シャーロック・ホームズは、ときどき犯罪者と対抗するためだが、違法な行為をしている。とくに、悪質な脅迫魔として、何人も人々の運命を台無しにしたミルバートンの屋敷に忍び込んで、書類を処分したのは、不法侵入であり、また、文書を盗んだも同然だろう。さすがのワトソンも、この試みの前には、賛成できないことをシャーロック・ホームズに主張している。ホームズは、庭師に化けて屋敷に雇われ、ここの女性の雇い人と婚約までして、内部の情報を聞き出す。そして、絶対にミルバートンが寝ているときに、侵入するのである。しかし、このときミルバートンは約束があり、おきていて、ホームズたちが侵入した部屋にやってきて、ぶらぶら過ごしている。そして、そのうち約束の女性がやってきて、ミルバートンを銃で殺害してしまう。そして、彼女が去って、混乱している間に、書類を全部燃やしてしまい、逃れるのだが、ワトソンは捕まりそうになり、そのときワトソンは人相を見られてしまう。翌日警部がやってきて、人相を語るが、いかにワトソンに似ていても、ふたりが侵入犯と思われるはずもなというわけだ。
では、平蔵はどうなのか。ホームズは創作の人物だが、長谷川平蔵は実在の人物であり、旗本の身分だから、盗みなど実際にはしなかっただろう。しかし、小説のなかでは、なかなか微妙に書かれている。