オットー・クレンペラーは、指揮者としては、かなり波乱の富んだ人生を送ったひとだ。若いころから、双極性の精神疾患を患っていたといわれ、それが原因で、歌劇場支配人やオーケストラとトラブルを起こしていた。更に、ヒトラー政権から逃れて渡ったアメリカで、脳腫瘍にかかって、大きな手術をしている。更に、飛行機のタラップからおりるときに、踏み外して大怪我をしたり、更に、ホテルで寝煙草が原因でシーツが燃え、かなりの火傷をして、大がかりな皮膚移植手術を受けている。
こうした身体的なトラブルだけではなく、アメリカの市民権を得ていたが、戦後初期にハンガリーの歌劇場で指揮をしていたために、マッカーシー旋風が吹き荒れていたときに、共産主義と関係があると疑われて、パスポートの没収にあったりしている。