9月号特集1「子どもの学びを拓く教育課程と教材文化」には、現場の教師の実践が2本掲載されているが、いずれも非常によかった。やはり、現場で意欲的な実践に取り組んでいる教師の文章からは、学ぶことが多い。といっても、疑問もあるので、両方のことを書いておきたい。
小学校4年生の理科の授業で、豆電球と乾電池のつなげ方による違いを学ぶ単元である。目標は、電池や豆電球のつなげかたで、明るさに変化が出てくることを、実際に確認することのようだ。私がもっている教科書では、非常にすっきりとした構成になっているが、石井氏の使用している教科書は違うもので、単元の最初に、必ず身の回りのものを取り上げることになっていて、ここでは、「身の回りで電気を利用している物には何があるか」という問いに、電気自動車の写真をみて、「電気自動車はどのように走っているのか」という問いが続く。石井氏は、これが単元とほとんど関係ないし、余計な部分になっていると考えている。確かにその通りで、私は、そういうのは無視すればいいと思う。単元そのものではないのだし、まだ実用化があまり進んでいるとはいえない電気自動車など、「電気を利用しているまわりの物」にはふさわしいとはいえない。自由に子どもたちに、出させればいいだけのことだろう。そこで適切な教材が必要だという話になって、仮説実験授業の授業書を参考にしたようなことが書いてある。ただ、その当たりは、実際に揃っている実験器具などと、どういう関係になっているかは、よくわからなかった。とにかく、導入的にはうまくいって、いよいよ、今回の授業の本来のテーマである「豆電球の明るさをもっと明るくするにはどうしたらよいだろうか」と、子どもたちに問いかけたところ、A君が、「教室を暗くする」と答え、クラス一同賛成してしまったというのである。
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