報道によれば、札幌市議会は、2030年冬季五輪の招致を可決したという。
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札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックについて、札幌市議会は30日の本会議で招致を支持する決議案を可決した。決議案は自民党、民主党・市民連合、公明党が共同で提出し、賛成多数で可決された。共産党、市民ネットワーク北海道は反対した。(朝日新聞2022.3.30)
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また、事前に行われたアンケートでは、約56%が賛成、約40%が反対だったという。しかし、世論調査には疑問もでていて、「そんな調査やっていたのか?」という意見や、新聞社の調査では、反対が多かったからか、公表後すぐに削除されたとか、賛成派にとって不都合な事実が、いろいろと語られてい。
このことで、思い出すのは、荒川恭啓がやっていたラジオ番組で、東京五輪招致についての意見を求めたところ、圧倒的に反対が多くなった。もちろん、いくら政府に批判的な見解を述べることが多かった番組でも、オリンピック招致は、メディアとして実現したいというニュアンスで伝えていたのだが、この結果を伝えざるをえなくて、結果のみ発表したのだが、いかにも不快そうな感じで、そのあとすぐに別の話題にふってしまった。番組内で意見聴取をするなら、もっとちゃんと扱うべきではないかと思ったが、メディアってこうなのかと思ったものだ。
今回の札幌オリンピック招致のアンケートにしても、どのような質問項目だったのか。NHKが行い、NHKのホームページでの、結果だけの公表だから、詳しいことはわからないが、単純に意見を聞いているものだという印象だ。しかし、本当にきちんと市民の意見を調査するためには、どのくらいの費用がかかり、どの程度の収益が見込め、現在の市の財政事情、他の市との協力関係の進展など、状況を説明した上での調査が必要だろう。数は少なくともよいが、単純に賛否だけ聞いても意味はない。事前に、経済効果があるとか、勇気を与えられるとか宣伝しておいて、そのあと調査をすれば、あいまいなひとたちは賛成意見にする人が多いのは、十分に推測できる。それでも、40%が反対であることは、むしろ賛成が少ないというべきだろう。北海道新聞の社説も、もっと十分に議論をすべきであると主張している。
札幌五輪はもちろん招致計画が進んでいる段階だから、私自身、あまり詳しく内情を知ることができないので、その点については、以下の記事を参照してほしい。
山田順「IOCだけが高笑い!札幌冬季五輪招致という「世紀の愚行」が日本の後進国転落を加速させる!」
非常に詳細な数値を踏まえた、招致批判である。私には、とくに異論をさしはさむ余地はない。
山田氏の指摘をひとつだけとりあげれば、札幌五輪を開けば、確実に莫大な財政赤字を札幌市が抱え込むということである。東京オリンピックの準備段階でも散々いわれたが、IOCは様々な要求をする。今回の北京では、温暖化対策を相当求められたそうで、そのために、北京近郊に太陽光パネルを乱立させざるをえなかったとか。東京の場合には、競技場施設の拡張工事、あるいはそれが不可能なら新設という形で表れた。先の東京オリンピックで使われた施設は、現在IOCが要求する条件に合わないからだ。
結局、アメリカのような超大国で可能な基準を、開催国に押しつけるので、必ず膨大な赤字を抱え込む構造になっている。しかし、赤字は、特定の団体に資金が流れ込むことを意味しているから、利益を得る団体もある。IOCが最大なのだが、そういう組織・団体が、自己の利益をえるために、市民の税金を使おうとするのが、オリンピックなのである。
もう少し、そもそもオリンピックをどう考えるかということを、東京オリンピックを材料に考えてみたい。
東京オリンピックの最終決算はまだ出ていないが、昨年12月時点での簡単な決算がでている。それによれば、経費が予想より減って、赤字が出ていないような数値になっているが、それは、経費とか収入の考えによるもので、私の感覚からすれは、膨大な赤字がでていることになる。
それは、国や都の税金をどのように理解するかによるだろう。また、明らかにされているのは、あくまでも組織委員会が関わった収支であって、それ以外のオリンピック選手の強化費用というようなものは、ここには掲載されていない。
そもそも、オリンピックが現在のようなプロ中心で、商業的な色彩を強め、大がかりなイベントになったのは、ロサンゼルス大会からだといわれている。それまでは、オリンピックは開催都市の事業で、必要経費は都市がだしていた。もちろん、スポンサーとか入場料、放映権料などはあったろうが、基本的に開催都市が財政を支えることが原則だった。1964年の東京オリンピックもそうだった。その代わり、現在に比べればかなり質素に行われていたのである。それが、ロサンゼルス大会では、スポンサー料などを広範囲、高額にとり、また、アメリカのテレビ放映などの収入も加えて、大会としての収入で黒字になったといわれている。つまり、オリンピックが儲かるイベントになったわけである。そして、その勢いで大会はどんどん大規模になり、東京オリンピックに関しても、以前の施設は、規格に達していないということで、改築が必要になったものが多数あるはずだ。大規模になるに従って、かかる経費も大きくなった。アメリカのような経済大国であれば、商業的にペイすることがあっても、そのほかの国では、やはり、開催都市の財政負担が生じることになる。
形がロスアンゼルス大会を引き継いでいるのだから、それを財政的にも標準とすれば、国や都市が出す税金部分は、「赤字」補填と考えるべきである。それが私の考えだ。だから、今回の東京オリンピックでは、組織委員会は、国と東京都の出す費用を、「当然の収入」として扱っているが、私だけではなく、「赤字」なのだと思うひとが多いはずである。もちろん、いろいろな行事に国や自治体が協賛し、財政的な助成を行うことはあるが、それはわずかな額であることが多い。オリンピックのような、兆に達するような援助はない。つまり、それだけ異常なイベントなのである。
国家財政が厳しい折り、こうした多大な公費出費が必要なイベントは、ほとんどの国は引き受けることかできない状況になっている。つまり、現在のようなオリンピック開催は、次第に不可能になっていると認識すべきで、多くのひとが主張しているような、「開催国固定」にするか、廃止するかだろう。開催国固定となれば、オリンピックは当然ギリシャになる。そして、参加国は必要な費用を分担してギリシャに援助すればよい。ギリシャの負担もほぼなくなるし、また、参加国もかなり小さな負担で済む。施設は毎回利用するのだから、無駄になることもない。