ゼレンスキー大統領演説に、注目したいこと

 本日、ウクライナ大統領ゼレンスキーの、日本向け演説が行われる予定になっている。演説を聞いての感想は明日にして、その前に思うところを簡単に記しておきたい。
 何より注意して聴く必要があるのは、ウクライナの状況を知ることだ。直接日本人に語ることは、これまでなかったわけで、ウクライナの状況は、すべて報道によって知ってきた。しかし、報道には、必ずバイアスがかかっている。
 一番気になるところは、ウクライナは本当に大丈夫なのか、という点だ。キエフに対する前進が止まっていることは、ウクライナ軍が進攻を抑えているからだ、という報道がある。しかし、マリウポリは容赦なく攻撃されている。だが、やがてウクライナ軍が優勢になって、ロシア軍も損害が激しく、士気も低いので、やがて押し返されていくだろうという見通しも語られている。アメリカ筋から、さかんにそうした情報がもたらされている。

 しかし、最近になって、ゼレンスキーは、プーチンと直接話し合う必要があるとか、ロシア軍占領地域の帰属をめぐっては、国民投票が必要だというようなことをいいだしている。これは、以前のゼレンスキーの発言とはニュアンスの違い、弱気を感じるのである。そういうときに、以下のページを知らされた。
 ペンダゴンで、以前軍事顧問をしている人物のインタビュー記録である。娘の友人がインタビューをしているので、教えてくれたものだが、これを読むと、既にロシア軍によって制圧されており、勝負はついているというのだ。攻撃を激しく拡大しないのは、ウクライナの国土を荒らさないためであり、マリウポリで激しく攻撃しているのは、強硬派の自警団(ロシア側のいうネオナチということになるか)が、市民を抱え込んで、徹底抗戦しているからだと話している。そして、アメリカやイギリスが援助している軍事物資は、ほとんどロシア軍によって没収されているというのだ。
 ペンタゴンの軍事顧問をしていた人のいうことだから、無視することはできないだろう。
 このインタビューを呼んだ上で、ゼレンスキーの最近の変化を見ると、やはり、ゼレンスキー自身が既に敗北を自覚し、なんとか、最善の敗北の仕方を模索しているのかも知れないと思えてくるのである。
 圧倒的に力の差があるロシア軍とウクライナ軍からみれば、やはり、ウクライナが不利であることは間違いない。もちろん、祖国防衛という目的からの士気の高さはあるし、また、地の利もあるだろう。しかし、キエフへの包囲は確実に狭まっており、文化財が多いキエフ、そして、傀儡政権をつくろうとしているロシアからも、キエフを壊滅させるのはまずいと思っているから、降伏を待っていると考えることも、状況からは可能なのである。
 もちろん、ロシアが不当な侵略をしていることは明らかなのだから、そうでないことを望むのは、多くの人の共通するところだろうが、冷静に状況を見つめることは、もっと必要なことだ。こういう観点から、ゼレンスキーの話す内容を、吟味することが必要だろうと思って、まだ始まる前にこれをアップすることにした。(16時50分記す)
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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