札幌五輪は招致すべきではない

 にわかにオリンピック疑獄の捜査ともいうべき事態が進展している。このブログを読んでいる人には、周知のことだが、私は、原理的オリンピック反対派である。オリンピックという国際競技大会は、少なくとも現在の形では存続すべきではないという立場だ。存続するとしたら、大きく形を変える必要がある。
 それはさておき、オリンピック疑獄は、どこまでいくのか。そして、これどのように受けとめるべきなのか。
 オリンピックは、近年のほとんどの大会がそうだと思うが、利権集団によって運営されている。そして、かなりの部分は、批判的論者によって指摘されているから、なんとなく理解はされている。オリンピックは、国民に勇気を与えるなどと自己礼賛しているが、実態は、各種利権集団によって、利権獲得競争が行われているわけだ。競技だけに限定すれば、「感動」もたくさんあるだろうが、オリンピックという全体の構造は、感動を生み出すことが、主要な目的とは思えない代物である。そこに初めて捜査のメスが入った。

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吉村 部活改革案は何も改善しない

 吉村大阪府知事が、部活の改革として、複数の学校でひとつの部活という案を検討するという。各種メディアで報道されているが、NHKの記事でみていこう。「大阪知事 複数の府立高校で1つの部活動運営 制度検討を指示」
 文科省は、教員の働き方改革の改善として、部活については、順次地域のクラブに移管していくことを提起している。それに対して、吉村知事は、それは、多くの財源が必要なので、絵に描いた餅ではないかとして、ひとつの学校で部活を完結させるのではなく、近隣の2校で1つの部活を運営されるような「複数校1部活制」があってもいいという意識だそうだ。記事によると、会議に出席した4人の教育委員がおおむね賛成だった。

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河瀨直美監督「東京オリンピック」映画を見た けっこうお薦め

 私は、普段からほとんど映画を見ないし、オリンピック反対派なので、河瀨直美監督の東京オリンピックの映画を見るつもりはまったくなかったが、ふたつのきっかけで、見ることにした。
 ひとつは、「ぼのぼの」氏のツイッター、https://twitter.com/masato009/status/1533376068325089280?t=RI4JubVwUNp2lNREtlgOvw&s=19
もうひとつは、一月万冊での紹介だった。ぼのぼの氏は、公式映画であるにもかかわらず、オリンピック批判の姿勢をもった映画で、体制べったりの映画ではない、という評価だった。それに対して、一月万冊の本間龍氏は、オリンピックの構成がない、単なる逸話の羅列で、まったく面白くないという評価だった。近所でやっているし、見る価値はありそうだと思ったわけだ。それにしても、人気がないようで、本間氏が見たときには、観客は本間氏をいれて2名だったそうだ。私が見たときには、5名だった。映画館が気の毒になるような人数だ。

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ウィンブルドン大会でのロシア・ベラルーシ選手の排除は

 ウィンブルドンが、今年の大会にロシアとベラルーシの選手が参加することを拒否する決定をした。これに対して、男女のプロテニス協会がそれぞれ批判をして、対抗措置を公表している。一般のひとたちも、またテニス選手の間でも、意見は大きく割れている。非常に難しい問題なので、考えがなかなかまとまらなかった。
 
 他の大会では、これほど明確に排除をしていないから、「国籍による差別である」「スポーツを政治利用している」という批判が、とくにテニス選手から寄せられている。
 しかし、スポーツの政治利用という批判は、あまりあたらない。むしろロシアが、スポーツを政治利用していることの方が顕著であり、ロシアの国家的なスポーツの政治利用を防ぐという意味は、十分に認められると思う。「国籍による差別だ」というのは、確かにその通りだろう。おそらく、ウィンブルドン主催者としては、そうした非難は十分に考慮した上での結論だと思われる。

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プロ野球中継、時間で中断という問題

 私は、既に野球中継をみなくなってかなり経ったから、もちろん昨日見ていたわけではないが、巨人・阪神戦が、中途でテレビ中継が終わってしまったことが、大分話題になっているのだそうだ。連敗続きだった阪神が、巨人に勝った試合だが、めずらしく地上波で中継が行われていたらしく、勝利に酔いたい阪神ファンを中心に、途中打ち切りに怒って、抗議などをしたようだ。確かに、ずっと昔は、野球試合が延びると、スポンサーのご好意によって、中継を続けますという形が多かった。これは、プロ野球中継で数字がとれたからだ。しかし、次第に中継そのものが減っていき、いまではCSでの中継を、ファンは見るようになっている。CSなら、すべての試合を、最後までみられるからだ。ただし、有料である。
 この問題は、いろいろな要素を孕んでいると思う。そもそも、現在は有料で見ようと思えば、すべての試合をリアルタイムで見ることができるのでから、野球機構としては、それでいいと思っているのかも知れない。それならそれで構わないのだろう。野球に限らず、他のスポーツも、生中継はCS中心になっているし、たまにはyoutubeも使われるようだ。音楽のコンサートなども、youtubeでの配信をするように、コロナがきっかけだが、変化してきている。おそらく、コロナが収まって、実際のコンサートが開かれるようになっても、youtube配信などは残るのではないだろうか。ベルリンフィルは、ずっと前から、定期公演などは、すべてネット配信されるようになっている。

