ワールドシリーズでの山本の連投

 今年のワールド・シリーズは本当に面白かったし、レベルの高い野球を見せてくれたと思う。最近はテレビをほとんどみないので、レベルの高い野球などといっても、本当に理解しているかどうかはわからないが、しかし、第7戦の山本が登場したあたりからは、テレビを見ていて、本当にすごいと思った。とくに、山本がでてきてから、守備陣が鉄壁の守りどころか、それ以上のすごい守備をみせていたのが印象的だった。
 ただ、少々気になったのは、前日に投げて、また今日なげた、ということが、衝撃を与えたことだったが、考えてみれば、昔は普通にあったことだ。野球の質そのものが変化したなかでの、中*日などというシステムが定着したのだろうが、それをいま脇において考えると、私たちの世代では有名な西鉄ライオンズと巨人の日本シリーズで、稲尾は4連投して4勝、リーグ優勝を勝ち取っているし、また、南海の杉浦なども、日本シリーズで4連投していたと思う。
 若い頃は野球場にずいぶん足を運んだが、400勝投手の金田などをずいぶん生でみた。当時は日曜日がダブルヘッダーで、一日に2試合あって、最初に金田が完投して勝利投手、そして2試合目で途中からでてきて、自分でホームランをうって勝利投手。一日で2勝などということが、たまにはあったものだ。400勝できた秘訣のひとつだろう。昔はDHなどなかったし、いまでもセリーグはない。だから、投手といってもみな打席にたつから、2刀流だ。投手でもホームランをたくさんうった選手は少なくない。金田、堀内、江川等々。金田などは、代打ででてくることすらあった。彼らがいま活躍していたら、大谷のように2刀流に挑戦するだろうかと想像してみるのも楽しい。
 打撃の技術が向上して、投手が完投するということが難しくなったこと、そして、投げすぎが選手寿命を短くすることなどが考えられて、先発ローテーションを楽に組むようになって久しいが、そうなってみると、日本のほうが、アメリカよりも、投手の消耗を配慮したシステムになっている。日本では中6日などが普通だし、先発して投げた翌日は「あがり」になることが普通だ。大リーグでは、中4日が普通で、「あがり」の制度はないようだ。
 そういう日米の違いを考えた上で、山本の連投の衝撃について考えてみると、不思議な気もするのだ。元大リーガーたちは、日本の育成システムが、山本のような連投を可能にさせたと解説する人が多かったが、それは、高校までのことだろう。プロ野球では、日本のほうがずっと投手の休養を充分にとっている。山本がドジャースにいっても、他のチームよりは先発投手陣がそろっているから、投げない日を長くとれるようだが、そういうあまり無理しない体制で、日本でもドジャースでも投げてきたから、いざ連投というのも可能になるのではないかと、私は解釈した。きつい日程で普段なげていれば、やはり、疲労が蓄積しやすいから、いざというときにも連投などはできないのではなかろうか。
 ベンチ入りの人数やシステム、投手起用のゆとりなど、私は日本のほうがアメリカよりもずっと優れていると思うので、アメリカ大リーグも、日本のような「あがり」制度などとりいれてもよいのではないだろうかと、常々思っているのだが、山本の連投がなぜ可能になったかを考えると、やはり日本のシステムのなかで、やってきたからだ。そして、ドジャースは、他のアメリカの球団よりは、先発投手が豊富なので、山本もゆとりをもってこれたために、いざというときに投げられる自信があったのではないか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です