オリンピックの負債

 オリンピック・パラリンピックが終わって、オリンピック賛成派のひとたちは、反対論に対して、的外れな批判をしている。オリンピックがコロナ感染を拡大するなどといっていたが、そうならなかったではないか、オリンピックが盛り上がることはないといっていたが、テレビの視聴率は高かったではないか等々。
 しかし、私のような強固なオリンピック反対論者は、オリンピックがたとえ「成功」したといっても、やはり、オリンピックには反対なのである。それは「成功」という内容が、極めて限られたもので、その裏にある、より大きな負の遺産がずっと残る構造が、オリンピックにはあるからだ。これから、どんどん出てくるだろうが、オリンピックは、莫大な赤字を生んだ。とくに今回は、コロナのために無観客にしたから、海外からのインバウンドがなくなり、当初期待していたオリンピックによる経済効果が、ほとんどなくなってしまったことも大きいのだろう。しかし、インバウンドといっても、潤うのは一部の業界である。そして、インバウンド効果があったとしても、オリンピック施設のほとんどが、今後大きな赤字を、継続的に抱えていくことが、当初から明らかになっている。莫大な建設費をかけた国立競技場は、現時点で、運営の引き受け手がないという。当初の計画からずいぶんずれてしまったために、非常に不便な競技施設になっている。そのため、いくつかの国際大会には使用しにくいということで、運営管理会社も躊躇しているということのようだ。このような施設は他にもあるだろう。逆に大きすぎるという場合もあり、その場合は観客席を撤去したり、縮小する工事が必要となる。これは、オリンピック委員会が、競技場の大きさだけではなく、観客数にまでルールを設けているからで、オリンピックだから、当然国内大会などと比較して格段に規模の大きなものを求められるが、普段はそんな規模の客が入るものではないし、そもそも、大会など日本では、ほとんど行なわれない競技だってあるだろう。そういう部分は、無駄になってしまう。そっくり取り壊される競技施設もあるようだ。

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侮辱罪の厳罰化だけではなく必要なこと

 上川法務大臣が、インターネット上などの侮辱的発言を厳罰化するという方針を明らかにして、ワイドショーなどで盛んに取り上げられている。木村花さんの自殺をきっかけに、大きな議論が起き、それが今回の方針転換となっているという。
 
個人情報開示
 書籍や週刊誌、あるいは既存のメディアにおいては、内容に責任をもつ担当者がいるので、そこで侮辱発言や名誉毀損発言があると、発言者や編集責任者が明確であるから、被害者は、被害回復を望むときには、少なくとも相手が誰であるかを探す必要がない。しかし、インターネット上では、違法発言をする人は、ほとんど匿名なので、まず誰が発言、投稿しているのかを特定する必要がある。そこで、SNS運営者(発言する際に利用しているアプリの運営者)と、プロバイダーの両方に情報開示を請求する必要があり、しかも、裁判所が開示を認めなければ、開示されなかった。つまり、相手を特定するだけで、かなりの労力が必要であり、かつ、裁判だから時間がかかる。判決ができるときには、公訴時効になってしまうという、まるで違法発言を励ますかのようなシステムになっている。それが、一回の裁判で済むように、現在では改善されているという。しかし、私は、これでも少々疑問だ。

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新学期授業再開での保護者の対立

  Newポスト・セブンの記事で「デルタ株蔓延で進む校内の分断 親が登校派と休校派に分かれて互いを罵倒も」が非常に興味深い。単純にいうと、新学期が始まって、保護者の間に、登校派と休校派がでてきて、激しく罵りあうだけではなく、教員も巻き込んでの混乱が生じているというものだ。
 
 おそらく当事者たちは真剣なのだろう。最初の対立は、オリンピック・パラリンピックの学校連携観戦の実施をめぐってだったようだ。これは確かに、親のアンケートなどをとっていたので、行政が親を巻き込むことにもなった。そして、結論が正式にでるまでに二転三転したし、また、特にパラリンピックは自治体間の相違もあった。

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大谷翔平疑惑の判定?

