『教育』1987.3を読む 30年前の部活問題

 今回は、以前の『教育』1987年3月号で、この485号目で初めてスポーツクラブの問題をとりあげたということだ。この特集は30年も前のものだが、ここで指摘されていることは、今でも大きな問題であり続けているものがほとんどであることに驚く。もっとも多少変わった点もあるのだが。
 最初に、正木健雄(体育学の専門家、大学教授)の「子どものスポーツ・『部活動』を考える」を取り上げる。正木氏は、ずっと子どもの身体の変化について調査をしており、身体能力の様々な面での低下を指摘している。
 文部省は体育に力をいれており、現在では更にその傾向が強くなっている。そうした力のいれ方にもかかわらず、当時の子どもたちは、背筋力と柔軟性が低下していると指摘している。正木氏は、いつも、このふたつの身体能力が人間としての生活に、非常に重要であると考えていた。背筋力は、姿勢を真っ直ぐに保つ上で必須の力であり、背筋力が弱くなると、猫背になり、健康上の問題が起きるだけではなく、次第に、歩行などにも影響が出てくる。柔軟性は、人間が活発に動くために必要であり、柔軟性がなければ、動作そのものが制限されてくるし、危険に対する対応力も低下する。だから、正木氏は、いつでもこのふたつの能力の状況を問題にしていた記憶がある。
 それから、最近増えているからだのおかしさとして、「ボールが目にあたる」という項目があがってきていると指摘する。 “『教育』1987.3を読む 30年前の部活問題” の続きを読む

「天皇」に何を求めるのか

 現在の皇室典範では、やがて皇位継承者がいなくなるという可能性から、女系・女性天皇論をめぐって、相変わらず、というか、ますます様々な見解が飛びかうようになっている。しかし、この議論に絡んで、人々は天皇という存在に何を求めているのか、という点に関して、極めて大きな隔たりがあると感じている。あまりに単純化していると言われるかも知れないが、男系男子に限定する、現在の皇室典範を支持するひとたちは、天皇には何も求めていない、つまり、「存在」だけあればよい、という考えに近いと思われる。それに対して、女系・女性天皇を容認するひとたちには、二通りある。第一は、男女平等の民主主義社会であるから、男系男子に限るのはおかしい、だからは、男女に限らず直系の長子から順に決めればよい、という見解であり、第二は、現在の愛子内親王の存在を前提に、女性天皇を期待する立場である。この場合、愛子内親王が様々な面で秀でた能力をもっていて、天皇になる家庭で育っているために、自然とそうした風格も育っているという人物評価を重視しているように見える。
 実は、歴史的にみれば、天皇が選ばれる基準、あるいは資質などについては、大きな変遷を繰り返してきた。
 これもかなり大雑把な整理であるが、奈良時代くらいまでは、天皇は決して、そのときの天皇との血のつながりの近さ、例えば、長男であるなどで決まっていたわけではなく、それなりに、人物や能力の評価があったようだ。 “「天皇」に何を求めるのか” の続きを読む

国際社会論ノート 慰安婦問題を考える3

 最初に設定した問題がひとつだけ残っている。
5、違反者が罰せられるべきか
 実際に、罰せられた事例は、インドネシアでの法廷で、死刑を含む有罪判決があったのみだったと言われている。しかし、今から当事者を罰するということには、意味があるとは思えない。モサドによるユダヤ人の追跡は、いまでも続いているのかも知れないが、これとても、今生きている旧ナチといえば、90歳を越えていることになり、しかし、90歳といえば当時はまだ未成年だから、自分の意思で戦争犯罪を実行したとは言い難い。慰安婦問題でも同様だろう。
 従って、最後に、どのようにお互いが歩み寄ることができるのか、あるいは何が必要なのかこそが重要だろう。
 まず必要だと思うのは、お互いの歴史を知ることだろ。これは、おそらく、驚くほど互いに知らないのではないだろうか。韓国で、体系的な日本史の本がどの程度だされているかわからないが、日本では、体系的な朝鮮半島の歴史書は極めて少ない。個別的なテーマを扱った朝鮮の歴史書はあるが、通史は少ないのだ。アマゾンで購入できる通史は(通史に限らないが)、かなり明確な立場が表明されており、そして、レビューを見ても、それに対するコメントが寄せられるような本が多い。圧倒的に、朝鮮の歴史に否定的な見方をする書物が多い印象を拭えない。 “国際社会論ノート 慰安婦問題を考える3” の続きを読む

