高齢者にとってのスピード

 所属している市民オケの演奏会が近づいてきて、この2日間特別強化練習だった。今回はハンス・ロットという人の交響曲1番を演奏するのが、市民オケとしては、非常に珍しいと思う。ロットについては、曲目が決まったときに、書いた。
 
 ブラームスの悲劇的序曲、ワーグナーのタンホイザー序曲、そしてハンス・ロットの交響曲を演奏する。この組み合わせは、非常に音楽史的には興味深いものだ。ロットは、まったく世に知られない作曲家だが、ここ20年くらいになって、初めて演奏されるようになってきた。作曲後100年以上経過している。それは、彼が世に出る前に気が狂ってしまい、27歳という若さで死んでしまったからだ。そのきっかけが、ブラームスにこの交響曲を見せたところ、「君は才能がないから、他の分野に進んだほうがいい」といわれたことだったとされている。ロットは、ブルックナーに高く評価されており、音楽院の後輩だったマーラーに、自分が及ばないような天才だと後世語ったほどの天才だった。22歳で書いたこの曲は、確かに、天才であることを十分に示していると思う。指揮者は、練習中、曲が未熟であることを散々述べ立てているのだが。

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国葬費用2億5千万? 30億では?

 安倍元首相の国葬問題が大きな争点になっているが、政府の対応は相変わらずだ。要するに国民を愚弄している。適当にメディアを操作すれば、やがて諦めるだろうというような感覚に違いない。だが、国葬と統一教会問題が原因となって、岸田内閣の支持率はあらゆる調査で低下しており、自民党の支持率も低下しているのが特徴だ。もっとも、野党の支持率があがらないのも、当然だと思うのが残念だが。
 
 国葬をすることにネガティブな意見は、いくつかの理由が考えられる。
・そもそも法律に規定のない「国葬」をやるのは違法ではないか。あるいは、いかがなものか。
・財政難の時期に、莫大な国費を投入してやる価値があるのか。

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読書ノート『21世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムに、政治家はネコになる』成田悠輔 SBクリエイティブ

 最近話題の成田悠輔氏のベストセラーになっている本らしい。羽鳥モーニングショーで、コメンテーターとして出ている成田氏が直接解説する形で、紹介されていた。番組は最後まで見なかったが、すぐに本を電子版で購入し、ざっと読んでみた。アマゾンでのレビュー数が700以上もあった。そんな本は滅多にないので、それだけでも驚きだ。
 本の内容は、とにかく、現在の選挙と民主主義の否定的な状況を、打開するための具体的な方策を、まったく自由な感性で提案しているものである。現時点で考えれば、本当にそういうことが可能か、また可能だとして好ましいのか、それは実はディストピアではないのか、という感想は当然おきるが、私がここで、教育制度の改革案について提起する場合でも、実現性はあまり考慮しないままに、とにかく考えられるあり方を書いている立場からすると、そういう自由な発想には共感する。実際に、当たり前になっている機械だけではなく、制度にしても、最初に考えた人がそれを公表したときには、ほとんどは、空想的なことだと思われていたに違いない。そう考えれば、ここで提起されている突飛と思われるアイデアも、やがて実現し、当たり前のことになるのかも知れない。

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珍妙なベートーヴェン交響曲全集 クルト・ザンデルリンク盤

 大分前に買って、ほとんど聴いていなかったベートーヴェンの交響曲全集がある。クルト・ザンデルリンク指揮、フィルハーモニア管弦楽団の演奏だ。5枚組で交響曲だけが入っている。たいていは余白に序曲が入っているものだが、この演奏はどれも非常にテンポが遅いので、時間的に無理だったのだろう。
 何故聴かないまま放置してしまったのかというと、最初に田園交響曲を聴いて、あまりにゆったりとして、最初は、田舎にやってきた浮き浮きした気持ちを描いたものなのに、何となく、さびれた田舎にきてしまったなあ、という感じなので、聴く気持ちにならなかったのだ。