 ロスアンジェルス・エンジェルスの大谷の活躍が連日のように報道されている。しかし、このところ、多少ホームランも足踏み状態のような感じがする。2位に追い上げられて、大丈夫かという危惧をもつ人も多いに違いない。
 気になるのは、申告敬遠が多いこと、審判による疑惑の判定といわれるのが多いことだ。申告敬遠は、逆にいえば強打者の証拠なわけだが、まだ本塁打王をとったこともないし、また、投手でもある大谷が、大リーグでもっとも多く申告敬遠されているというのは、大リーグの投手にとって、名誉なことなのだろうか。大リーグは、バントや敬遠という、ファンを楽しませないプレーはあまりやらない、と以前は言われたものだが、最近は変わったのだろうか。申告敬遠などというルールをつくるくらいだから、ファンサービスよりは、勝敗を気にするようになっているのかも知れない。大谷にとっては、チャンスのときに敬遠されるわけだから、どうしても、闘争心が削がれてしまうかも知れないのが、気の毒だ。

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河野太郎の総裁選出馬会見

 河野太郎出馬会見も全部みてみた。高市氏とは印象がだいぶ違っていた。高市氏は、自分の政策を説明する時間をたっぷりとり、受けた質問は少なめだったが、河野氏のは逆で、自分の政策説明はずっと短く、質問者は、ほぼ全員にまわしていたのではないかと思われた。
 自民党支持者ではないので、誰に共感するとかそういうことはないが、単純に見応えがあるという意味では、河野会見は多少不満だった。
 まず、最初にワクチン担当大臣としての実績を述べて、10月には先進国なみの接種実績になると誇っていたが、ワクチン接種の混乱については、ほとんど触れることがなかった。国民は、ワクチン接種がそれほどうまくいったとは思っていない。思っていたら、菅首相が立候補を諦めることはなかっただろう。菅内閣への最大の不満は、コロナ対策が十分でないからで、その大きな部分がワクチンだった。確かに、ある時期から接種スピードが加速したが、それでも、さまざまな問題がでた。それを無視して、数をこなしたことを誇示されてもなあ、というところだ。

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高市早苗氏の総裁選政策について2

 昨日は、『文芸春秋』の文章を紹介したが、今日は記者会見の内容から考える。この記者会見の映像を全部みたが、なかなか興味深かった。特に、菅首相の記者会見と比較すると、本当は当たり前のことをしているに過ぎないのだが、高市氏が実にしっかりした政治家に見えてくる。主張は明確であるし、質問に対して、とにもかくにも、まともに答えようとしていた。追加質問を禁止するようでもなかったし、最後に、指名されなかった記者が、大声でどなるような形で質問をしたのだが、それに対しても、回答していた。しかも、用意した原稿を棒読みするでもなく、また、質問そのものは、予め決められていた様子はなく、自由に記者たちが発しており、それに対してメモもなしに、ほぼ澱みなく回答していた。一国の総理大臣になる地位を争っているのだから、この程度の応答能力は最低限もっていてほしいものだ。

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高市早苗氏の総裁選施策について 1

 自民党総裁選が始まり、既にヒートアップしている。当初は泡沫候補といわれていた高市早苗氏が、安倍晋三氏の支持表明を受けて、急浮上しているらしい。高市氏といえば、とにかく超保守、あるいは右翼政治家というイメージが強い。靖国神社参拝継続、選択的夫婦別姓は反対、LGBT法案にも反対ということが、彼女の政治姿勢を象徴しているように受け取られていた。だから、まさか総裁選にでて、首相をめざすとは、あまり思われていなかったし、出たとしても、泡沫候補で直ぐに消えてしまうと見られていた。これまで女性初の首相候補として、名前が出たことはあまりなかったはずである。それが今では、河野氏と争うほどの勢いになっているというのだ。もっとも、そう見ていない評論家もいるが、私がみる限りは、岸田氏より優勢になる可能性はあると思う。

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小室圭氏の就職が困難に?

