BBC受信料問題とNHK

 今年の1月に、イギリスのジョンソン首相が、BBCの受信料の制度改革を提起したことが、各国で議論になっているようだ。日本でもNHKの受信料をめぐっては、大きな問題となっている。各国の公共放送の受信料のあり方については、BBCが原型となっているということで、BBCが制度変更すれば、大きな影響を各国に与えるに違いない。ただし、ジョンソン首相にしても、また、日本の受信料否定論の場合も、ある意味リベラルな放送姿勢に対する保守的な立場からの拒否的姿勢が影響していることに注意する必要がある。BBCにしても、NHKにしても、それほどリベラルであるかについては、疑問があるが、政権の広報機関になりきっていないことは確かだ。根本的には、受信料を払って支える「公共放送」が必要であるかどうかが問題だろうが、その前にまずは各国の状況を踏まえておく必要がある。
 総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会事務局」が作成して「諸外国の公共放送の受信料制度の状況」という文書がある。

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SNSによる情報過多が、デマを拡大しているのか?

 読売新聞に「情報過剰は新たな脅威… [虚実のはざま]第6部私の提言1」(2022.3.16)という記事が出ている。著者は、西田亮介(東京工業大学准教授)だ。https://www.yomiuri.co.jp/national/20220316-OYT1T50091/
 典型的な見解、つまり、あまりに過剰な情報が溢れるようになり、個人の注意力や認識力は限られている。国家で規制せよという意見は間違いで、メタやグーグルなどのプラットフォームでチェックすべきだ、というものだ。これは事実として進行していることで、特段目新しいことはないが、大手旧メディアについて、いつも気になることがあり、この文章もその例にもれない。以下の文章だ。
 
 「発信の中心がマスメディアに限られていた頃とは違い、誰でも発信者になれる今、人々は膨大な情報に囲まれている。特定の分野で影響力を持つ「インフルエンサー」が無数に現れ、選択肢が多様化したのは良いことだが、根拠のない話やデマもあふれるようになった。真実かのように巧妙に装い、人を操ろうとする発信者もいる。」

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ウクライナから逃れて、罪の意識に苦しむ男性たち

 courrier.jpに「ウクライナから脱出して徴兵を逃れた男たちを苦しめる『罪の意識』と『恥じらい』」という記事が出ている。
https://courrier.jp/news/archives/281801/
 非常に切実でかつ微妙な問題だ。ゼレンスキー政府が、闘うことが可能な男性の出国を禁じているために、男性の多くは、ウクライナに残って兵士にならざるをえない状況になっている。もちろん、戦死する可能性は低くない。日本の現在のように、徴兵制もなく、戦争を避けることができている国にいる者には、その切実感は理解できないが、しかし、90歳を超える日本人の男性は、かつてそうした境遇にいた。また、父親が戦士した者もたくさん残っている。日本も赤紙一枚で戦地に送られた。もちろん、そうした義務から外れた職業にいたひと達もいたし、理工系の研究者や高度な技術者たちは、招集されることは稀だった。
 また、ごくわずかながら、徴兵逃れで逃亡した人もいる。実は、私の遠い親戚で、赤紙がきたときに逃亡し、敗戦まで隠れていた人がいたそうだ。戦後数十年経過したときに、その事実を知らされたのだが、そうして逃亡したことに対して、周りが非難するようなことはなかったという。おそらく、本当はそうしたいと思ってもできなかったひと達が大半で、実行した人は勇気があると思っていたのだろうと推測する。

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読書ノート『プーチン 内政的考察』木村汎

 まとまったプーチン情報を得たいと思い、県立図書館にあったこの著書を借りてきた。A5版600ページもある大著で、まだ全部は読んでいないが、前半を読んで考えたことを書いておきたい。
 プーチン4部作の2作目ということで、他の著作も読んでみる必要があると思うが、内政を扱ったこの著作を読むと、筆者がウクライナ侵攻をこの時点(2016年出版)で予想していたのではないかと思われるほどであり、かつ、現在の進行状況が、ここで書かれているプーチン像にぴったり重なってくる。

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ここまで洗脳は可能なのか あるロシア人の発言

 ウクライナ情勢は、驚きの連続だが、そのなかでも特に印象的だったのは、あるウクライナの青年が、ロシアにいる父親に電話をしたときの会話だ。テレビの番組だったので、詳細は覚えていないのだが、ウクライナの青年が、ウクライナの状況を父親に訴え、ぜひ、この状況をまわりの人に伝えてほしいと懇願したところ、父親は、ロシア軍がウクライナにいっているのは、ウクライナのナチ政権の支配から、ウクライナを解放するためで、ロシア軍はなんらウクライナ人に迷惑などかけていない、と言い張り、なんど青年が実際には、違うと説明しても、まったく聞く耳を持たなかったというのだ。また、ウクライナで医師をやっているが、現在は避難者たちの援助をしている女性が、ロシアにいる姉に電話したところ、姉が、ウクライナにいるナチから守るためにロシアは頑張っているのだから、あなたも、ロシア兵に協力しないと大変なことになる、といって、こちらも、いくら説明して、惨状を訴えても聞かなかったので、「地獄に落ちろ」といって電話をきったとBBCで語っていた。

