医療の拡充ではなく、患者の切り捨て策に出た菅内閣

8月2日に、政府は、コロナの医療体制を改め、これまではリスクのあるひとを幅広く入院させていたのに対して、入院の対象を重症者や重症化リスクのあるとして、それ以外は自宅療養を基本とするというのである。その理由は、医療が逼迫してきたからだという。
 そして、これまで入院しないと可能でなかった治療法を在宅でも可能にするという。例えば、「抗体カクテル療法」をあげている。しかし、抗体カクテル療法は、点滴によるものなので、自宅で行うには、かなりの制約があるはずである。自宅療養者に対する使い方は、これから協議するらしい。ずいぶんのんびりしたものだ。https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE0274O0S1A800C2000000/
 結局、自宅療法への対応が整わなくても、入院は重症患者という措置は、見切り発車するのだろうか。

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日教組教育制度検討委員会報告(一次)1 教育要求実現が教育的格差を生むとは

 戦後に行われた教育改革は、大きく5つの時期に区分することができる。
 第一は、当然アメリカ占領下において行われた「戦後改革」である。
 第二は、1950年代、米ソ対立、朝鮮戦争を契機とした講和条約に発する「逆コース」という一連の戦後改革の否定と管理強化。
 第三は、高度成長とそれに乗って延びた進学率の上昇への対応が中心となった中教審46答申による改革である。
 第四は、日本の経済力がほぼ頂点となった80年代に、中曽根首相の主導による臨教審の改革。そして、それを引き継ぐ小泉改革。
 そして、第五が安倍内閣による教育基本法改定等に代表される一連の教育改革である。
 これらの多くが「改革」というには多少スケールが小さいが、教育の局面を変化させたことは間違いない。
 第二の逆コースに対しては、日教組などが力で対抗することが多かったが、第三の中教審答申に対しては、大学紛争などの青年運動に刺激されてか、日教組は、全面的な制度改革案を自ら提起するなど、積極的に対案提示を行った。

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オリンピックが開始され、日本人の対応が変わったというが

 オリンピックが開始されて一週間余が経過した。そして、案の定、オリンピックが始まれば、反対する日本人の感覚も積極的に、支持するようになるさ、というような事前の観測が「正しかった」ような論評が目立つようになっている。しかし、本当にそうか。もちろん、いざ始まれば、既に反対しても仕方ないという雰囲気が醸成されることは明らかであるし、立憲民主党すら、今更反対したら混乱を招くなどと発言しているくらいだから、そういう雰囲気があることは間違いない。しかし、みんなテレビを見ているではないか、とか、積極的に支持するようになっているなどということで、国民がオリンピック反対の感情が消えたとみるのは、早計だろう。そもそも、テレビをつければ、ほとんどオリンピックのことばかりやっているのだから、国民がテレビでオリンピックを見ているというのは、事実としても、それ以外ないからだといえる。これだけオリンピックばかりに占拠されてしまうテレビ局がおかしいともいえる。やはり、系列新聞社がオリンピックスポンサーだからだろう。そして、NHKはもともとオリンピックを、重点的に放映することになっていたのだから、テレビを通してみれば、国民がオリンピック漬けになっているようにみえる。

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車への閉じこめによる死亡事故 保育園は出欠確認をしないのか

 毎年、車に閉じこめられた幼児が、熱中症で死亡する事例が少なくない。以前は、親がパチンコに熱中し、子どもを駐車場の車のなかで待たせていた間に、死亡してしまう例が目立った。パチンコと子どもの放置ということで、親への非難が主な報道内容だった。奇妙なことに、毎年繰りかえされていたことだ。パチンコとは、それほど中毒性の高いものなのだろうか。
 ところが、今年は、そういう報道は目立たず、むしろ、別の理由での放置が原因で死亡する例が目立っている。例えば、二人の子どもを連れて帰宅した母親が、最初年上の子どもと一緒に、マンションの自宅に戻り、しばらくして車に戻ったときには、下の子どもがぐったりしており、病院に運ばれたが死亡したという例があった。報道では、その母親は普段から子どもを放置しており、そうした面が表れたので、決して偶発的なものではないという意見もあったように思う。私の感覚では、2人一緒が無理なら、普通は小さな子どもを先にするのではないだろうか。真実はわからないが、今度は、保育園での事故だ。

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共通テストが民間英語と記述式を諦める

 共同通信によると、ついに、文科省は、共通テストの英語民間試験と記述式問題を諦めることを正式に公表するとしている。「英語民間試験、記述式の導入断念 共通テ、文科省きょう公表」(共同通信2021.7.30)
 今まで、検討していたのかと思うと、その執念は、かなり驚きだが、当たり前の結論だと思われる。50万人の記述の答案を適切に採点することなど、不可能であることは誰にでもわかる。問題の量や形式、そして、採点者の質などによるだろうが、例えば、東大の入試では、過去に一次試験と二次試験に分かれていたとき、すべて選択式の一次試験で定員の3倍まで絞っていた。それは、二次試験はすべて記述式だから、採点の負担を軽減するためであった。それでも、東大入試の場合には、募集単位が6類に分かれており、採点者は毎年行う東大の教官だったことを考えれば、試験の質を保つために、有効な手段だった。当時、一次で絞るのは、機会均等に反するなどという、非常に間違った批判がメディアにあふれていて、ずいぶん浅薄な批判をするものだと驚いたものだが、それも共通一次試験の導入で、形が変わってしまったことは残念である。それでも、二次試験で記述問題を中心にだしていることは、見識である。

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ワイドショーのオリンピック報道への疑問 もっと国際的な視点をもてないのか

