教師が教師へのいじめ 残された教師集団による自己検証が必要だ

 今更いじめが起きても驚かないが、新学期になって立て続けに「教師による教師へのいじめ」が二件も報道されたのには、驚いた。最初は9月12日の毎日新聞「小2~3年の担任4人 2学期開始から休む 教員間でトラブル?奈良・郡山南小」という記事である。この事情は、続報がないのでよくわからないし、また、記事の内容も不可解な点がある。要するに、あるひとりの教師に対して、ある教師が厳しく接したために、他の3人の教師と一緒に、8月下旬校長に訴えた。そして、9月2日から体調不良を理由に学校を休み、連絡がとれない状況であるという。3カ月の急用が必要という診断書を郵送で提出したそうだ。校長が調べたかぎりでは、パワハラなどは確認できなかったと書かれている。
 トラブルがあったとしても、1対1の関係と理解できるのに、その一人を含めた4人が一切に休暇をとるというのが、私にはあまり理解できない。休んだ4人は20代から50代だという。
 そして昨日10月4日の新聞に、「無理やり激辛カレー・卑猥書き込み強要、小学校教員、同僚からいじめ 神戸」という記事だ。こちらは強烈で、既に写真などもネットに掲載され、多数のコメントが出ている。 “教師が教師へのいじめ 残された教師集団による自己検証が必要だ” の続きを読む

化学物質過敏症で通学困難な生徒

 今日のHarbor Businessに「学校に通いたい……教室に充満する過剰な「香り」で化学物質過敏症に苦しむ女子高校生」という記事が出ている。化学物質過敏症に罹患している女子高校生が、生徒たちが使っている様々な化学物質で処理した服などの香りで、目眩、頭痛、過呼吸などを引き起しているので、母親が、クラスの保護者に丁寧な事情説明の手紙をだして、原因となる柔軟剤や合成洗剤などを控えるようにお願いしたところ、そのクラスでは協力的で改善されたのだが、学校全体としては取り組まれていないし、また、通学途上の交通機関で体調が悪化するという事態になっている」という記事である。
 この化学物質過敏症は、診断が難しく、他の病気と間違えられやすく、また、病気と認めないような医師もいるのだそうだ。診断ができる病院が全国的に少数で、正しい診断と治療をしないために、どんどん病状が悪化する事例が多数あるという。ある調査によれば、可能性の高い人が全体の0.74%、可能性のある人が2.1%なのだそうだ。正確な診断が難しい病気なので、ウェブで調べる限り、書いている人たちによって数値が異なるのはやむをえないが、可能性が高い人0.74%というと、大雑把にいうと、300人いれば2人はいることになる。高校などは、通常1000人近くいるわけだから、7名程度の人が該当する計算になる。 “化学物質過敏症で通学困難な生徒” の続きを読む

キャンプで行方不明、大人たちの安易な計画ではなかったのか?

 山梨県道志村「椿荘オートキャンプ場」で、行方不明になった小学一年生の当日の経過が、両親によって明らかにされた。毎日新聞掲載の内容をそのまま引用する。

21日午前
9時    一緒にキャンプするメンバーの一部が到着
  午後
0時15分 美咲さんと母、姉がキャンプ場に到着
1時    昼食後、子供たちがテントを張った広場近くで遊ぶ
3時35分 おやつを食べ終えた子供たちが沢に遊びに行く
  40分 美咲さんが後を追いかけて行く
  50分 大人が子供たちを迎えに行く
4時    美咲さんがいないため、捜し始める
5時    日没が近づき警察に通報
6時    警察官が到着
8時    子供たちを寝かせ、大人は捜索を継続
22日午前
1時30分 仕事を切り上げた父が到着。3時まで捜索を続ける “キャンプで行方不明、大人たちの安易な計画ではなかったのか?” の続きを読む

