奈良県知事選で、自民党が敗れたことから、奈良県の県連委員長である高市氏の責任を問う声が大きくなっているという一方、あれは、高市追い落としの陰謀が自民党内にあったのだという説もある。須田慎一郎氏がyoutubeで語っていて、高市擁護の論陣をはっている。
それによると、現職荒井知事が立候補しても、維新にはまったく勝てないという調査がでたので、それで別の候補をたてようということになった。それは当然だろう。そこで、高市氏は、総務省時代の部下であった平井氏をたてたわけだ。そこで問題になるのは、高市氏が、現職である荒井氏を説得して、多選にもなっていることだし、引退して、その後の道を保障するように働きかけをしなかったために、荒井氏が臍をまげて、立候補してしまい、分裂選挙になってしまったのだという声が多数公表されている。つまり、高市氏の横柄で権力的な資質が欠陥として現れたというわけだ。
それに対して、須田氏は、高市氏は、荒井氏に何度も会おうしたが、どういうわけか、拒否され、一度だけあう約束をとりつけたが、直前になってキャンセルされた。それは、森山自民党選対委員長の働きかけだったのではないと須田氏は推測を述べている。つまり自民党を敗北に導いたのは、現在の自民党の主流勢力だ、高市を応援しなければならない、ということのようだ。
しかし、高市氏の応援をする気もないし、また、自民党支持者でもない者からすれば、やはり、高市氏の力量不足が露顕したのが、奈良県知事選だったとみえる。自民党は政権党だから、自民党のなかで勢力をもつことが、政権をとるための不可欠の道であって、それは権力闘争に他ならない。自分が責任者である県知事を勝つためには、あらゆる努力をしなければ、自民党内での勢力を維持、拡大できないことは当たり前だ。そして、そのためには、自民党内での調整が必要だったはずであり、自民党有力者たちが、奈良県知事選で高市を妨害しようとしているなら、そこでの調整をしなければならない。勝てない候補をおろし、勝てる候補をたてるのは、当たり前のことなのだから、そのための根回しを、党中央レベルでしなければならない。それができず、結局、勝てそうな候補をたてたが、分裂選挙になることを避けられなかったのは、そうした調整能力、つまり、権力闘争に勝つ力がなかったことということだろう。
須田氏にいわせると、奈良県知事選に勝利するよりは、高市氏を追い落とすことのほうが重要だったと、非難しているが、それを画策したひとたちがいるとしても、彼らからすれば、調整能力のない、つまり政治家としての力量がない高市に力をつけさせるよりは、追い落としたほうが自民党が混乱せずにすみ、知事選で、維新に譲ったとしても、そのうち、維新などは自民党に取り込めばよい、とたかを括っている可能性もある。維新は、自民党別動隊だから、維新に勝たせても問題ないという判断は、かならずしも自民党的に不合理でもない。
高市氏を支持するひとたちは、おそらく自民党内でも保守的な部分であろうし、強権的な部分を支持しているのだろう。しかし、いかに強権的であっても、党内の根回しができないようでは、党のリーダーにはなれないし、まして一国の指導者にはなれない。立憲民主党の小西氏とのやりとりを見る限り、そうした資質をもっている人には思えない。もし、強権的で強引なところが、圧倒的に支持されて、国のリーダーになるようなときとは、日本において民主主義が破綻したときではないだろうか。