 オリンピックが開始され、ワイドショーをめっきり見なくなった。オリンピックネタをやっていると、他にチャンネルをまわすようになっている。ワイドショーをみるのは、やはり、ニュースに多少解説めいたものを付加しているからで、更に複数の見方が提示されればなおよい。そういう意味で羽鳥のモーニングショーはもっとも面白い。しかし、どの番組もオリンピックに占拠されている。しかも、その内容が、私から見れば悲惨だ。国力が低下している日本の象徴のような番組になっている。オリンピックに批判的なことを言っていたのに、実際に始まると競技の様子を放映し、メダルをとった選手を礼賛するのはおかしい、という批判もある。メディアがまったく報道しないのも変だろうから、その批判には与しないが、それにしても、放映の仕方には大いに疑問だ。
 とにかく、日本選手のことしか放映しない。しかも、メダルをとった選手しか扱わない。もちろん、あまり見ないでいうのもフェアでないことは承知だが、たまたまつけた番組で例外がないのだから、当たらずとも遠からずだろう。

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和光の教育を考える2 丸木政臣氏は何故インクルーシブ教育を始めたのか

 「丸木政臣教育著作選集第4巻学校論」(澤田出版)が届いたので、読んだ。そして、障害児教育の開始と経過について、詳細というわけではないが、ほぼ理解できる程度に書かれている。非常に興味深い内容だった。しかし、小山田圭吾氏のいじめ関連については、元著作が1992年ということもあり、まったく触れられていない。当時からいじめはあったとも思われるのだが。
 丸木が、熊本の教師から、和光学園の教師になったのは、1955年である。1941年に熊本師範学校にはいり、43年に繰り上げ卒業、予備士官学校入学、そして、鹿児島で沖縄派遣軍にはいり、一端沖縄にいくが、東京に戻された間に敗戦となった。教師になったのは1946年であるから、戦後の教育運動を担った多くの教師が、「再び教え子を戦場に送るな」という思いをもったのとは異なる。教師としての戦争体験はなく、自らの戦争体験と、友人が無為の戦死をしたことなどによる「平和教育」が、彼の教育意識の土台となっていた。それは、和光学園の教師になっても継続的に、沖縄訪問等々の平和教育として実践された。

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オリンピック雑感5 食料の廃棄と配慮のなさ

 今日はいろいろと忙しかったので、ブログの準備をすることができず、雑感篇とする。
 
・オリンピックで、大量の食料の廃棄が起きていると、TBSが報道したそうだ。その番組はみていないが、一月万冊で本間氏がかなり詳しく解説していた。それは、おそらくTBSで放映されたよりもずっと深刻な事態らしい。つまり、3月段階で、観客が満員になるという前提で、全数さまざまな必要物資を発注する必要があったのだそうだ。そして、その契約は、たとえ、観客が減少して、必要な食料もそれだけ少なくなったとしても、契約量のお金を払うということになっているのだそうだ。もちろん、せめて1カ月前くらいにはっきりすれば、量的な修正はできたかも知れないが、とにかく、無観客に決まったのが、オリンピック開催の1週間前だから、その時点ではどうにもならず、注文した食料がどんどん運び込まれたということらしい。その食料は大会の運営にあたるひとやボランティアのためのものなので、ボランティアが大規模に減らされたので、食料が余ってしまうことになったわけだ。しかし、国立競技場だけではなく、すべての会場で同じことが生じたことになる。

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インフラ劣化の記事 建築会社は工業としての農業を

 熱海の土石流災害に関連して、日本全国のインフラが耐用期間になり、今後劣化が進み、補修の必要性が出てくるが、財政難の折り非常に困難な状況にあるという記事があった。「限界目前、こうなることは分かっていた日本のインフラ」加谷 珪一 2021/07/26 06:00
 
 単にインフラの劣化だけではなく、温暖化の影響で台風被害などが大きくなり、熱海のような事例が今後多数起きる危険性を指摘している。
 日本のインフラ整備などは、日常的な生活のなかで、常に感じるところだ。インフラの代表は道路だろうが、日本には歩道のない車道がたくさんある。オレンジ線のひかれた道路から、脇にはいった住宅地の道路は、歩道がないことが多い。しかし、住宅地だから車はどんどん入ってくる。だから、歩行者と車が区分のない道路を行き交うわけである。そうした道路で何度も悲惨な事故が起きている。

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中国の宿題制限 効果があるとは思えない

 中国で、学校での宿題を制限する政策を打ち出したことが、報道されている。どれも似たようなものだが、ひとつを引用しておきたい。
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 中国政府は、義務教育にあたる小中学生の宿題の量を制限し、学習塾の設立を規制する方針を発表しました。
 中国政府は24日、小中学校での宿題の分量について、小学1年と2年生には筆記式の宿題を出さず、小学3年から6年生には1時間、中学生には1時間半を超えないようにするといった指針を発表しました。また、学習塾の新設は許可せず、既存の学習塾は非営利組織とし、運営会社の株式市場上場は禁じるとしています。
 学歴が重視され受験戦争が日本以上に過酷といわれる中国では、親が子どものためにかける教育費の増大や過度な宿題の量など、子どもへの負担が少子化の原因の一つとも指摘されていて、政府の規制強化の背景には出生率を向上させたい考えもあるとみられます。https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4322587.html
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 中国で受験が過熱するというのは、1500年近く続いていた科挙の伝統があるから、こうした制限でなくなるとは思えない。韓国でも、塾や家庭教師を禁止していた時代があったが、そのうち有名無実化し、現在では、教育産業はかなり発達しているはずである。中国でも営業としての塾が盛んだというのも、妙な話だが、長い中国の伝統から考えれば、ごく自然なことだといえる。

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