トロッコ切り換え問題を題材とした授業で、子どもたちが不安に


 9月29日の毎日新聞に、「死ぬのは5人か、1人か…授業で「トロッコ問題」 岩国の小中学校が保護者に謝罪」という記事があった。昨日は毎日新聞のページで読んだので、ただ今日コメントを書こうと思っていたのだが、今日ヤフーニュースで読むと、6000件ものコメントがついていた。とうてい読みきれないので、それは読まずに、書くことにするが、かなり関心を引き起こしたことは間違いない。
 どのような記事かというと、今年の5月に、中学生2,3年と、小学生5,6年の合計331人に、スクールカウンセラーが行った授業だそうだ。内容は、以下のように紹介されている。

 「プリントは、トロッコが進む線路の先が左右に分岐し、一方の線路には5人、もう一方には1人が縛られて横たわり、分岐点にレバーを握る人物の姿が描かれたイラスト入り。「このまま進めば5人が線路上に横たわっている。あなたがレバーを引けば1人が横たわっているだけの道になる。トロッコにブレーキはついていない。あなたはレバーを引きますか、そのままにしますか」との質問があり「何もせずに5人が死ぬ運命」と「自分でレバーを引いて1人が死ぬ運命」の選択肢が書かれていた。」

 そして、授業の趣旨は、以下のように説明されていた。 “トロッコ切り換え問題を題材とした授業で、子どもたちが不安に” の続きを読む

学校制度の分岐型と統合型2

  日本ではどのように進路選択されているだろうか。最初の進路選択は、受験である。受験は、いわゆる通常の学力によって選抜される。学力による選抜は大学入試まで続く。では、この学力による選抜は何故行われるのか。あまりに当然のこととして理解されているので、実はあいまいなのではないか。
 まず学校は学力を育てるところだと考えられているので、その水準を計る。では、何故学校は、学力育成が中心的課題なのか。歴史的な概観をすることも有効だろうが、ここでは省略する。学力は、支配層のために必要と考えられる教養に、近代的な科学の進歩が反映したものであり、その意味では、学力の水準の高い者に、高い教育を保障することは、合理的である。しかし、そうした学力は、いかなる仕事をする上でも必要であるのか、必ずしも必要とされない仕事もあるのか。「何故勉強しなければならないのか?」という子どもから発せられる疑問は、すべての仕事に、学校で学ぶ学力が不可欠であるとは、考えられていないからだろう。 “学校制度の分岐型と統合型2” の続きを読む

学校制度の分岐型と総合型

 最近は、教育問題として、学校制度が議論されることはほとんどなくなっている。いじめや不登校、きれる子どもたち、教師の過重労働などの具体的な問題が深刻になっているためだと考えられるが、実は、制度も事実上変化している。近年だけをとっても、義務教育学校という新たな学校種が制定され、小学校、中学校、高校という区分を越えて、小中一貫、中高一貫などの学校も増えている。中高一貫に関しては、中学と高校が連続して同一法人で運営されている場合と、中等教育学校のように、一体の学校との二種類がある。そして、高校には、普通科以外に職業科があり、更に、理数などに特化した学校もある。つまり、複線型学校制度になったわけではないが、単純な単線型ともいえないシステムに変化しているのである。そして、それは、いじめ等の学校の問題の背景的要因のひとつでもある。従って、学校制度のあり方は、教育の内実にも影響を与えることを無視すべきではない。 “学校制度の分岐型と総合型” の続きを読む

『教育』2019.9を読む 縛り・縛られるから抜け出せるのか

 既に10月号が出ているのだが、まだ、9月号の宿題のようなものが残っている。「縛られる学校、自らを縛る教師たち」という特集で、そうした「縛り」からどうやって抜けだすのか。私は小学校や中学校の教師ではなく、大学の教師なので、この縛りは極めて緩い。だから、小中学校の縛りについては、いろいろな話を聞くし、実習生の授業をみたり、また、学校側の説明をきいて、感じていることはたくさんある。
 「縛り」がだんだん強くなっていることは間違いないし、また、その圧力の質と量がともに形として現れているといえる。もちろん、義務教育である以上、「縛り」はある。少なくとも、日本の義務教育の歴史のなかでは、自由な教育が保障されていた時期は、極めて短い。ないわけでもなかった。しかし、それは、国家がまだ教育の内容まで掌握できない時期に限られていた。明治の初期と戦後初期の数年間だけである。他方、ヨーロッパでは、1980年代までは、多くの国で教える内容まで含めて、学校に任されていたという事実もあるし、今でも、教育内容に関する国家基準はあっても、日本の学習指導要領よりは、ずっと大綱的である。
 さて、もっとも普通で基本的な「縛り」は、
(1)学ぶときには、指定された内容を、机に座って学ばなければならない
ということにあるといえる。 “『教育』2019.9を読む 縛り・縛られるから抜け出せるのか” の続きを読む

