読書ノート『プーチン 内政的考察』木村汎 まとまったプーチン情報を得たいと思い、県立図書館にあったこの著書を借りてきた。A5版600ページもある大著で、まだ全部は読んでいないが、前半を読んで考えたことを書いておきたい。 プーチン4部作の2作目ということで、他の著作も読んでみる必要があると思うが、内政を扱ったこの著作を読むと、筆者がウクライナ侵攻をこの時点(2016年出版)で予想していたのではないかと思われるほどであり、かつ、現在の進行状況が、ここで書かれているプーチン像にぴったり重なってくる。 “読書ノート『プーチン 内政的考察』木村汎” の続きを読む
ここまで洗脳は可能なのか あるロシア人の発言 ウクライナ情勢は、驚きの連続だが、そのなかでも特に印象的だったのは、あるウクライナの青年が、ロシアにいる父親に電話をしたときの会話だ。テレビの番組だったので、詳細は覚えていないのだが、ウクライナの青年が、ウクライナの状況を父親に訴え、ぜひ、この状況をまわりの人に伝えてほしいと懇願したところ、父親は、ロシア軍がウクライナにいっているのは、ウクライナのナチ政権の支配から、ウクライナを解放するためで、ロシア軍はなんらウクライナ人に迷惑などかけていない、と言い張り、なんど青年が実際には、違うと説明しても、まったく聞く耳を持たなかったというのだ。また、ウクライナで医師をやっているが、現在は避難者たちの援助をしている女性が、ロシアにいる姉に電話したところ、姉が、ウクライナにいるナチから守るためにロシアは頑張っているのだから、あなたも、ロシア兵に協力しないと大変なことになる、といって、こちらも、いくら説明して、惨状を訴えても聞かなかったので、「地獄に落ちろ」といって電話をきったとBBCで語っていた。 “ここまで洗脳は可能なのか あるロシア人の発言” の続きを読む
ウクライナ侵攻への対応に関する疑問 ロシアの常軌を逸した侵攻については、心底怒りを感じるた。プーチンは、ウクライナの非ナチ化のために侵攻したと言っているそうだが、プーチンがヒトラー化しているというのが、事実に近い。ウクライナに対する無差別攻撃(民間人や民間住宅への攻撃)、ロシア国内における完全な言論統制、政権に対する批判を刑事罰にする法の制定。これらは、ナチズムに該当する。これらについては、今更述べる必要もないだろう。 それに対する欧米側の対応にも、疑問を感じる点が少なくない。直接関係しないところにいる素人の見解に過ぎないのだが。反省的な意味をこめて、やはり、こちらについて考えたい。 “ウクライナ侵攻への対応に関する疑問” の続きを読む
ウクライナは人の住めない地域になるのか 3月8日の配信のなかで、ふたつが、ウクライナを人か住めない状況にしてしまうことを、プーチンが意図しているのではないかという見解を述べている。 ひとつは高橋洋一氏であり、「狂人プーチンの原発攻撃は恐ろしい未来を迎える危険が」と題されている。 https://www.youtube.com/watch?v=DDJd2Vqqpiw もちろん、高橋氏は、そういうことは起きないことを強く望むという断りをいれているが、簡潔にまとめると、プーチンはウクライナの原発の施設を抑えようとしている。表向きの理由は、ウクライナが核開発をしているというデッチあげをして、ウクライナ非難とロシアの侵攻の正当化だが、プーチンの最大の目標は、ウクライナの非武装中立だから、それを文字通り実現しようということだ。もちろん、ロシアに従順な傀儡政権ができればそれに越したことはないのだろうが、傀儡政権が望めない場合には、特にウクライナ中部にある原発の管理を放置してしまう。そうすると、2,3日内にメルトダウン、そして、チェルノブイリで起きたような爆発が起きる。そうすると、ウクライナは人が住めない地域となり、非武装中立が実現するというのだ。そして、高橋氏のジョージア(旧グルジア)人の友人に、その話をしたところ、プーチンならやりかねないと、同意されたというのである。 “ウクライナは人の住めない地域になるのか” の続きを読む
