マリウポリで最後まで抵抗を続けているウクライナ兵士に対して、ロシアが降伏を勧め、降伏すれば、生命は保障すると呼びかけているが、ウクライナ首相が、アメリカの報道のインタビューに対して、あくまでも闘う意志を表明したと伝えられている。先に降伏した部隊が、本当に降伏したのかどうかは定かでないが、現在残っている部隊が、降伏しないであろうことは、前から予想している。最後はどうなるかわからないが、いまのところ降伏の意志はないと思われる。理由は簡単だ。現在残されている部隊は、アゾフ大隊とされており、ロシアが、「ナチ」と呼んでいる中心的な部隊であり、ウクライナ側で最も強硬なひとたちであるとされている。しかも、正規軍ではなく、内務省管轄の国土防衛隊という、特殊部隊である。国際法的にも、捕虜として扱う義務がない考えられる。更に2014年以降続いているドンパス地方におけるロシア系住民とウクライナ人の対立、軍事衝突において、最も過激に闘ってきたのが、アゾフ大隊であり、住民に反人権的な行為もしてきたとされる。
従って、ロシアが、生命の保障をすると言っても、実際には、拷問され、虐殺される可能性が高いし、それを当人たちも自覚しているはずだ。同じ死ぬなら、最後まで抵抗しようという決意していると思うのである。
また、抵抗を続けられると微かな望みを抱いているのは、彼らが立てこもっているのが、ヨーロッパ最大と言われる製鉄所であることだ。つまり、マリウポリは、ロシアが制圧したあと、ロシア領に事実上組み込む意図をもっているはずであり、そのためには、住宅などは別だが、この製鉄所と残しておく必要がある。だから、ここには砲撃などを、現時点までしていないと言われている。だからこそ、「降伏勧告」などをするわけだ。完全制圧のために、製鉄所そのものを爆撃するか、あるいは、製鉄所を残すために、あくまでも降伏させるのか、あるいは特殊部隊を潜入させて、一人一人殺害する方法をとるのか。
それにしても、これだけマリウポリが悲惨な状況になっているのに、ウクライナ軍がまったく援軍を送っている様子もないのは、やはり、ぎりぎりの闘いをしているということなのだろうか。それとも、西側の支援の武器が到着しないので、支援することができないのだろうか。あるいは、市民がかなり残っているので、ロシア軍に対してミサイル攻撃をかけられないのだろうか。テレビでの専門家の話などを注意深く聞いているのだが、そこらの解説がなされておらず、わからない。
youtubeで、ロシアの元諜報部員だった人が、プーチンのやり方について解説していたが、それによると、チェチェン紛争への介入のきっかけになったモスクワのアパート爆破事件は、チェチェンのテロが行ったとして、報復攻撃をプーチンが徹底して行ったわけだが、その諜報部員は、あのアパート爆破は、プーチンが命じたもので、自作自演だったと断言していた。そういうやり方こそ、プーチンの特質なのだという。そして、それは当時から、噂としてはあったような気がする。自国民すら、そういう政治的利用として、大量に殺害してしまうのだから、敵の、そして、最も「憎むべき相手」としている兵隊を、全滅させることは、躊躇なくやるだろう。投降したとしても、戦争法規における「捕虜」として扱う可能性は、まずないと思われる。
それにしても、ロシアはウクライナの東部の住民を、ロシア領内に連れて行き、シベリアの土地を提供する、などといって、いかにも、ウクライナ住民に好待遇を与える姿勢を「見せている」が、ウクライナ人はもちろん、日本人のほとんども、そんなことは信じていないだろう。なにしろ、日本人は、多くの人々が戦後シベリアに抑留され、強制労働に従事させられた経験をもっているからだ。多少、緩やかになるだろうが、基本は同じことをやろうとしている。古代における、戦争捕虜を奴隷にする慣習を、ロシアは現代でももち続けているのだろうか。とにかく、占領地での住民虐殺や、あるいは住民を連行して強制労働させるなど、およそ近代以前に消滅したはずのやり方が、ロシアでは時々顔を出す。ナチスとの過酷な戦争の経験が、記憶として残っているのか、あるいは、民族的な血なのだろうか。
報道によれば、新たな攻撃的な武器が、西側諸国から届きつつあり、それを使った大決戦がやがて行われる。そうなると、兵器の威力という点で、西側のほうが優れており、ロシアは次第に押されていくと予想される。それには、まだ時間がかかりそうだが、それまで、とにかくマリウポリがもってほしいと、ウクライナ政府は祈っているのかも知れない。いずれにせよ、歴史に残るマリウポリの闘いとなっている。