多文化主義は終焉したのか(続き)

 日本で英語が小学校の正式教科になることが決まっているが、決まる前の議論で、日本語が習熟する前に、英語教育を導入すると、日本語が混乱し、日本語の習得にも悪影響があるという反対論が少なくなかった。母語をきちんと習得してこそ、第二言語が習得できるという考えかたは、ヨーロッパのバイリンガリズムに似ている。もちろん、実際の進行は全く違う。
 ヨーロッパでバイリンガリズムの教育を行われているときには、当然住んでいる国の言語の習得をかなり行いながらは、合わせて母語の習得のための補習も実施する。実際に幼稚園や小学校の下級段階では、母語の習得もまだ完全とはいえないだろうから、その時点で第二言語を教え始めた場合に、母語が不完全だと第二言語の習得にもマイナスだというのは、現場の多くの体験からいわれていることだろう。特に母語環境が家庭にしかないのだから、母語の形成が遅れがちになるのは避けられないに違いない。 “多文化主義は終焉したのか(続き)” の続きを読む

水泳授業の民間委託

  毎日新聞9月12日の地方版(福岡)に、「水泳授業の民間委託検討 久留米市小学校、プール老朽化などで/福岡」という記事が出ている。全46校にプールがあるが、20校が築30年以上となっていることが原因で、検討をしているということだ。既にいくつかの自治体で行われていて、調査したところ「天候に左右されずに授業ができる」「専門家の指導で学習効果があがる」というような結果がでたという。
 この記事を読んで、以前私自身が経験したことを思い出した。
 私の家の近くに鉄道が通ることになり、ある小学校が駅近くになるために、開発を主導しているところから移転要請があり、近くに移転することになった。その際、私の妻が教育委員会と交流があったので、その学校をどのようにするかの検討チームにはいり、私も部分的に参加した。その際議論になったひとつが、プールだった。とにかく大規模開発する地区だったので、移転先の敷地もそれほど広くなく、また、公民館との併用の複合施設となることが決まっていた。だから、プールを作るのは、けっこう無理があったのである。私たちは、オランダに家族で一年間住んでいて、娘たちが現地校に入っていたから、その経験なども踏まえ、プールは学校に作る必要はなく、近くの駅前にスポーツクラブがふたつもできることになっているので、そこと契約して、そこのインストラクターに指導してもらったらどうかと提案した。 “水泳授業の民間委託” の続きを読む

ポピュリズム政党の教育政策(2)

オランダ
 オランダの自由党(Partij voor de Vrijheid)をみてみよう。 
 オランダは、長い間、移民政策の優等生と言われ、移民に対する寛容政策が最もうまくいっていると考えられてきたが、2001年の911同時多発テロで空気が一挙にかわる。労働党の論客だったフォルタインが移民への制限を訴える主張をひっさげて、フォルタイン党を結成、2002年の総選挙に挑戦した。選挙の1週間前に暗殺されてしまうのであるが、第二党となったフォルタイン党は入閣した。その直後にオランダに一年の海外留学にいった私は、その当時の政治的混乱をつぶさにみることになったが、フォルタインの人気はかなり大きなものだった。モスクやイスラム学校への暴力的介入などがおき、次第に、社会の反移民的雰囲気も少しずつ強くなっていった。そういうなか、EUへの懐疑も大きくなり、オランダでは、2005年のEU憲法を国民投票で意志を問うことになり、60%が否定し、結局、EU憲法は成立しないことになった。その反対運動の先頭にたったのが、ウィルダースで、自由党を結成し、今では有力な政党として、オランダ政治に大きな影響をあたえている。 “ポピュリズム政党の教育政策(2)” の続きを読む