然共和党の議員たちには、まったく知らされていなかった。そして、まかされた二人が、ともに親ロシア派の人物だというのだから、あのような案がでてきたのも不思議ではないのだが、それでも不思議に思われたのは、あれほどロシア寄りの案だったにもかかわらず、ロシアは拒否したというのである。完全なロシア寄りの案をロシアが拒否したのだから、ウクライナやEU諸国が受け入れられるはずはなく、既に、練り直しが行われているというのだが、あの案ですらロシアが拒否するのだから、練り直しによって、ウクライナもある程度納得のいくように改訂がされたから、ロシアはますます態度を硬化させるだけだ。
驚くのは、トランプすら内容を充分には理解していなかったようなものが、ウクライナやロシアに提示されてしまうということだ。トランプ政権の重要閣僚はほとんどだれも知らないということだろう。そんな案がうまくいくはずがないし、それが世界に知られてしまうということは、トランプ政権そのものが、きちんと機能していない証拠であろう。
関税に関する連邦最高裁の判決がでるのは、まもなくである。おそらく、トランプに不利な内容、つまり、トランプ関税は違憲であるという判決がでると予想されている。常識ある人間であれば、貿易赤字が、緊急事態であると判断するはずがない。貿易赤字などは、アメリカのずっと続いている状況であって、異例でもなんでもない。ただし、アメリカは、機軸通貨国だから、赤字であっても、それほど問題ではないのだ。あのような関税政策で、機軸通貨体制がゆらぐことのほうが、もっと重大ではないだろうか。
トランプは、なぜG20に出席しなかったのだろうか。私には、その前のアジア歴訪が非常に大変で、もともと健康不安があったトランプは、かなり健康上の問題が増大しているのではないかと思うのである。とくに、認知機能がどうなっているのか。こうしたことが、トランプ政権の歪みの原因になっている気がするのだが。