ロシアは日本を攻めるのか ウクライナ-ロシア関係と日本 ウクライナ情勢の進展とともに、日本での防衛問題について、反射的に、増強しなければならないとの主張がネットでは増えている。しかし、それらの意見の状況認識は、極めてお粗末であるといわざるをえない。ウクライナにロシアが侵攻したのだから、日本にだって攻めてくる、だから、それに対応するために軍備を増強すべきだというわけだ。ちなみに日本は、核はもっていないが、軍事力としては、国際的には上位にあるとされており(実戦をしたことがないので、本当の実力はわからないが、日本人の軍隊だから、敵に怖じ気づいて戦意喪失などということは、ないと信じる。)、しかも、アメリカとの軍事協力があるのだから、ロシアがそんなに簡単に侵攻してくるとは考えられない。本当にそういう事態が生じたとしたら、日本の政府が余程挑発的なことをしてしまうか、あるいは相手の挑発に乗ってしまうという失策によるものだろう。実際に、太平洋戦争に日本が突入したのは、アメリカの挑発的政策に引き込まれてしまった側面がある。日本の当時の政治家たちが、本当に冷静に考えて行動していれば、アメリカの挑発にひっかかることを、なんとしても回避したに違いない。 “ロシアは日本を攻めるのか ウクライナ-ロシア関係と日本” の続きを読む
ウクライナ考 義勇兵・ロシア正教 現時点でまだ混沌としている。いくつかの議論が起きていることについて、考えてみたい。 第一に、ゼレンスキー大統領が、国際義勇兵を組織し、各国に義勇兵の派遣を要請したことである。日本でも、報道によると、70名ほどの応募があり、大半は退役自衛隊員だという。今のところ、政府は派遣に消極的であり、ネットでの議論でも、そうした行為は国内法に違反するという反対論や、困っているウクライナを助けるべきだという賛成論がある。政府が最も心配しているのは、政府として、義勇兵を派遣することを承認すれば、ロシアに宣戦布告したと受け取られかねないということのようだ。 “ウクライナ考 義勇兵・ロシア正教” の続きを読む
プーチン体制は継続できるのか ロシアのウクライナ侵攻が、長引けば、プーチン体制の危機となることは、十分に予想される。まず最初の目安は、侵攻後1週間だろう。2月24日に侵攻が開始されたから、3月3日に、キエフを支配下におき、ウクライナが降伏的な交渉に応じるようになっていれば、侵攻は成功したといえるかも知れない。しかし、プーチンにとっては残念なことに、かなりの予想が外れ、厳しい状態になる可能性が強い。 端的にいって、かなり早い時期に、ロシア国内での反プーチン勢力が強くなり、プーチン体制は崩壊するのではないだろうか、と期待をもって予想しておきたい。 ロシアのプーチン体制は磐石で、しかも、強権的で敵を打ちのめしてきたから、そんな簡単に、体制など崩れないと考える人も多いかも知れない。しかし、30年前に、かくも磐石だと思われていたソビエトが、体制ごと転覆したのであり、それは市民の運動が大きな力を発揮したのである。民衆の運動で、あの共産党体制が崩壊するということは、一部の専門家はさておき、一般的にはまったく予想されていなかった。 “プーチン体制は継続できるのか” の続きを読む
