小学館の『週刊ポスト』9.13号の韓国特集を読んでみた。吊り広告をみて、流石に買う気がしなかったのだが、T-Magazine に週刊ポストが入っているので、早速加入して、そこで読んだ次第。「韓国は要らない」というような刺激的な見出しがついているので、何人かの常連寄稿者が、執筆拒否を宣言したことで騒がれた。二回連続の韓国特集で、第一回が「韓国要らない」で、ふたつの記事からなる。第一は「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という題で、日韓両国のメリット・デメリットを徹底調査するという記事になっている。
しかし、すべてが日本が得するという内容で、
・GSOMIA破棄なら半島が危機になり、ソウルが金正恩に占領される悪夢となる
・サムスンのスマホ、LGのテレビ、現代の自動車が作れなくなる
・東京オリンピックボイコットなら、日本のメダルは2桁増
・韓国人旅行客が日本で使うお金は米中の3分の1。だから、たいした損ではない
・韓流グループは、日本市場がないと食べていけない
という見出しで、説明文がつくが、確かにそうだと思うのは、オリンピックを韓国がボイコットすれば、それは日本のメダルが増えるということくらいで、他の記事は、あまりに日本を買いかぶり、韓国の力を過小評価しているように思えてならない。 “『週刊ポスト』韓国特集 嫌韓を煽っているようには思えない” の続きを読む
カテゴリー: 時事問題
ポピュリズム政党の教育政策(2)
オランダ
オランダの自由党(Partij voor de Vrijheid)をみてみよう。
オランダは、長い間、移民政策の優等生と言われ、移民に対する寛容政策が最もうまくいっていると考えられてきたが、2001年の911同時多発テロで空気が一挙にかわる。労働党の論客だったフォルタインが移民への制限を訴える主張をひっさげて、フォルタイン党を結成、2002年の総選挙に挑戦した。選挙の1週間前に暗殺されてしまうのであるが、第二党となったフォルタイン党は入閣した。その直後にオランダに一年の海外留学にいった私は、その当時の政治的混乱をつぶさにみることになったが、フォルタインの人気はかなり大きなものだった。モスクやイスラム学校への暴力的介入などがおき、次第に、社会の反移民的雰囲気も少しずつ強くなっていった。そういうなか、EUへの懐疑も大きくなり、オランダでは、2005年のEU憲法を国民投票で意志を問うことになり、60%が否定し、結局、EU憲法は成立しないことになった。その反対運動の先頭にたったのが、ウィルダースで、自由党を結成し、今では有力な政党として、オランダ政治に大きな影響をあたえている。 “ポピュリズム政党の教育政策(2)” の続きを読む
ポピュリズム政党の教育政策(1)
メディアでは、最近のポピュリズム政党を「極右」と位置づけて報道しているが、それはあまり適切ではない。「極右」とは何かという問題もあるが、常識的には、ネオナチやKKKのように、激しい差別感情をもって、対象を暴力をもって攻撃するような団体と考えるべきだろう。現在でも、そうした「極右」は存在しており、やはり、主要なポピュリズム政党とは区別すべきものである。本来、国民の人気とり政策をするのをポピュリズムというのだから、政治的潮流は多様である。故チャベスのような、あきらかな左翼ポピュリスト政治家もいるのである。現在問題となるポピュリズム政党は、得に欧米では、ほとんどが、「移民政策」への反対を軸にしている。程度の差はあるが、イスラム教徒の流入に反対し、イスラム教徒がその国の価値を受け入れることを条件づけることで一致している。特に、その国の言語を習得することを重視する。そういう意味では、教育が重要な意味をもっているのであるが、実は、ポピュリズム政党の政策のなかで、教育政策はあまり重要な位置を占めていない。しかし、移民問題の現われている場のひとつが学校なのだから、教育政策が彼らの移民政策と合致していなければ、彼らの政策は実現しようがないはずである。 “ポピュリズム政党の教育政策(1)” の続きを読む
オリンピックで心配なこと 駆り出される子ども
私は東京オリンピックには反対であったし、他にもっているブログでも何度か書いてきた。今でもその気持ちは変わっていない。とにかく、嘘で固めた理由で招致を成功させたことは、否定しようがない。そのなかでも、実際に大きな弊害として、さすがに賛成のひとたちからも危惧されているのが、暑さである。
私は、前回の1964年の東京オリンピックのとき高校生だった。だから、当時のことはよく憶えている。長く10月10日が「体育の日」だったが、それは東京オリンピックの開会式の日だったわけである。現在その日は年によって異なることになってしまったが、10月に行われたのは、通常の開催月である8月は暑いからにほかならなかった。だから、温暖でかつ雨が少ない時期として10月が選ばれたのである。 “オリンピックで心配なこと 駆り出される子ども” の続きを読む
最近の韓国騒動で思うこと
結論からいえば、日本はなんてだらしない国家になったのだろう、ということだ。今回の騒動の発端は、よく言われているように徴用工に関する韓国の最高裁判決という前提で考える。長い歴史があるから、その判決もひとつの展開点に過ぎないわけだが。
完全かつ最終的解決とは
徴用工判決については、私も大方不当だと思っている。しかし、100%日本が正しいとは思っていない。日本の報道では簡単に言葉だけで済まされている1965年の日韓条約の「 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」には、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」と書いてある。これが、「完全かつ最終的」の根拠であるが、この協定そのものには書かれていないのだが、議事録(当時は公開されなかったが、大分たってから公開された。)に、韓国人への個人補償は、日本からの支払いのなかから、韓国政府が行うという確認があるわけである。しかし、それは正式な条文には書かれていない。双方が確認したのに何故条文に盛り込まなかったのかはわからない。おそらく、韓国政府は、個人補償に使う気はなかったのだろう。実際に、極めてわずかしか個人補償にはまわさず、経済発展のための投資に資金をまわしたのである。 “最近の韓国騒動で思うこと” の続きを読む
