19世紀から20世紀にかけて、植民地を拡大する帝国主義的政策が、先進国では通常だった。日本のような後進資本主義国家も、遅れてはならじと台湾、朝鮮、満洲へと植民地を求めていった。しかし、現在、植民地だったところは、ほとんどすべてが独立している。そして、植民地経営が、本国にとっても、利益をもたらしていたのか、冷静に検証すようになった。
おそらく、植民地を獲得するようになる当初は、産業がまだ農業中心で、本国では困難な農産物の獲得や、農業そのものを、本国に都合のよいように転換させてしまうこと、そして、租税をとること、自国のための戦争に植民地人を兵隊として駆りだすことなど、いくつもの利点があったことは間違いない。
しかし、他方、もちろん、本国や植民地によって、事情は異なるだろうが、大方は、植民地獲得のための戦争、そして反乱を抑えるための治安、植民地統治のために派遣する役人の費用等々、大きなコストがかかっていた。長い目でみれば、植民地は、本国にとって赤字だったのではないだろうか。既にこのことは、戦前ですら、石橋湛山や矢内原忠雄によって指摘されていたことだが、戦後は多くの人が認識するようになった。