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ウクライナ侵攻への対応に関する疑問

 ロシアの常軌を逸した侵攻については、心底怒りを感じるた。プーチンは、ウクライナの非ナチ化のために侵攻したと言っているそうだが、プーチンがヒトラー化しているというのが、事実に近い。ウクライナに対する無差別攻撃(民間人や民間住宅への攻撃)、ロシア国内における完全な言論統制、政権に対する批判を刑事罰にする法の制定。これらは、ナチズムに該当する。これらについては、今更述べる必要もないだろう。
 それに対する欧米側の対応にも、疑問を感じる点が少なくない。直接関係しないところにいる素人の見解に過ぎないのだが。反省的な意味をこめて、やはり、こちらについて考えたい。

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ウクライナは人の住めない地域になるのか

 3月8日の配信のなかで、ふたつが、ウクライナを人か住めない状況にしてしまうことを、プーチンが意図しているのではないかという見解を述べている。
 ひとつは高橋洋一氏であり、「狂人プーチンの原発攻撃は恐ろしい未来を迎える危険が」と題されている。
 もちろん、高橋氏は、そういうことは起きないことを強く望むという断りをいれているが、簡潔にまとめると、プーチンはウクライナの原発の施設を抑えようとしている。表向きの理由は、ウクライナが核開発をしているというデッチあげをして、ウクライナ非難とロシアの侵攻の正当化だが、プーチンの最大の目標は、ウクライナの非武装中立だから、それを文字通り実現しようということだ。もちろん、ロシアに従順な傀儡政権ができればそれに越したことはないのだろうが、傀儡政権が望めない場合には、特にウクライナ中部にある原発の管理を放置してしまう。そうすると、2,3日内にメルトダウン、そして、チェルノブイリで起きたような爆発が起きる。そうすると、ウクライナは人が住めない地域となり、非武装中立が実現するというのだ。そして、高橋氏のジョージア(旧グルジア)人の友人に、その話をしたところ、プーチンならやりかねないと、同意されたというのである。

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ロシアは日本を攻めるのか ウクライナ-ロシア関係と日本

   ウクライナ情勢の進展とともに、日本での防衛問題について、反射的に、増強しなければならないとの主張がネットでは増えている。しかし、それらの意見の状況認識は、極めてお粗末であるといわざるをえない。ウクライナにロシアが侵攻したのだから、日本にだって攻めてくる、だから、それに対応するために軍備を増強すべきだというわけだ。ちなみに日本は、核はもっていないが、軍事力としては、国際的には上位にあるとされており(実戦をしたことがないので、本当の実力はわからないが、日本人の軍隊だから、敵に怖じ気づいて戦意喪失などということは、ないと信じる。)、しかも、アメリカとの軍事協力があるのだから、ロシアがそんなに簡単に侵攻してくるとは考えられない。本当にそういう事態が生じたとしたら、日本の政府が余程挑発的なことをしてしまうか、あるいは相手の挑発に乗ってしまうという失策によるものだろう。実際に、太平洋戦争に日本が突入したのは、アメリカの挑発的政策に引き込まれてしまった側面がある。日本の当時の政治家たちが、本当に冷静に考えて行動していれば、アメリカの挑発にひっかかることを、なんとしても回避したに違いない。

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ウクライナ考 義勇兵・ロシア正教

 現時点でまだ混沌としている。いくつかの議論が起きていることについて、考えてみたい。
 第一に、ゼレンスキー大統領が、国際義勇兵を組織し、各国に義勇兵の派遣を要請したことである。日本でも、報道によると、70名ほどの応募があり、大半は退役自衛隊員だという。今のところ、政府は派遣に消極的であり、ネットでの議論でも、そうした行為は国内法に違反するという反対論や、困っているウクライナを助けるべきだという賛成論がある。政府が最も心配しているのは、政府として、義勇兵を派遣することを承認すれば、ロシアに宣戦布告したと受け取られかねないということのようだ。

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プーチン体制は継続できるのか

 ロシアのウクライナ侵攻が、長引けば、プーチン体制の危機となることは、十分に予想される。まず最初の目安は、侵攻後1週間だろう。2月24日に侵攻が開始されたから、3月3日に、キエフを支配下におき、ウクライナが降伏的な交渉に応じるようになっていれば、侵攻は成功したといえるかも知れない。しかし、プーチンにとっては残念なことに、かなりの予想が外れ、厳しい状態になる可能性が強い。
 
 端的にいって、かなり早い時期に、ロシア国内での反プーチン勢力が強くなり、プーチン体制は崩壊するのではないだろうか、と期待をもって予想しておきたい。
 ロシアのプーチン体制は磐石で、しかも、強権的で敵を打ちのめしてきたから、そんな簡単に、体制など崩れないと考える人も多いかも知れない。しかし、30年前に、かくも磐石だと思われていたソビエトが、体制ごと転覆したのであり、それは市民の運動が大きな力を発揮したのである。民衆の運動で、あの共産党体制が崩壊するということは、一部の専門家はさておき、一般的にはまったく予想されていなかった。

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