いじめでの教師懲戒が再び問題になっているが(2) 親の対応
前回は、学校での検証作業こそ大事であり、それを実行するための条件について書いた。今回は、親に関して書く。
天童市の事例に限らず、いじめによる大きな被害があったとき、「学校がもっと真剣に対応してくれれば、こんなことにはならなかった」と被害者の家族は述べる。天童市の事例でも、そのような発言がしばしば紹介されている。このように発言することは、間違いではないし、確かに、学校がもっと真剣に対応すれば、悲劇はもっと減るだろう。しかし、悲劇を避ける手段を、最も確実にとりうるのは、親なのである。このことは間違いない。
ハンナ・アレントの場合
20世紀後半の最も偉大な政治哲学者であるハンナ・アレントは、ユダヤ人であるために、学校で日常的な差別にあっていた。当時のユダヤ人差別は、今のいじめより、はるかに酷いものだった。そのとき、アレントの母親は、学校に適切な対応を求め、それが実質的にとられない限り、娘を学校に行かせないという対応をとった。そのために、学校は真剣な対応をとらざるをえなくなり、アレントは再び通学できるようになったのであるが、このときの母親のとった行動が、アレントが教育問題について考える基本になっている。「リトルロックについて考える」という短い文章のなかで、「子どもはまず何よりも家族と家庭に属する存在である」と書いている。 “いじめでの教師懲戒が再び問題になっているが(2) 親の対応” の続きを読む
いじめでの教師懲戒がふたたび懸案になっているが、必要なのは当事者たちによる真摯な検証だ
昨年の12月に、「いじめ防止対策推進法」の改正案として、いじめの疑いを把握しながら放置した場合、その教師を懲戒処分にするという提案がなされ、多くの反対によって、とりあえず提案としては取り下げられた形になっているが、ふたたび、懲戒規定を設けるべきであるという動きがあると報道されている。この問題について、以前にも書いたが、新しい動きということで、再度検討したい。新たな動きといっても、論点そのものはそれほど変わっていないだろう。
懲戒処分の推進を主張しているひと達(「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」)が、高く評価する懲戒事例がある。
いじめを受けて大怪我をした中学一年の男子を病院に連れて行く教師に対して、顧問が「階段で転んだことにしろ」と隠蔽の指示をしたという。被害生徒自身がそれを聞いていたので、自分もそのように病院で述べ、全治1カ月との診断だった。ところが、副顧問が、学校側に「いじめによるけがだった。教諭から虚偽の説明を指示された」と報告したために、顧問の指示はすぐにばれてしまい、大会への出場を禁じたが、顧問はこれを無視して出場させた。加害者たちは、以前にも下級生に対するいじめや暴力をしていたことが判明していた。この顧問の教諭が停職6カ月の処分を受けたということである。 “いじめでの教師懲戒がふたたび懸案になっているが、必要なのは当事者たちによる真摯な検証だ” の続きを読む
安倍内閣の外交音痴
日韓の対立がますます激化しているが、日本政府の予想を超えて、韓国が、日韓軍事情報包括保護協定を破棄する決定をして、日本政府は衝撃を受けていると報道されている。佐藤正久外務副大臣は、BSフジの番組で、「愚かだ。間違った判断だ。安全保障環境を考えればありえない。」と韓国を厳しく批判したそうだ。(時事通信2019.8.22)
しかし、韓国による徴用工判決以来の安倍内閣のやり方をみていると、まるで生徒会のようだと感じる者は少なくないのではないか。安倍首相は、外交が得意だと自分たちでは宣伝しているが、私の見る限り、外交が最も苦手な首相である。内閣としても、外交は極めてお粗末というべきだろう。 “安倍内閣の外交音痴” の続きを読む
今日は日航ジャンボ機事故の日だが
34年前の今日、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落した。その年は、私が大学に就職した年で、初めての講義などの準備で忙しかったせいか、細目は憶えていないのだが、とにかく大事故だったし、有名人が多く犠牲になったり、また、生存者がいたりということで、ずっと話題になっていた。しかし、肝心の事故原因については、当時から既に公表されたことについては、多くの疑問があり、しかも、今日まできちんと明らかにされたことがない。事故当日から既に、さまざまな疑問が投げかけられ、政府も、日航も、またボーイング社も、まともな調査とその公表をしたとは、考えられていない。 “今日は日航ジャンボ機事故の日だが” の続きを読む
ドイツの自転車道事情
Der Tagesspiegel(2019.7.20)が、ベルリンの自転車道問題を扱っている。(Mit dem Rad gegen die Wand 自転車で壁に)日本でも、自転車はかなり問題になっている。日本では、どこを走るのか、歩道になったり、車道になったり時代によって変わってしまう。また、歩道がないときに、右側通行なのか左側通行なのか。これも時代によって変化したと思う。私は、自転車には乗らなくなったが、車を運転しているときには、自転車にはかなり気をつかう。逆に歩行者として、危ない目にあったこともある。歩道を歩いていたら、角になっているところを、猛スピードで走ってきた自転車に危うくぶつかりそうになった。ぶつかったら大怪我をしていたろう。最近では、自転車とぶつかっての死亡事故もある。
肝心の法律が変わるというのは、本当に問題だ。一番気をつけてルールを学んだときの感覚が、ルールが変わっても引きずられるからだ。 “ドイツの自転車道事情” の続きを読む