経済審議会答申の中核は、ハイタレント養成であるように受け取られている。そこで、答申のハイタレントとは、どういう存在なのか、その養成のために何が必要だと提言しているのかを確認しておこう。前回は答申本文を扱ったが、本文のあとに、各分科会報告があり、教育に関係するのは、「養成訓練分科会報告」であり、ここで、ハイタレントを扱っている。
まず、何故ハイタレント養成が必要か。社会的要請と、それに応えられない現状の問題というふたつから主張されている。
必要性は、日本経済の構造変化であり、新しい経済・技術状況への対応が必要だという点にもとめている。そして、その対応には、自主技術を確立する必要がある。つまり、その後もさんざんいわれ続けたことであるが、追いつき追い越せ型の経済では、欧米の先進技術を学び、それを改良することで、国際競争に参加することができた。しかし、今後は、自主的な技術を開発していかなければ、日本経済が成り立っていかないという危機意識である。この答申では、あまり触れられていないが、結局、その後強力になってくるNIESなどに、既存技術の面では、逆に追い越されてしまい、既存の領域では、むしろ敗北してしまうことになる。実際に、この危機意識は、その後の日本経済の停滞によって、証明されたといえるのである。しかし、当時はまだ高度成長の真っ只中であり、日本の国力がどんどん伸びていた時代だから、こうした、あまりに長期的視野にたった提言は、なかなか理解されなかったともいえる。