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吉村 部活改革案は何も改善しない

 吉村大阪府知事が、部活の改革として、複数の学校でひとつの部活という案を検討するという。各種メディアで報道されているが、NHKの記事でみていこう。「大阪知事 複数の府立高校で1つの部活動運営 制度検討を指示」
 文科省は、教員の働き方改革の改善として、部活については、順次地域のクラブに移管していくことを提起している。それに対して、吉村知事は、それは、多くの財源が必要なので、絵に描いた餅ではないかとして、ひとつの学校で部活を完結させるのではなく、近隣の2校で1つの部活を運営されるような「複数校1部活制」があってもいいという意識だそうだ。記事によると、会議に出席した4人の教育委員がおおむね賛成だった。

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il bacio (イル・バッチオ)聴き比べ

 サザーランドの録音をいくつか聴いた際に、最初にサザーランドに接したイル・バッチオを聴きなおしたのをきっかけに、いくつか聴き比べてみた。youtubeにはたくさんの映像がある。そして、ピアノ伴奏とオーケストラ伴奏があり、いくつかは原曲を多少変更して、より難しくしているものもある。サザーランドはその極端な例だ。 
 イル・バッチオは、ルイージ・アルディーティというイタリア生まれの作曲家、バイオリニスト、指揮者だった人が作曲した曲で、私はこの曲以外は知らない。この曲だけで有名になっているという人だ。

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大学・研究期間の雇い止め問題 解決策の模索

 今日(8月23日)の西日本新聞に、雇い止め問題の記事が掲載されている。「「もう終わりだから」期待裏切られ…“駆け込み”雇い止め、研究職で続出」という記事だ。
 私自身が勤めていた大学でも、これは大きな問題と意識されており、有能な事務職員が、何人も雇い止めで辞めていった。全国で起きている現象だ。「同じ職場で有期雇用が一定期間を超えた場合、無期雇用を申請できるようにした。正当な理由がなければ雇わなければならない。」という規定が、2013年に施行されて以来のことだ。

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統一教会問題の解決は、単なる被害者救済ではない

 今朝羽鳥モーニングショーをみた。最近統一教会問題を再び扱うようになったが、羽鳥に限らず、テレビの扱い方は、統一教会にとってはあまり痛手にならないようなものだし、国会での野党の追求も同様だ。
 国会では、野党が自民党議員の何人かを追求しているが、ずれているとしか思えない。
 両者に共通しているのは、あくまでも個人的関係を問題にしていることだ。私からみれば、過去の関係を問題にしても仕方ないではないかと思うし、それが、将来的に関係を絶て、というのも、善処すると言われればお終いではないか。極端にいえば、国会議員にも信教の自由はあるのだから、そこを制限するようなことを求めると、それ以上の突っ込みができなくなってしまう。

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女子中学生の無差別殺人未遂

 私の記憶する限り、これまでまったくなかった事件だ。15歳(自称)の少女が、まったく見ず知らずの人を、渋谷という人々が多数いる場所で刺した。刺されたのは母と子ども(女子)で、今のところ生命に別状はないようだが、昨日のニュースでは、意識はあるという、かなり危険な状態であることを思われる表現をしていた。(最低3カ月の重傷ということだったが、娘のほうは腎臓にまで傷が達していたという。)
 前代未聞だと思っていたら、ヤフコメに、自分の近所で女性が刺した事件が、昨年だけで3件もあったという文章があった。報道されないだけで、実はたくさんあるのかも知れない。しかし、それにしても、未成年がこうした特に無差別の殺人未遂、殺人のような凶悪犯罪を起こすのは、ほとんどが男だったが、今では、女性でも起こす時代になったのか。

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自民党は売国的政党から脱却できるのか

 安倍元首相銃撃事件以来、統一教会への追求が復活し、内閣改造がなされたあとも継続している。しかし、本当に追求されなければならないことは、私から見ると等閑視され、問題が違う方向に向けられているように感じる。そういう指摘もいくつあるが、その指摘のなかでも、実は、「違う方向」「真の問題」についての見解も、ぶつかり合っているともいえる。だから、問題を整理していく必要がある。
 論点は以下の点である。
1 安倍元首相を銃撃したのは誰なのか。山上か、彼は目くらまし役なのか。
2 統一教会と自民党との関係、何が問題なのか。
3 宗教と政治の関係は、どうあるべきなのか。
 私の考えでは以上である。もちろん、統一教会の霊感商法や献金による被害者を救済することは、重要な課題だが、「これは不要だ」と、表立って主張している人は、私は見ていないので、「論点」からは外しておきたい。しかし、実は、ここに収斂させる雰囲気もあることは注意する必要がある。

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