スピーカーコードを換えてみた

 我が家のスピーカーは、実に40年くらい前に買ったものだが、換える気持ちにならないくらい、私の耳にはいい音がする。比較的広い部屋にフローリングというのも、いい音がするにはいい条件だ。さすがに、アンプは3台目で、今は、オンキョーのCDデッキをアンプ代わりに使っているが、それまで使っていた古いものよりは、いい音がするし、前のはハンダ付けが緩んでいたのか、けっこう雑音がしていた。それほど高くないCDデッキだから、アンプに換えればもっといい音がするのかも知れない。
 最近でたブルーノ・ワルターのコンプリート(ソニー)は、ステレオ録音については、まったく新しくオリジナルテープから、リマスターして、ワルター特有の低音を重視した音に変えたという宣伝になっている。その感想を若干書いたが、それでも、以前に聴いていたものに比較して、それほど低音が強調されているように思えなかった。それで思いきってコードを換えることにした。というのは、以前からずっとこのコードについては問題があった。 “スピーカーコードを換えてみた” の続きを読む

週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…

 週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…障害者支援団体が問題視する点とは?」が今日(20日)にウェブ版として掲載されている。これは、NHKスペシャルの「彼女は安楽死を選んだ」に対して、障害者や難病患者の自立的生活を推進する団体「日本自立生活センターJCIL」が、障害者や難病患者の尊厳や生命を脅かすと声明を出しただけではなく、放送倫理・番組向上機構BPOに調査・審議の依頼をしたことをきっかけとした記事である。
 私は、この番組を当日見ていなかったので、後日の再放送のときに録画してあったものを、この記事を読んで、見てみた。実は、今回のような「安楽死」の実際が放映されたあと、同じ病気の患者の団体が抗議をしたということは、以前にもあった。オランダで、発病から安楽死を実行した過程を詳細に描いた番組が、TBSで放映されたのだが、ALS患者の安楽死だったので、ALS患者からの抗議だった。TBSは、そうした抗議を受けて、半年後に、安楽死した夫の妻にインタビューをして、その模様を放送した。抗議の趣旨は、今回と同じように、このドキュメントビデオは、ALS患者は安楽死しなさいというメッセージだということだった。ちなみに、オランダ人にこの番組のことを聞いたところ、実際にオランダで最初に放送されたわけだが、別に特別な反響はなかった、ごく普通に受け取られたということだった。 “週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…” の続きを読む

新幹線殺人事件無期判決について やはり納得できないものがある

 いわゆる「新幹線殺人事件」に対する判決があった。無期懲役だった。殺人犯のあまりの身勝手さと、まったく罪のない無関係な人を、自分が「無期懲役刑」を受けるために殺害し、かつ、まったく反省もしておらず、むしろ、誇っているかのような発言を繰り返してきたことに対して、おそらく、多くの人は、死刑が求刑され、その通りになるだろうと考えていたのではないか。私自身は、その可能性はあまり高くないとは思っていたが、しかし、私が裁判員だったら、無期懲役には疑問を表明したと思う。求刑以上の刑罰というのは、ほとんどないわけだから、賛意はえられないとは思うが。
 既に、判決への疑問は出されている。その思いは、「疑問」を感じる人には共通だろう。被告の言明や態度は、あまりに酷すぎる。そして、一生、刑務所で楽に生活していたい、ということを明言もしている。更に、有期刑で出所したら、再び殺人事件を起こすとまで公言しているのだ。殺害が一人で、初犯であれば、余程のことがない限り死刑判決はないということを、予め知った上での犯行でもある。
 こういうことを、被告の思惑通りにしていいのだろうか、ということは、誰もが感じたことだろう。 “新幹線殺人事件無期判決について やはり納得できないものがある” の続きを読む

