「お熊と茂平」についても、以前に書いたので、簡単にすると、この話の面白さは、平蔵の勘違いが、その後事実に変化していくことにある。
茂平が臨終の場で、お熊に「自分の死を畳屋庄吉に知らせることと、お金を孫娘にわたす」ことを依頼するが、お熊はお金が57両という大金だったので、平蔵に知らせる。平蔵は、茂平が盗賊の一味で引き込みとして寺にはいっていたという勘違いをして、畳屋に対する警戒体制をとる。実際には、茂平は盗賊ではなく、畳屋の親類だったのだが、畳屋は実際に盗賊で、茂平のかわりに、寺にひとを紹介するということで、引き込みをいれてしまう。ここで、平蔵の錯覚が、現実に転化するわけである。そして、先手をうって、畳屋を逮捕してしまう。庄吉は、葬儀をするために、茂平の遺体をとりにきて、寺の様子を知り、そこで初めて、ここに押し入ったらどうかと思ったわけだ。