玉川・小林・高市氏の発言への責任のとり方

 テレビ朝日の人気番組羽鳥モーニングショーのレギュラーコメンテーター玉川徹氏が、安倍元首相の国葬での菅元首相の弔辞に対する事実誤認発言で、謹慎と出勤停止となったようだ。玉川氏が、菅氏の弔辞と電通を関連つける発言をしたときには、あれ?と思った。国葬のセットが電通ではないことは、ニュースで流れていたから、なぜあんなことをいうのだろうかと思っていた。そうしたら、騒ぎがどんどん大きくなり、いまでは玉川氏の辞任要求までネットではでている。
 ただ、どうも玉川氏への攻撃には、違和感を感じるのである。まずは、玉川氏の発言を確認しておこう。
 全部ではないかも知れないが、大部分はここに掲載されている。そして、これを読む限り、皮肉まじりではあるが、国葬についても、また菅前総理の弔辞についても、感動的であったと認めている。映画の比喩でも、最初はいやいやだったが、見たらよかったというのだから、国葬について、どうせくだらないと思っていたが、仕事上見ざるをえないので見たが、けっこう感動したというわけだ。そして、その感動を生み出したのが電通だったと語ったことになる。つまり、国葬についても、電通に対しても、けなしているわけではない。もちろん、電通が国葬を仕切ったわけではないことは明確なのだから、とんでもない勘違いをしていることは事実だが、間違いを認め、謝罪しているのだから、それで済むような話だろう。電通にしても、これで怒るようなものではないに違いない。むしろ、菅氏の弔辞については、リテラがもっと痛烈な批判をしている。

 日頃の玉川氏に対する「恨み」のようなものが、これをきっかけに噴出したのだと考えるのが自然だ。かなり言いがかり的なものを感じるのだ。
 
 ちょうど時期を同じくして、今度は高市氏に関する同じような失言騒動が起こっている。
 小林貴虎三重県議がツイッターで「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析がでている」という投降し、その根拠を聞かれた氏が、高市早苗経済安全保障担当相だと答えたことに発している。そして、高市氏に対して、そういう発言をしたかどうかをメディアが確認したところ、高市氏は答を濁したとされる。
 日刊ゲンダイは、より詳細に伝えており、小林議員が統一教会に頻繁に出入りしていることなども報じている。
 
 玉川氏を攻撃しているひとたちは、この小林発言や高市氏に対しては、どのような対応をとるのだろうか。もし、公正な感覚をもっているなら、高市氏に対しても厳正な姿勢で批判をむけるべきだろう。玉川氏はすぐに過ちを認めて謝罪しているが、高市氏は事実関係を明らかにしていない。もし、絶対にそうした発言をしていないなら、明確に否定し、小林議員に厳重抗議をするはずである。それをしないのは、実際に、国葬反対は大陸のひとたちが8割で、それは政府の調査による、と発言したのだろう。本当にそうした調査があり、事実そのような調査結果になっているのならば、そのように答えればよい。しかし、政府はそんな調査はしていないとだけ答えていて、自分の発言については答を濁したということは、政府がしてもいない調査をデッチあげて、そうした発言を講演で行ったということになる。玉川氏は単純な勘違いだったと思うが、もし、この推論があたっているなら、高市氏は、勘違いではなく、意図的に嘘をついたことになる。しかも、高市氏は大臣だ。
 
 ここまで書いて用事で外出し、帰宅したら、小林議員が記者会見して、ツイッターを訂正するという趣旨で始めたのが、どうやら会見室にいた自民党関係者からの指示で、訂正ではなく、「撤回」にした。そして、あとは何を聞かれても、「差し控えたい」の連続で、自ら開いた記者会見なのに、何も説明しないという醜態をさらした。そして、説明できないのは、非公開の講演の内容だから、というのだが、その非公開の講演会での高市氏の発言内容を、自分でツイッターに書き込んだわけだ。その矛盾については説明していないが、自分のメモが間違っていたということらしい。講演を聞いていて、内容を正しくメモもとれない人物が、県議をしているというのも、三重県は大丈夫なのかと心配になる。以下に詳しいやりとりが紹介されているので、実際に見てほしい。
 
 このふたつの事例をみて感じることは、玉川氏は軽率なミスをしたが、そのミスを認めて謝罪をしている。そして、そのことで彼の勘違いの内容が明確になり、正確に訂正された。
 しかし、小林県議は、訂正したり、撤回しており、高市氏は、すべてをあいまいにしたままであり、何も説明していない。この3人をみれば、玉川氏が誠実であり、小林、高市氏が実にいいかげんな人物であるという印象にならざるをえない。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です