トランプが1セント硬貨の廃止を主張していることが、波紋を呼んでいる。具体的にどのように廃止するのかが明確ではないが、日本でも1円硬貨は廃止すべきだと思っている。ただし、廃止後のありかたが問題である。
私が1992年から1年オランダに滞在したときに、実は、オランダでは1セント硬貨が廃止されていた。ただ、その後ユーロ貨幣がだされた段階で、その方式も終わりになり、現在ユーロでは1セント硬貨があるはずだ。
オランダにいったとき、1セント硬貨がないことなどまったく知らなかったのだが、最初に変だとおもったのは、値札でたとえば13セントの買い物をしたのに、あるべきおつりがなかったからである。聞いてもそのときにはよく理解できなかったのだが、あとで近所の住民にきくと、要するに、1セント硬貨を廃止して、お釣りの計算方式が変わったのだという。
商品には、通常のように、一桁のセントの値段がついている。しかし、通常まとめて買うわけだから、その際に値段の合計の計算をそのまま足すのではなく、
・1、2セントは0
・3~7セントは5セント
・8、9セントは10セントとして計算するのだ。
だから、8セントの商品を買えば、それは10セントとられることになるのだが、5個買えば、50セントではなく、40セントなのである。また、7セントの商品では、1個では5セントになり、5個だと35セントだ。これは1個1個買ったほうがとくになる。
つまり、当時のオランダでは、同じ商品を買う場合でも、どのような個数にするととくになり、あるいは損するのか、ということを、よく考えなければならないわけだ。面倒だといえば面倒だが、買い方によって、実際の値段より安くなるのだから、当然真剣に考えるわけである。しかも、1セントよりも生産コストがかかる硬貨などかなり無駄だから、そうした無駄も省いていた。
このやり方は、ユーロになっても踏襲すべきだと思っていたが、踏襲しなかったのは残念だ。
さて、1円硬貨を廃止して、当然予想される値段設定は、1~4円は5円に、6から9円は10円にしてしまう可能性が高い。つまり実質的な値上げである。こうしたことは、させさせねばならない。むしろ、政治家は、こうした値上げを合理化することを許容することで、財界の支持をえようとしている可能性がある。