世の中で起こっていることを、つまり同じ事態を見ていても、極端にいえば、そこに重大な問題を感じる人もいるし、また、見ていないと同じような感覚しかもたない人もいる。それは、その人の価値観によるものなのだろうか。現在、世論が分かれている国葬にしても、国葬に何を見るか、それをどう解釈するか、人によってまったく異なった結論が出てくる。
そうしたことを考えながら、最近読んだ文章で、対照的な意味で興味深かったのは、岩田明子「安倍晋三秘録1 暗殺前夜の電話」(『文藝春秋』2022.10)と中村敦夫氏へのインタビュー記事「旧統一教会追い50年、中村敦夫さん「安倍氏への忖度で右往左往」」(朝日デジタル2022.9.18)だ。岩田氏は、有名な安倍晋三番の記者で、強固な安倍支持者だった。しかし、安倍氏が暗殺され、その後統一教会との癒着が暴かれるようになり、NHKも辞めて、しばらく表舞台に出てこなかったが、『文藝春秋』に、安倍追悼のような文章を寄せた。暗殺の前日の夜に、安倍氏と電話で話したという内容が中心だ。