岸田首相が、解散する可能性があるという。しかも、その理由が、来年の総裁選で再選するためだというのだ。実は、安倍元首相も、何度か解散して、その都度勝利し、権力基盤をその勝利によって堅固なものにしてきたと言われている。安倍元首相が選挙の度に勝利したのは、野党のあまりのだらしなさと、自民党のメディア支配による巧妙な選挙戦、そして小選挙区という仕組みのためで、国民が安倍晋三という人物、そしてその政策を支持したわけではない。安倍氏は、国政選挙を利用して、自分の権力基盤を強化した。岸田首相をそれを真似したいと思っているのだろう。
しかし、これは選挙の悪用であり、民主主義への挑戦である。選挙は、国民の支持する内容を確認するためのものであって、権力者の権力基盤のためにあるわけではない。安倍元首相が選挙に打って出たときは、多くの場合、氏への批判が強くなったときだった。そうした批判を票に結び付けることができなかった野党も、本当に情けないと思うが、やはり、政権をとっている側の、国政への矜持の問題といえる。安倍内閣が、自己のために選挙を繰りかえす度に、日本の民主主義はそれだけ弱体化した。国葬をめぐってであるが、自民党内から、安倍晋三氏がいかに日本を、自民党を堕落させたか、国賊といえる、という批判すらでたほどである。