次々に出てくるセブン-イレブンの問題

 セブン-イレブンの問題が今年はずいぶんと出てきた。他のコンビニも同様なのかはわからないが、セブンのやり方には、特に以前から疑問をもっていた。最初は、娘が大学に入ったときに、近くのセブンにバイトの申し込みに行ったときのことだ。もうずいぶん前のことだ。
 面談から帰った娘は、セブンでのバイトはしないと即座に言った。それは、途中でやめた場合には、解約金を支払う義務があるということを聞いたからだ。期間と、その額は忘れてしまったが、たぶん、1年以内で2~3万くらいだったと思う。大学に入ったばかりで、バイト経験などはなかったのでびっくりしたろうし、私たち親も驚いた。期間と額については多いに疑問だが、直ぐにやめられては困るという事情はわかる。というのは、コンビニのレジは、かなり大変な作業で、レジ打ちも単に金額を打って、レジの計算にまかせているわけではなく、客層の判断などもあるし、また、配列されているさまざまな商品を、かなり正確に頭にいれておく必要がある。とくに大変なのが、煙草の銘柄を憶えることだそうだ。煙草を買いに来た客に、またせずにすばやく注文の煙草をとってくるというのだけでも、かなり大変のようだ。もたもたしていれば、怒鳴られるだすろう。そういう作業をしっかりと教える必要があり、憶えてもらうまでには、それなりの時間とコストがかかるのだろう。だから、そうそう簡単にやめられてはこまるのも確かだ。 “次々に出てくるセブン-イレブンの問題” の続きを読む

『教育』2020年1月号を読む インクルーシブと特別支援を深く知る

 大分『教育』の読後感を休んでしまった。また、できるだけ頻繁に書くようにしたい。
 さて、今回は、特集1が「インクルーシブと特別支援を深く知る」となっている。私は、特別支援教育の専門家ではないので、これまで、いろいろと勉強したり、また、特別支援学校の授業を見に行ったりしてきたが、依然として、よくわからないというのが正直なところだ。記述式問題を出すのはいいが、50万人もの答案をわずかな期間で採点できるのか、というようなことと、似た困難が、現場には無数にある。大学を卒業して教師になったとき、ほぼ全員が直面する事態が、教室のなかにいる障害をもった子どもを、どう教育したらよいのかわからず、暗中模索するという点である。ベテランになったから、充分にできるようになるというものでもない。多くの場合、介助や支援をしてくれる人がついているわけではないから、常識的にイメージされる「授業」は不可能になっているわけだ。「ともに学ぶ」という理念はいいことだろうが、それを保障する条件がないままに実行すれば、現場を預かっている人が、とにかく苦労する。そういう実状が、かなりあることは、誰も否定できないだろう。 “『教育』2020年1月号を読む インクルーシブと特別支援を深く知る” の続きを読む

松坂が今でもレッドソックスに嫌われているという記事

 12月12日のJBpressに「西部復帰の松坂大輔が今もRソックスに嫌われる理由」という文章が載っている。ここに書かれている内容については、私は多くを知らなかったが、日本のメディアの松坂に対する甘い評価については、日頃から疑問に感じている。
 まず記事の内容を紹介しよう。執筆は、臼北信行氏である。
 古巣の西部に復帰して、松坂は覚悟を決めているのだろうと書いたあと、日本復帰後は一年を除き、散々の成績だったことを確認する。そして、大リーグでは活躍したと、多くの日本人が思っているが、実はレッドソックスでは、ヒンシュクをかっていたし、成績も期待されていたほどではなかったと書く。一見いい成績だったシーズンもあるが、統計的評価では、運と味方の援護に大きく助けられたとして、四球が多く、味方もいらいらしていた。2シーズンのあとは、けがや手術で10勝をあげられたシーズンがなく、松坂の獲得は失敗だったと評価されているのだそうだ。
 そして、何よりも、評価を落としたのは、日本人スタッフが付きっ切りで、同僚たちとあまり交流もせず、同僚が近づくこともできなかったらしい。 “松坂が今でもレッドソックスに嫌われているという記事” の続きを読む

小中学校2学期制再ブレーク?

 12月14日毎日新聞に「小中学校・2学期制、再ブレーク? 「通知表3回もらえぬ」不人気一転… 年35時間増、授業確保に有効」という記事が載っている。働き方改革が進むなかで、新学習指導要領で増加した授業時間数をこなすには、2学期制のほうがよいということで、人気が復活しているという記事である。何故、授業時数を増やせるか、働き方改革になるかというと、始業式、終業式、通知表の回数を減らすことができるということのようだ。
 これまで、通知表を夏休み前にほしいという保護者の要望があり、2学期制は不人気だったのだが、現場で望む声が多くなっているということだろうか。文科省によると、2018年度では、小学校19.4%、中学校018.6%が2学期制だが、記事によれば、来年度からはもっと増えるということだ。
 しかし、働き方改革をしようという姿勢はわかるが、すっきりしないものを感じる。 “小中学校2学期制再ブレーク?” の続きを読む