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佐々木朗希の完全試合から学ぶこと

 昨日ロッテの佐々木が、21世紀初の完全試合を成立させた。あわせて、13連続奪三振の新記録、19奪三振のタイ記録まで達成している。メディア上でたくさん書かれているが、個人的な感想を書いておきたい。
 「近頃の若いもんは・・・」というのは、歴史の記録の最初期から見られる老人の嘆きらしいが、高齢者である私は、「近頃の若いもんは、すごい」と常々感じている。野球の大谷、将棋の藤井、そして、サッカーの若手たち。以前は、日本のサッカー選手は、とにかくシュート力が弱く、チャンスなのに、自信がないから他の選手にボールを廻してしまうというような指摘がなされていたが、最近の若手は、果敢にシュートを決めている。そして、そのすごい若手に、さらに佐々木が加わった。
 佐々木の活躍は、順調にいけば、確実視されていたから、その内素晴らしい記録を打ち立てるだろうとは予想されていたが、これだけ早く、またとてつもない記録とともに、完全試合を達成したのは、周囲のもり立て方も適切だったことを、強く感じる。

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札幌五輪は招致すべきではない

 報道によれば、札幌市議会は、2030年冬季五輪の招致を可決したという。
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 札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックについて、札幌市議会は30日の本会議で招致を支持する決議案を可決した。決議案は自民党、民主党・市民連合、公明党が共同で提出し、賛成多数で可決された。共産党、市民ネットワーク北海道は反対した。(朝日新聞2022.3.30)
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 また、事前に行われたアンケートでは、約56%が賛成、約40%が反対だったという。しかし、世論調査には疑問もでていて、「そんな調査やっていたのか?」という意見や、新聞社の調査では、反対が多かったからか、公表後すぐに削除されたとか、賛成派にとって不都合な事実が、いろいろと語られてい。
 このことで、思い出すのは、荒川恭啓がやっていたラジオ番組で、東京五輪招致についての意見を求めたところ、圧倒的に反対が多くなった。もちろん、いくら政府に批判的な見解を述べることが多かった番組でも、オリンピック招致は、メディアとして実現したいというニュアンスで伝えていたのだが、この結果を伝えざるをえなくて、結果のみ発表したのだが、いかにも不快そうな感じで、そのあとすぐに別の話題にふってしまった。番組内で意見聴取をするなら、もっとちゃんと扱うべきではないかと思ったが、メディアってこうなのかと思ったものだ。

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トランスジェンダー選手の競技参加問題

 昨年の記事だが、アメリカのトランスジェンダー選手が、大学の水泳大会でめざましい活躍をしたことが話題になっているという。https://news.yahoo.co.jp/articles/fb100c8e5f4abc60c91cd33a0a3c27a938e5781d
 そして、東京オリンピックで話題となった重量上げの事例もあわせて思い出させている。ネットで検索した限りでは、女性アスリートの多くは、トランスジェンダー選手が女性選手として参加することについては、反対であるといえる。ただ、全体として女性アスリートの不利な状況に配慮している人は少ないのに、こういう問題だけ意見をいうのはどうか、という疑問を呈する女性アスリートの声はあった。
 さて、この問題は以前にも書いた記憶があるが、再度考えてみたい。そのために、「トランスジェンダー選手の五輪出場「オリンピックは排除ではなく、迎え入れる場所だ」。専門家はこう見る」という記事 の検討という形をとる。
 中京大学スポーツ科学部來田享子教授へのインタビューを元に、安田聡子氏が執筆した記事である。記事自体は、東京オリンピックに、トランスジェンダー選手が初めて正式に参加したとされているので、それをきっかけにした記事である。

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ドーピング問題の本質はどこにあるか2

 今回のワリエワのドーピング問題は、まだまだ尾をひくことは確実だ。問題はいくつかの層からなりたっていると思われる。 
 第一に、ロシアという、民主的とはいいがたい国家特有の問題である。オリンピックに極めて熱心に取り組んでおり、IOCの支持を獲得している中国も同様だ。プーチンが語ったことが、示唆的だ。「スポーツは国民の団結力、愛国心を高める」とプーチンが今回の問題を念頭において、取材に応じて語っている。オリンピックを肯定する人も、また否定する人も、このことは十分に考えているだろう。肯定派は、だからスポーツを振興させよう、そのためにオリンピックは最適の機会だという。反対派は、スポーツ、そしてオリンピックがナショナリズムの高揚のために利用されると批判する。

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ドーピング問題の本質はIOCの商業主義にあるのでは?

 ワリエワのドーピング問題は、CASが競技に出場してよいという裁定を下して、一段落ついた形になっている。もちろん、競技がすべて済んだあとに、問題が蒸し返され、無効になるという可能性もあるのだろうが、とりあえず、ワリエワの出場する競技が済むまでは、一端休戦のような状態になるのだろう。
 それにしても、このドーピング問題は、不可解なことが多い。昨年12月の試合のドーピング結果が、なぜオリンピック期間中に出てくるのか。その後、無効、異議申し立ての繰り返しなどが起きている。非常におかしなことは、IOCが、ロシア反ドーピング機関による資格停止処分の解除に対して、CASに提訴したことだ。IOCは、オリンピックの運営機関であって、基本的にはそのすべてを決定する権限をもっているはずである。しかし、その判断を、自らするのではなく、CAS(スポーツ仲裁裁判所)に委ねたことだ。自らの責任を放棄したに等しい。そして、CASも、ルールを無視するような裁定をしている。

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