プロ野球中継、時間で中断という問題

 私は、既に野球中継をみなくなってかなり経ったから、もちろん昨日見ていたわけではないが、巨人・阪神戦が、中途でテレビ中継が終わってしまったことが、大分話題になっているのだそうだ。連敗続きだった阪神が、巨人に勝った試合だが、めずらしく地上波で中継が行われていたらしく、勝利に酔いたい阪神ファンを中心に、途中打ち切りに怒って、抗議などをしたようだ。確かに、ずっと昔は、野球試合が延びると、スポンサーのご好意によって、中継を続けますという形が多かった。これは、プロ野球中継で数字がとれたからだ。しかし、次第に中継そのものが減っていき、いまではCSでの中継を、ファンは見るようになっている。CSなら、すべての試合を、最後までみられるからだ。ただし、有料である。
 この問題は、いろいろな要素を孕んでいると思う。そもそも、現在は有料で見ようと思えば、すべての試合をリアルタイムで見ることができるのでから、野球機構としては、それでいいと思っているのかも知れない。それならそれで構わないのだろう。野球に限らず、他のスポーツも、生中継はCS中心になっているし、たまにはyoutubeも使われるようだ。音楽のコンサートなども、youtubeでの配信をするように、コロナがきっかけだが、変化してきている。おそらく、コロナが収まって、実際のコンサートが開かれるようになっても、youtube配信などは残るのではないだろうか。ベルリンフィルは、ずっと前から、定期公演などは、すべてネット配信されるようになっている。

 しかし、当然、これまで無料のテレビで放送されてきたのだから、それを期待するひとたちも多いだろうし、誰でもみられるテレビで、スポーツの実況が行われることは、子どもたちがみやすくなるし、そこでそのスポーツをやろうと思う子どもたちも多くなるだろう。そういう意味では、テレビ中継が少なくなることは、そのスポーツにとっていいこととは思えない。いくら子どもたちが、テレビを見なくなったとしても、中継されていれば、見る機会が増えることは確かだ。
 では、何故テレビでの中継を見なくなったのか。人によって違うと思うが、私の場合は、はっきりしている。
 プロ野球がつまらなくなり、時間をかけて見る気持ちが起きなくなったということだ。そして、その最大の理由は、試合時間が長くなったということだ。私が若い頃まで、つまり、1960くらいまでは、野球の試合は、まず2時間を越えることは少なかった。当時はダブルヘッダーといって、日曜日などには、続けて2試合やるのが普通だった。月と金が移動日で、火水木、土日が試合日だ。当然日に2試合やることで、3試合ずつの日程をこなしていた。いまの試合の感じで2試合など、やるほうも嫌がるだろうし、見る方も疲れてしまう。しかし、当時は、別に苦ではなかったし、400勝投手の金田などは、1日で2勝したことも、けっこうあったほどだ。ダブルヘッダーのときには、1試合が1時間半くらいで終わることも珍しくなかった。新幹線や飛行機の発達で、当日移動が可能になって、金曜日を試合日とすることになり、ダブルヘッダーがなくなった。これで、試合をどうしても短時間に終える必要がなくなった。
 そして、巨人がドジャース式のサインを導入したころから、どんどん試合時間が長くなった。3塁コーチがいろいろなジェスチャーを組み合わせて、打者にサインを送る方式だ。しかも、これを一球ごとにやるのだから、ものすごく時間がかかる。
 さらに時間がかかるようになったのは、マシンの発達などで、打者が有利になり、投手の完投が難しくなったことだ。それまでは完投が当たり前だったが、救援投手が送られることが普通になり、救援が4,5名などという試合も珍しくない。当然、交代には時間がかかる。
 こうして、以前は2時間以内に終わることが普通だったのに、いまでは3時間を越えることが普通になってしまった。同じ9回を闘うのに、こんなに時間が延びるというのは、改善が必要であることはいうまでもない。特に、これだけ時間が不安定なスポーツであれば、テレビ中継などは難しくなるのは自明だ。
 全然別の分野だが、映画監督のゼッフィレルリは、映画を継続的に見るのに、集中力を継続できるのは最大2時間だという信念をもっており、映画はかならず2時間以内に収めたという。オペラの演出家でもあったので、オペラ映画も制作したが、ヴェルディの「オテロ」の映画が2時間を越える部分をカットしてしまったので、ヴェルディのオペラをカットするとはなにごとか、とかなりの非難を浴びた。
 スポーツでも、やはり、見る時間の限界は、人によって違うとしても、あるのではないだろうか。無駄に、時間を使っているとしたら、スポーツ側で改善できるところはすべきだ。私でも考えられることを列記してみよう。
・電波を使ってサインを送受信する。
 大リーグでは、キャッチャーがピッチャーに送るサインを電波式にする実験を始めたらしいが、あらゆるサインに適用すればよいと思う。打者に対しても、ベンチが送れば、時間的ロスはほぼ無くすことができる。誰でも見られる身体の動きで伝えるから、動きを複雑にして時間がかかる。相手に盗まれない仕組みを、機構が設定すれば、電波によるサインで、時間はかなり短縮できる。
・リリーフ投手の交代時の投球は2球程度にする。交代する投手はブルペンでしっかり投球練習してくるのだから、マウンドでたくさん投げる必要はない。これは、交代しない場合にも適応できる。出場している投手に、攻撃中に投球練習できるスペースを確保すればよい。
 他にもいろいろあるだろうが、とにかく、現在のプロ野球はだらだらと時間がかかって、とても見ている気がしない。時間を短縮させることは、多くの人が願っているに違いない。
 
 ここまで午前中に書いてあったのだが、昼食を食べているときに、ネットで佐々木が完全試合を経過中というメッセージが出たので、テレ東で中継をしていることがわかり、テレビをつけた。6回だったが、その後8回まで完全状態だったが、8回裏に味方が点をとらなかったので、9回は登板しなかった。既に100球を越えていたことと、9回抑えたとしても、点数が入らず、延長戦になれば、続けて投げさせるわけにはいかず、結局、完全試合は成立しないことになるので、変えたのだろう。相手の日ハムもエース球の投手をだしていたので、マリンズも点をとれなかったわけだ。
 テレビを見ていた限りでは、交代で大騒ぎになった様子もなく、仕方ないかという受け取りをしたようだ。野球中継をテレビでみたのは、久しぶりだが、面白かった。投手戦で、ランナーがでないから、バッターへのサインなどもほとんどなく、スピーディに進んでいたのがよかったわけだ。やはり、だらだら試合でなければ、見る気にもなると感じた。
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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