9条廃止論が過熱してきたが プーチンのウクライナ侵攻後、にわかに9条廃止論が再燃している。議論は、これまでと変わりはない。しかし、逆に、ウクライナ侵攻を受けて、9条は維持すべきだという認識が、私は強くなっている。 プーチンのような指導者が、日本に攻めてきたら、9条で対抗できるのか、と廃止論はいうのだが。例えば、産経の記事だ。 「自民党の細野豪志元環境相も「論ずべきは、憲法9条があれば日本はウクライナのように他国から攻められることはないのかということ。残念ながら答えはノーだ」と発信。」 https://www.sankei.com/article/20220225-VBJ5AZA6UFPLVALR6WQEO7F2UU/?outputType=amp 「日本共産党が、あわてて9条擁護をしたために、それに反応した言葉」ということらしい。共産党の主張は、どのようなものか、詳しくは知らないが、少なくとも細野氏は、勘違いしている。 “9条廃止論が過熱してきたが” の続きを読む
ウクライナ情勢が音楽にも影響 ウクライナへのロシアの侵攻は、強く非難されるべきものだが、それが音楽の分野にまで及んでいることについては、疑問と言わざるをえない。 https://m-festival.biz/28702「ミラノ市長がスカラ座にゲルギエフの解任を要求、ロシアのウクライナ進行で」と題する記事によると、ゲルギエフが、ウクライナ侵攻を否定する声明をださない限り、スカラ座で予定されているチャイコフスキー「スペードの女王」の新演出上演の指揮を解任するように、要求したというわけだ。既に、ウィーン・フィルのニューヨーク・カーネギーホールでの公演は、ホールとオーケストラによって、既に降板が決められているという。 これがゲルギエフだけのことなのか、ロシア人芸術家に対して広く行われる「拒否」なのかは、この記事だけではわからないが、率直にいって、こうしたやり方は疑問だ。思い出すのは、エルシステマで有名な、ドゥダメルとシモンボリバル・オーケストラが、毎年行っているベネズエラ大統領を招いての演奏会を、ボイコットするように、マドゥロー大統領を批判する政治勢力が要求し、激しいデモなどをしたことだ。当時の大統領はマドゥローで、チャベスの後継者だった。チャベス以降社会主義政策をとって、反米だったから、親米勢力が、反政府運動をしていたという背景がある。しかし、エルシステマは、1970年代後半から始まり、チャベス大統領の以前、つまり、親米で新自由主義的な政府が育て、それを更に発展させたのがチャベスだった。しかも、エルシステマは莫大な国家予算に支えられていたから、歴代大統領への感謝演奏会はずっと以前から行われており、マドゥローだからやったわけではない。にもかかわらず、親米勢力は、マドゥローは独裁者だからという理由で、ドゥダメルに対して、指揮を拒否せよと迫った。これは、いかにも不合理な要求であり、ドゥダメルは音楽を政治利用していると非難していた彼らのほうが、ずっと音楽を政治利用していたというべきなのだ。 “ウクライナ情勢が音楽にも影響” の続きを読む
ウクライナ 今後の進展 前回、ロシアが被ってきた被侵略の歴史を理解しておく必要があることを書いたが、別の歴史の理解も必要である。それは、戦後、大国が小国に侵攻して、勢力下におこうとして成功した事例は、ほとんどないということだ。代表的には、アメリカのベトナム、アフガニスタン、イラク、ソ連のアフガニスタンなどが代表的な失敗事例といえる。今回の当事者がロシアである点でも、ソ連のアフガニスタン侵攻を思い出しておく必要がある。 アフガニスタンで、社会主義政権が成立したが、そのうち内部分裂が起こり、大統領タラキと副のアミンとの対立が激化、ソ連に忠実だったタラキが暗殺され、ソ連が軍事侵攻し、アミンを殺害、その後泥沼化し、アルカイダなどのテロリストが勃興、そして、タリバン政権となる。ソ連は敗北し、そのままソ連崩壊へと突き進むことになった。アフガニスタン侵攻については、ソ連中枢内部でも反対論も強く、激論が交わされたようだ。タラキは、強くソ連軍の出撃を要請していたから、殺害されていたとはいえ、アフガニスタン大統領の要請に応えて侵攻したという「形」をとっている。 “ウクライナ 今後の進展” の続きを読む