 小室圭氏の就職が、うまくいっていないことが報道されている。内定しているかのように報道されていたが、実は、大手弁護士事務所に採用を断られていたというのだ。
 そして、ことはそれだけではなく、小室氏程度の経歴では、ニューヨークの大手事務所では、採用されることはないだろうと、現地で働いている人の談話である。それによると、小室氏は、最初修士課程に入って、博士課程の2年に編入したのだが、優秀な人は、最初から博士課程に入学して、2年生を終わった夏休みに、大手事務所のインターンをする。そのインターンの採用が、最初の難関で、インターンでよい評価をえると、だいたい卒業と同時に採用されるというのだ。しかし、ニューヨークでは、インターンに採用されるのは、コロンビア大学などのような一流大学がほとんどで、フォーダム大学で、しかも、博士課程の1年を飛ばしている小室氏には、とうてい無理だろうというのだ。確かにインターンをしているという報道はなかったように思われる。

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日本は本当に能力主義社会か8 中教審46答申の検討1

 1966年の答申が出たあと、日本だけではなく、国際的に教育に大きな問題提起をするような事態が生じた。それは1960年代後半、パリのカルチェ・ラタンで起こった青年運動である。それは、瞬く間に先進国に広がり、日本でも大規模な大学紛争が起きる。アメリカでは、学校教育に対する根底的な批判と新しいオルタナティブ教育をめざす学校が創設されていく。そうした青年運動の中心的な問題意識は、既存の学校教育への疑問であった。だから、大学だけではなく、高校や中学にまで影響を及ぼしたのである。
 日本では、高校や大学の進学率があがったが、激しい受験競争が伴っていた。不合格者の自殺者まで出た時代だった。また、高度成長が進んで、国民生活が豊かになった反面、その歪みも目立って来た。特に、都市部における公害は酷く、各地で公害反対運動が激化していた。そして、経済審議会答申が指摘していたように、国際社会・経済における日本の位置に変化が生じ、追いつき型から、創造的な技術開発が求められる状況になってきたと、認識され始めていたのである。

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自民党の総裁選を単なる権力闘争とみるべきではない

 菅首相の自民党総裁選不出馬から、俄かに総裁選争いが活性化している。野党は大丈夫なんだろうかと心配になってくるが、自民党の総裁選も極めて重要な意味をもっているように思われる。というのは、主張の明確な人たちが、前面に出てきたからだ。
 まずは、高市氏だ。右派政党である自民党内でも目立った保守派で、選択的夫婦別姓やLGBT法案にも反対。これまで、必ず靖国に参拝し、首相になっても参拝すると明言している。経済政策は、安倍内閣の継承路線である。しかし、インフレ防止2%の物価上昇といっているが、安倍内閣とは別の主張なのか、同じなのかわからない。安倍内閣での2%は、そこまで物価をあげたいということだったが(その意味は、いまだに不明だ。高橋洋一氏の解説では、2%までなら大丈夫という意味なのだが、2%まであげるのがよいという妙な見解があるとしていた。それでいけば、安倍内閣の考えは、「妙な」ものとなる。)、現在の課題は、2%をはるかに超えて、文字通りのインフレになることが懸念されている。昨年あたりから、かなりの生活必需品の値上げが目立っているのだから、それを抑えるという明確な意識と政策をもっているなら、けっこうなことだが、やはり高市氏の場合、政治的イデオロギーで、国際的な摩擦を生じさせる恐れがある。高市氏支持層というのは、中国と明確に対立することを望んでいるようだが、中国と対立することが、どのようなメリットがあるのだろうか。人権抑圧がけしからんといっても、中国嫌悪派が、国内における人権状況にどれだけ問題意識をもっているのか、極めて疑問なのである。

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